午前4時、窓ガラスに雨粒が吹きつけている。東シナ海を台風が北上中である。好天なら散歩に出る準備をしている時刻だが、一人机に向かい、雨音を聞き物思いに耽るのも楽しい。
番傘、高下駄の昔まで思いが戻るのも生きてきた証だろう。今のように整備された道ではない。重い番傘を差して歩く姿や、小学校までの沿道の景色が浮かんでくる。車に泥水をはねられたのはずっと後で、荷馬車が目に浮かぶ。
時の流れがゆっくりゆっくり動いていた。そんな貧しい時を思うのはなぜ。貧しさも過ぎるといい思い出かもしれない。
鹿児島県志布志市 若宮庸成(82) 2022.8.15 毎日新聞鹿児島版掲載
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