はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

カタイもんそ

2017-04-23 17:37:27 | はがき随筆
 ふるさと暮らしを始めて気づいたことは、日常会話からかごっま弁が失われつつある。ある紙面に「方言の継承へ」、生の方言を耳にする機会が減少したことが、方言離れの主な要因であるとの分析の記事。小学生の頃「方言は使うな」と教えられていたが、方言丸出しの日常だった。今時々、公民館講座などで年配の方に「ツダ チタ イタカ チンタカ アマメ ドベ トモレ サンニヨ ハマ……」、こん意味は何? と問うと、ジャッタ!ジャッタ!と方言が飛び交う。かごっま弁は薩摩が編みだした素朴で独特のなまりが面白い。みんなでカタイもんそ。
  さつま町 小向井一成 2017/4/16 毎日新聞鹿児島版掲載

ワサビの花 春味わう

2017-04-23 16:45:32 | 岩国エッセイサロンより



2017年4月23日 (日)
   岩国市   会 員   角 智之

 ワサビは、古くから根茎をおろし金ですりおろし、刺し身の香辛料として広く使用されている。
 年末から早春にかけて収穫される茎や葉は、しょうゆや酒かす漬けなどに利用されている。
 春が旬の花も、しょうゆ漬けがうまい。花茎は肥えて歯応えがよく、上品な辛みは食欲をそそり、酒のさかなにも重宝される。
 大まかな作り方は、スーパーや園芸店などでワサビの花を調達し、しょうゆをベースに酒やみりん、砂糖の他好みの調味料をブレンドした漬け汁を用意しておく。
 よく水洗いした花をざるに入れ、70度から80度の湯にくぐらせ、ふたをして5回程度強く振る。
 この作業を2、3回くり返した後、冷水に浸し、よく絞って広口瓶に入れ、漬け汁を注いで密閉する。2日程度で、おいしくいただくことができる。
 根茎よりも安く入手できるワサビの花のしょうゆ漬けを、ぜひお試しいただきたい。

    (2017.04.23 中国新聞「広場」掲載)

母の日 ローズ プリザーブド…

陶芸 いつかは逸品を

2017-04-22 20:17:12 | 岩国エッセイサロンより
2017年4月22日 (土)
   岩国市   会 員   片山清勝

 「世界で一つだけの作品を作ろう」と誘われて入会した陶芸同好会は、瀬戸内海を見下ろす標高500㍍の県の施設で教わる。
 会長の人望と施設指導員の人柄から、サロン風のいい雰囲気で月2回の作品作りを楽しんでいる。
 先日、定期総会が開かれ活動事項や予算などが報告された。その資料に「第10回」とあり、年月の早さに驚きながら、これまで元気で続けられたことを喜び、仲間に感謝した。
 陶芸以外にも仲間たちの趣味は幅広い。何げない会話の中に、初めて知ることも多くあり、粘土作品とは違った学びも、また楽しみである。
 同じ物を作っても、完成した作品はみんな形が異なる。秀作に刺激を受け次の作品では、とひそかに思い粘土に挑戦する。 
 しかし、いまだに粘土に遊ばれる感じで、思い通りの作品が作れず毎回苦笑している。それでも、「いつか逸品を」と夢を持ち、元気と脳活のために手先と頭を使っている。

    (2017.04.22 中国新聞「広場」掲載)

島の桜は次々と…

2017-04-15 10:15:23 | はがき随筆






 西之表の暖流桜が満開だ。牧電設の資材置き場横の丘に十数本の暖流桜が咲き誇っている。暖流桜はソメイヨシノに似た早咲きの桜で、主に種子島で多く見られる。この日も家族連れやお年寄りのグループが次々と見に来た。車で通る人も速度を落として眺めて行く。ところで種子島では1月末に緋寒桜、2月に河津桜、そして4月にかけて山桜が緑の山並を飾りつけ、4月までの4カ月勘も、それぞれの趣の異なる桜が楽しめるのだ。島の人々は見慣れていても、関東から移住した者には、この上なく楽しみな〝桜の季節〟である。
  西之表市 武田静瞭 2017/4/15 毎日新聞鹿児島版掲載

