はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

失った家族

2007-08-25 09:55:02 | はがき随筆
 よちよち歩きの捨て猫を約1年間育てていた娘家族に子供が生まれた。アパートでは子供の健康に悪いからと言って家内が無理やり引き取ってきた。捨てネコといえども、気位の高い黒ネコである。避妊手術した彼女の欠点は何でも食べてくれない。好物は白身の焼き魚。極端に人間とネコ嫌い。私どもには甘えるが、決してベタベタしない。そのくせ一人で留守番するのを嫌がる。こうして彼女との生活は16年間続いた。老衰と診断された彼女は、最後まで苦しまず眠るように去っていった。家中の柱に残した彼女のつめ跡が、今ではいとおしい。
  志布志市 一木法明(71) 2007/8/25 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はQssさんからお借りしました。

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