もう何年も前の出来事だ。
友人に誘われ蛍を見に行ったことがある。目的地に着いた頃は夕暮れ。草木に守られた小川に沿ってゆっくり歩いて行く。
あたりが暗くなっていくにつれ、それはチラホラと現れてきた。しばらく進んだのちに手元の灯りを頼りに来た道を引き返す。その頃はかなりの数が乱舞し始める。うちの一匹が左手の薬指にピタリと止まった。
ふわり、ふわりと独特なリズムで光を放つ。「素敵……」と息を殺して左手を眺めた。ほどなく翠色のリングは飛び去っていった。今年もどこかで癒しの光を届けるだろう。
宮崎市 藤田悦子 2018/5/6/7 毎日新聞鹿児島版掲載
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