はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

路傍の自転車

2006-05-03 21:38:09 | はがき随筆
 約10年愛用している自転車がある。その間、二度の盗難に遭い、私は自分で歩き回って自転車を捜した。子どものころ、父親の自転車は大きく、私は「三角乗り」という乗り方で利用していた。小学3年の時、父親に自分専用の自転車を買ってもらった。その時のうれしさと喜び、有りがたさはいまでもハッキリと記憶している。今、粗末に扱われ、無惨な姿で休耕田や河川敷、路傍に乗り捨てされ、放置されたままの自転車を見る度に、モノの豊かさが貧しくとも心に富んでいた時代を押し流し、どこか人間の根源まで浸食しているような気がしてならない。
   鹿児島市山田町 吉松幸夫(48) 2006/5/3 掲載

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1 コメント

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三角乗り (駿)
2006-05-04 08:22:27
 三角乗りは擦り傷もなつかしい。日本は物にめぐまれて、心を失いましたね。古代のローマ帝国の末期に似てきました。豊かさは物欲の怪獣を育てます。
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