久しぶりに友達数人で食事をすることになった。2歳年上でおしゃれなMさんが横に座った。すると「すてきな時計ね」とのぞき込む。私はシーッと指を口に当てた。身の丈暮らしに知恵を絞っている日々なのにとっさに「あなたにいわれるとうれしい。高かったの」と真顔でささやいてしまった。冗談は通じなかったのか「やっぱりね、すごくいい」と。話題は並んだ料理に変わり、本音を明かすタイミングを逃して何とも後ろめたい。気分転換に衝動買いした安い物。褒められてまんざらでもない女心が顔を出す。苦笑しながら時計を眺めた。
薩摩川内市 田中由利子 2013/3/3 毎日新聞鹿児島版掲載
薩摩川内市 田中由利子 2013/3/3 毎日新聞鹿児島版掲載
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