約10年愛用している自転車がある。その間、二度の盗難に遭い、私は自分で歩き回って自転車を捜した。子どものころ、父親の自転車は大きく、私は「三角乗り」という乗り方で利用していた。小学3年の時、父親に自分専用の自転車を買ってもらった。その時のうれしさと喜び、有りがたさはいまでもハッキリと記憶している。今、粗末に扱われ、無惨な姿で休耕田や河川敷、路傍に乗り捨てされ、放置されたままの自転車を見る度に、モノの豊かさが貧しくとも心に富んでいた時代を押し流し、どこか人間の根源まで浸食しているような気がしてならない。
鹿児島市山田町 吉松幸夫(48) 2006/5/3 掲載
鹿児島市山田町 吉松幸夫(48) 2006/5/3 掲載