あれから10年

2017-04-15 10:07:53 | はがき随筆
 散歩するぼくを必死に追ってくる子犬、降り切れず車で元に戻せばと帰宅すると、宝物が飛び込んできたような妻の笑顔である。遼太郎と命名。欠かせぬ存在になってゆく。縫いぐるみのように眠っていたかと思うと、靴を持ち出してかんでいる。そんな遼太郎にも予防接種の時が来る。犬種、生年月日となると困惑するしかない。
 しかし心強いのは妻で、眉ひとつ動かさず柴犬と記入。花祭りの4月8日とした。時は流れ口の周辺には白髪が増え、すっかりおじさんになった遼太郎は、番犬を自覚しているのか、その役目を果たしている。
  志布志市 若宮庸成 2017/4/14 毎日新聞鹿児島版掲載

はがき随筆3月度

2017-04-15 09:57:04 | はがき随筆
 はがき随筆の3月度月間賞は次の皆さんでした。
 
【月間賞】21日「ドラマは続く」鳥取部京子=肝付町新富
 【佳作】17日「羽ばたき」山下秀雄=出水市西出水町
 ▽22日「おにぎりの日」堀之内泉=鹿児島市大竜町


 「ドラマは続く」は、父親の遺品の整理に悩む話です。以前とは異なり、どの家庭も不用品があふれている実情では、引き取る遺族も少なく、結局は公の焼却炉へ。悲しいし、もったいないが、生活の次のステップへ進む一過程と割り切らざるをえないようです。その割り切り方に好感をもちました。
 「羽ばたき」は、知人の退職祝いの会に招かれたときの感想です。現役のとき、異業種交流を主張されていただけに、参加者もまた異業種交流。歓談の後には、ご本人の鶴の鳴きまねの余興まで飛び出し、退職後のご活躍も想像できて。往々にして湿っぽくなる送別会が、明るい将来のある会になりました。
 「おにぎりの日」は。子供のとき、おにぎりの日があり、ご飯と具材とが並べてあるだけの料理だが、兄弟それぞれのおにぎり作りが楽しかったという内容です。今になっては、母の料理をしたくない日だったのだろうと想像できますが、子供たちには大満足のメニューでした。子供の歓声が聞こえてくるようです。
 この他に3編を紹介します。
久野茂樹さんの「3人の師」は、率直さが、読む人に快さを与えてくれます。軍人の父からは「愚直さ」を、早逝の友人からは「信じきること」を、妻からは「他人と比べず自分を生きること」を学んだ。この3人の師が与えた宝はこれからの人生の指針でもある。
 宮路量温さんの「初音」は、鶯の初鳴きのぎこちなさと、お孫さんの祖父母を呼ぶときの片言と比べて、そのもどかしさを楽しんでおいでの文章です。浅い春に、鶯の鳴き声の変化と、お孫さんの成長とを待ち遠しく感じているている時間は、おそらく幸福というものでしょう。
 脇田博さんの「ふるさと鹿屋探訪」は、柏市からの旧居再訪の文章です。終戦前後に住んでいた街も家並みもすっかり変わってしまっていたが、ギブ・ミイ・チュウインガムの世代の思い出はしっかりと残っていた。旧家の姿と旧懐の念とがこれからの生活の励みになりそうです。
  鹿児島大学名誉教授 石田忠彦 2017/4/14 毎日新聞鹿児島版掲載


みきこばあちゃん

2017-04-15 09:27:06 | はがき随筆
 「みーちゃん、みきこばあちゃんと呼ばれるその日まで元気で生きるんだよ!」。20歳になったばかりの一人娘に私はしょっちゅう声をかける。たまにはギュッとハグをして……。
 どこの親後さんも同じ思いだろうが、たった2人家族なので、私がいなくなっても健康で元気に生きて、できれば結婚して、子供を作り、孫ができて「おばあちゃん」と呼ばれるまで生きてほしい。どこまで見とどけられるかわからないが、娘が「みきこばあちゃん」と呼ばれることを想像して、ウフフと笑っていると、なんだかとっても幸せな気持ちになる。
 鹿児島市 萩原裕子 2017/4/13 毎日新聞鹿児島版掲載

霧散霧消

2017-04-15 09:21:18 | はがき随筆
 ずっと昔、中学生向け月刊雑誌に「ペンフレンド募集コーナー」なるものがあって、興味半分で申し込んだら運よく私の住所と名前が掲載された。さあ、それからが大変。毎日毎日全国の女子中学生から10通以上の封書が届くことに……。悪友と2人で「こいつは字が下手だからダメ」とか勝手なことを言いながら、本命を絞るべく〝選抜〟作業をしたのだった。調子に乗って「きみの顔写真を送ってください」などとも。
 で、結局文通騒ぎの結末はどうなったのでろう。佐賀県鳥栖市の女の子を最後に霧散霧消したのでした。
  霧島市 久野茂樹 2017/4/12 毎日新聞鹿児島版掲載


