昔、小高い里山が町と村とを隔てていた。村人は里山の真ん中を裁ち、削り、町への道を通した。とげん阪(峠の阪)である。子供の頃、とげん坂を通り町に行くのが楽しくてならなかった。暗いとげん坂も母や友達と一緒なら平気。町行きにスリル満点のおまけがついた。
母と映画を見ての帰り、切りぎしに切り取られた細長い夜空にまたたく星が美しかった。
切りぎしの上の白い月に梯子をかけて登って行く、そんな夢を見た日々があった。
今、とげん坂の道幅は広くなり、車が行き交い、切ぎしには「虹の橋」がかかっている。
鹿屋市 伊地知咲子 2017/11/14 毎日新聞鹿児島版掲載
母と映画を見ての帰り、切りぎしに切り取られた細長い夜空にまたたく星が美しかった。
切りぎしの上の白い月に梯子をかけて登って行く、そんな夢を見た日々があった。
今、とげん坂の道幅は広くなり、車が行き交い、切ぎしには「虹の橋」がかかっている。
鹿屋市 伊地知咲子 2017/11/14 毎日新聞鹿児島版掲載