早朝から耕運機のエンジン音で目が覚める。田植え前の田んぼの整地作業が始まる。シラサギが掘り起こされた土から出る虫たちをついばみ列をなす光景は、田舎ならではの風物詩である。田んぼに水が張られる時分になると、亡き母が娘時代から田んぼの水面に映る青空、白い雲、山々、夜月の風景を、初夏の「清風名月」とたたえ好んでいたことを思い出す。以来、私も感化され水面が織り成す風情は乙なものと思うようになる。晩酌の肴に妻に教えると、水面を渡る風も快い季節という。母の面影映す水面にこよいは妻とビールを飲み干す。
出水市 宮路量温 2017/9/2 毎日新聞鹿児島版掲載
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