傘寿を前に

2017-04-15 09:14:41 | はがき随筆
 1月10日スーパーで買い物のついでに血圧を測った。高い! 
 急ぎ帰宅しクリニックへ。更に上がって降圧剤をのむことに。5人家族の家事を元気にこなしているが大いにあわてた。
 血圧計も買い測定。減塩、体操、ブランコを大きくこぐこと100回、お陰で長寿検診も合格。脳のCTも異常なくホッとした。傘寿のお迎えが来たら「まだ役に立つヨ」とお帰りいただくのだそうだ。
 来年は2人の孫の大学、高校の受験もある。家族の者の心を乱さぬよう、更に役に立てればありがたいことである。来る6月1日に80歳の大台に乗る。
  鹿児島市 内山陽子 2017/4/11 毎日新聞鹿児島版掲載

散髪の思い出

2017-04-15 09:05:01 | はがき随筆
 棚の片隅にバリカンの箱を見つけた。半世紀も前に活躍したものだった。その頃、遊び盛りの子は散髪を嫌がり逃げ回っていた。おやつのアメ玉が口の中で転がっている間に急いでバリカンで刈り上げる。
 ところが急に横向きされ、思い切り突っ込んでしまう。再々の失敗はまるで段々畑を見るようだった。
 遊びに飛び出す子に無理やり帽子をかぶせて送りだす。やがて帰ってきた子の様相は泥だらけ、しかも段々畑の丸出しである。思い出すだけで笑いがこみ上げて、片付けを中断して当時を懐かしむ。
   鹿児島市 竹之内美知子 2017/4/9 毎日新聞鹿児島版掲載

最後の花見

2017-04-14 16:42:51 | 岩国エッセイサロンより
2017年4月14日 (金)
岩国市  会 員   吉岡 賢一

4月生まれの母が満98歳の誕生日を迎えた折。例年のごとく満開の桜に合わせ、子や孫が集まり誕生祝いを兼ねた花見の宴を開いた。弱った体を車椅子に乗せ、皆で代わる代わる押し、すぐ近くの海の公園に。家を出る時は「わしゃ、もうええよ」と遠慮していた母が子や孫に囲まれたにぎやかさと見上げる満開の桜に、こぼれんばかりの笑顔で喜んでくれた。
 ほどなく大腿骨骨折で寝たきりに。その後2度の誕生祝いは桜もない青空も海の匂いもない介護施設のベッドの上だった。
 あれから8年。かの岸の人たちと桜を愛でているのかな。
   (2017.04.14 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

描く趣味 書く趣味

2017-04-13 22:33:35 | 岩国エッセイサロンより
2017年4月12日 (水)
山陽小野田市  会 員   河村 仁美


帰省した時に、父が言った。「文章を書くのは苦手だなあ。文章は最後にまとめないといけない。絵はまとめてしまったら、面白くなくなる。だから絵を描く方が楽しいな」。私は「じゃあ、前のように絵を描いてみたらいいんじゃない。今度来る時に見るのを楽しみにしているから」と山口へ戻った。
 3ヵ月後、父がスケッチブックを見せてくれた。以前は絵の具だったが、今回はスケッチペンを使い何枚も描いていた。私もできたばかりの本を送った。
 昨年までは母と取り合って読んでいた本を今年は父一人でゆっくり読んでいることだろう。
(2017.04.12 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

鬼の顔仏の顔

2017-04-09 20:20:33 | 岩国エッセイサロンより
   岩国市   会 員   片山清勝

 「鬼のような顔で私に文句を言うんよ」と厳しい目つきで話す人。聞いていたひとりが静かに「その時、あんたの顔も心も鬼じゃったろう」と発した。
 人の胸中の感情は、腹の虫の機嫌がよければ仏、悪ければ鬼の顔になるという。この虫とは一生付き合わねばならない。いつも機嫌よくして仏になりたいが、難しいと悩む。
 鬼を見たことはないが、小学4年の学芸会で「泣いた赤鬼」の青鬼役を演じ、心優しく涙を流す鬼のいることを知った。
 もし、鬼の顔に出会っても、心優しい顔で交われるよう、虫の機嫌をよくしておこう。

