はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

恐怖の日

2006-03-18 10:44:56 | アカショウビンのつぶやき
3月18日
 61年前の恐怖の日、姉と私は防空壕の中で泣きながら震えていた。B29の爆撃音は絶え間なく続き「母ちゃん母ちゃん」と押し殺して呼ぶ声は轟音にかき消されてしまった。
 特攻基地だった鹿児島県鹿屋航空隊が米国の猛爆撃にさらされたのが61年前の今日。
 「母ちゃんとお姉ちゃんは必ず後で行くから、2人で防空壕に行きなさい」と厳しく言われた幼い2人、空襲警報のサイレンが不気味に鳴り響く真っ暗な道を、しっかり手を握って防空壕に走った。前夜から上の姉が産気づき、母と助産婦さんは家に残らねばならなかったのだ。
 長い長い時間が過ぎ、戸板に乗せられた姉が防空壕に着いたのはその日の夕刻。命の危険も顧みず助けに行ってくれたのは、近くに住む朝鮮の方々だった。心ない差別に傷ついていた方々が大きな愛のお返しを下さったのだった。「赤ちゃんが生まれるまでは帰れない」と、迎えに来たお子さんを諭して帰されたと言う助産婦さん、沢山の人に見守られ、間もなく無事に女の子が誕生した。翌日の新聞には助産婦さんの善行と「防空壕で生まれた珠のような男児(?)」と書かれていた。
 誕生の瞬間から戦争に翻弄され、終戦直前に沖縄戦で父親を亡くすという哀しい運命を背負って育った姪もすでに還暦を過ぎた。
 戦後61年、戦争のない今を大切にしよう。そして戦争体験を知る私たちが、世界中で繰り返される残虐で無意味な戦争から目をそらさないで生きていこう。
     (アカショウビン)

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3 コメント

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伝えて下さい。 (駿)
2006-03-18 19:23:32
悲しくも素晴らしいお話を有難うございました。いかに戦争がむごいことか、朝鮮の方々の尊い行動に感動しました。是非、後世の為に語り継いで欲しいと思います。
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コメントありがとうございます (アカショウビン)
2006-03-19 08:17:26
江戸っ子の母は義侠心の強い女性で、虐げられた人々を陰で庇っていました。あの方々にもう一度会ってお礼の気持ちを伝えたい。周りの国々がなぜ日本に反感を抱くのか謙虚に受け止めたいと思います。
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Unknown (野の風)
2006-03-19 22:45:09
日本は今又ひたひたと戦争への道を歩もうとしているような気がしてならない。憲法も自衛隊もないがしろにして。
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