はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

限りない感謝

2012-07-06 17:44:15 | はがき随筆
 「今度の金曜日は?」とリーダーの誘い。「あ、よかよ」と即答。打てば響くあうんの仲。平日の正午、穴場のカラオケ店に行くことである。
 90代2人を含む高齢者4人。いつの間にか仲良し4人組と呼ばれるようになった。音痴の私は軍歌だけが持ち歌であったが、皆さんに引かれて、幅広く昭和の歌も。呆け防止を兼ねていて、やみつきになった。
 現在があるのは、許し合った仲間はもちろん、世間の皆さんの助けがあってのこと。九十路のいま、改めて思いを新たにする。素直な感謝の気持ちに限りはない。ありがとう。
  鹿屋市 森園愛吉 2012/7/5 毎日新聞鹿児島版掲載

天然生活

2012-07-06 17:38:16 | はがき随筆
 少年の頃、あるうっかりを叱られた私を、うっかりは良い人間の証拠なんだと祖父がなだめた。その時、その意味を理解できなかった。
 成人して私が撰んだ同伴者は超天然の人だった。例えば、買い物に財布を忘れる。取りに来てまた忘れる。何とか金の支払いを終えると、今度は買った品物を忘れてくるといった案配。この天然の人、祖父の言った通りで、人の悪口を言ったりとかまるでなく、妻との天然生活がすこぶる快適で気持ちいい。
 「おなか痛いので何でだろ?」「あら、あの魚、猫用だったの」てなこと、たまにあるけど。
  伊佐市 清水恒 2012/7/3 毎日新聞鹿児島版掲載

悲しい知らせ

2012-07-04 15:48:48 | はがき随筆
 高校時代の友人から電話があり、病気療養中のご主人が亡くなられたとの訃報が届いた。
 まだ60代前半。最愛の伴侶を失い、さぞ無念だったろう。これから老後の生活楽しもうとした矢先のことだ。この試練をどう受け止めて、生きていくのか。
 深い悲しみを聞く程に、生前のご夫婦の仲の良さが伝わってくる。自分の身に置き換えてみると、予測がつかない。その時でないと、誰にも答えは出せないのかもしれない。
 友人に寄り添えない自分に、もどかしさを抱きながら、そっと受話器を置いた。
  鹿屋市 中鶴裕子 2012/7/4 毎日新聞鹿児島版掲載

来たな! ツバメ

2012-07-02 15:46:08 | はがき随筆


 燕尾服。
 謎の多い服であったが、ツバメから来ていたとはな。
 代々が農家。私とは縁遠い物と考えていた。君は毎年飛んできては、軒先に巣をつくったな。フンの処理は困ったが、じいさんは今年も来たと喜んでいた。巣は、板の目に沿って作るとか。低く飛んでいるときには、明日は雨だという。自然界では、君たちに教わることも多い。
 おや、聞き覚えのある鳴き声だ。見上げると電線に整列しているではないか。来てくれたのか。おや、どうした? 天高く飛び去った。今日、明日は晴れるだろう。
  姶良市 山下恰 2012/7/2 毎日新聞鹿児島版掲載

たいした90歳

2012-07-02 15:40:16 | はがき随筆
 不注意から父の車に傷つけてしまい、修理を頼んで、マニュアル車を借りて帰った。
 事情を聞き終えた父は「どら、乗ってみろかい!」。
 「えーっ!」
 心配しながらもキーを渡すと、庭からバックで試運転に出陣。しばらくして戻って来ると、今度はスーパーへ買い物に。難なく乗りこなし、パンと牛乳を手に帰って来た。
 免許証を返そうかどうか迷っているというのに、たいしたものだ。
 翌日は、母と二人で、いつもの別荘へ出かけていった。芋植えと魚釣りである。
  肝付町 永瀬悦子 2012/7/1 毎日新聞鹿児島版掲載