     (2017.04.09 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

16年の はがき随筆

2017-04-08 13:02:04 | はがき随筆
 2016年の鹿児島版「はがき随筆」の年間賞に、出水市中央町の宮路量温さん(70)の作品「回想」(1月20日掲載)が選ばれました。2013年の初投稿から4年足らずで投稿は46回、掲載は38作品に上る。宮路さんは「今や作品づくりが生活の一部になっている。これからも元気な間は月1回の投稿を続けたい」と話している。【西貴晴】

年間賞に宮路さん

感謝の気持ち作品に込め

 宮路さんは出水市出身。長らく地元の土地改良区に勤めた。ある日、原稿用紙を手にした2歳上の姉から「ぼけ防止になるかも」と勧められたのが投稿のきっかけ。「孫自慢」と題した初投稿が紙面を飾った。
 以降、紙面に掲載されるはがき随筆はすべてスクラップ。「ああ、こんな見方もあるんだ」と自分以外の作品を〝教科書〟代わりに作品づくりを学んだ。選者の石田忠彦さんの月間賞選評も熟読する。投稿前には妻(64)にも意見を求め、分かりやすい表現に直したり、漢字を平仮名に替えたり。「そういう意味では妻も作品づくりに参加しています」
 受賞作品は、約1年半前に99歳で亡くなった父の四十九日を終え、曾木の滝温泉(伊佐市)に妻と出かけたときの出来事を書いた。父は認知症の母の介護を一人で続け、母を先に送って11年後に逝った。母へ、そして父への感謝の気持ちを作品に込めた。
 最初にテーマやタイトルを考えるのが宮路さんのスタイル。いったん原稿用紙に作品を書いた後、実際の投稿まで1.2週間かけて推敲する。孫を題材にした作品も多く、宮路さんは「自分の作品が活字になって残る。私が死んだ後、孫に『いい作品を残してくれてありがとう』と言ってもらえるよう書き続けたい」と語る。
  ◇ ◇
 鹿児島版を含む九州・山口各地区の年間賞13点の中から選ぶ毎日はがき随筆大賞1点などの発表・表彰式は5月27日午前11時~午後2時、北九州市小倉北区馬借、ホテルクラウンパレス小倉で開かれる。問い合わせは毎日新聞西部本社販売開発部「はがき随筆大賞事務局」(096・541・8271)。

無理なくまとまる文章
選評
 例年のとおり月間賞の中から、宮路量温さんの「回想」、塩田幸弘さん「ミルク」、山下秀雄さん「アジサイ」、口町円子さん「変わりました」の4編をまず選び、その中から年間賞を決めました。
 「ミルク」は、地震の揺れ、娘や孫の心配、ミルク不足、他の赤ちゃんへの思いやりなど温かい文章です。「アジサイ」はアジサイの美しさに、かつての若い女性との心の交流が淡く思い出される内容です。「変わりました」は、料理鋏を毛嫌いしていたが、いつのまにやら使うようになったという内容で、軽妙な味のある文章です。ただ、いずれもやや一本調子だという印象をもちました。
 「回想」は、父の四十九日に、温泉で父のことを思い出していたら、湯煙の中に父に似た骨格の人を見かけたという文章です。少ない字数の中に、挑戦から引き揚げた両親の苦労、母の老化、父の母への献身、自分の親孝行への悔いなどの多くの内容が、無理なくまとめられているところを評価しました。
鹿児島大学名誉教授 石田忠彦

慰霊の旅で

2017-04-08 11:47:45 | はがき随筆
 戸籍には父はセレベス島で戦死とあるが、今回ダバオで戦傷死と分かり、フィリピン慰霊友好親善訪問の旅に参加した。
 私たちD班は14名で7日間の旅を共に過ごした。遺児の私たちは戦後を貧しく過ごした人ばかりで、すぐに打ち解けた。
 ダバオのタモガンで最後の慰霊を行ったときのこと。急ごしらえの祭壇の前で該当者の遺児が父への作文を読むのだが、新潟から参加のOさんが、お父さんと呼びかけて、後は嗚咽となってほとんど読めない。隣の女性の遺児が優しく背中をさすってあげる。後方の私は見ていて涙が止まらなかった。
  霧島市 秋峯いくよ 2017/4/8 毎日新聞鹿児島版掲載