七夕祭りからお盆にかけて、線香屋は猫の手も借りたいほどだ。活気ある夏の風物詩。幼い頃、父は線香屋を営んでいた。手伝いは身内の人で賄った。八十路を越えた伯母は小柄な体型に絽の和服を召していた。涼しげで優雅に目立たない薄化粧が魅力的で粋な伯母は、棒状の線香を帯封で束ねていた。手はしゃもじのごとく細く、商品が出来上がると母は得意先に売りさばく。
木製の機械を操縦する父。大家族のため身を粉にして働いた。伯母に「ありがとう」。八十路の長い道のりを空のごとく広く強く行き抜いた。
姶良市 堀美代子 2017/9/3 毎日新聞鹿児島版掲載
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