はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

一枚の写真から

2019-06-08 09:39:16 | はがき随筆

 

 白百合が咲き始めた。身を乗り出し香りを体に包み込む。それは戦後十数年後の一コマを思い出すからである。

 昭和20年、熊本大空襲で家は丸焼け、幸せな生活は一変した。両親の苦労は言うに及ばず。苦労の途中にも白百合は咲き、写真を撮ることになった。白百合とともに表情穏やかな一重の着物姿の両親。兄弟姉妹もそれなりの服装で笑顔で納まっている。

 戦後、母は種苗会社から花の球根や果物の苗木を取り寄せ、私たちに心のやすらぎを与えてくれた。白百合が咲くと写真とともに幸せを運んでくれる。

 熊本市東区 川嶋孝子(80) 2019/6/8 毎日新聞鹿児島版掲載


最新の画像もっと見る

コメントを投稿