「来るね」「うん来る来る」。耳をすませて集中し、子供ながらかすかな音を捉えた。
いつものあぜ道に腰掛けて、待っていると、レンガ工場のほうからトロッコの音がする。我が家の裏にあるレンガ造りの鉄橋を通るゴーッのという大きな合図に飛び跳ねて一緒に走った。
今思うと、子供の頃の思い出はレンガ工場と共に在る。工場は渋沢栄一が故郷のために創った事は随分あとから知った。
明治の工場は近代化され四角い工場になり、線路は深谷駅まで続く遊歩道になった。
新一万円札のニュース以来、町は湧いていると聞く。
小野小百合(61) 2019/10/10 毎日新聞鹿児島版掲載
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