はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ぐうたらの時間

2018-03-21 16:31:37 | 岩国エッセイサロンより
2018年2月23日 (金)
岩国市  会員   貝 良枝

 日曜日、娘2人と昼ご飯を食べる。そろって食事をするのは本当に久しぶり。
 長女は他県に住み、帰省してもほぼ友達と遊びに出かける。次女は美容師、日曜が休みに当たるのはまれだ。
 ホットプレートを囲んでお好み焼きを食べ、コタツにもぐる。「ぐうたらするのもいいねぇ」「お昼寝しようっと」と娘たち。おなかが満たされ、暖かい場所で丸くなって寝る。「あんたたち、子犬のようね」
 洗い物を済ませ、私も首までもぐる。「実家はいいねぇ」と長女も、このひと時を味わうように一段ともぐった。
  (2018.02.23 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

宇宙の謎 解明を期待

2018-03-21 16:31:04 | 岩国エッセイサロンより
2018年2月21日 (水)
   岩国市   会 員   片山清勝

 宇宙の記事が載ると繰り返し読み、ロケット打ち上げの成功は、わが事のように喜ぶ。それで宇宙を理解しているのかと問われると、宇宙と同じ暗い空間に漂っているようだと答えるしかない。
 10日付セレクトの「ブラックホール ベール脱ぐか」の記事を面白く読んだ。ブラックホールは、非常に強い重力と高密度を持つ天体で、あらゆる物を吸い込み光も逃げられないという。
 そんなえたいの知れない天体の影を捉えるかもしれない。もし成功すればノーベル賞級の快挙になるという。
 その天体は天の川銀河の中心にある超巨大ブラックホール。世界6カ所の観測拠点で、高性能の望遠鏡を使って同時に観測し、成功すれば、ブラックホールの 「影」が真っ黒な穴として写り込むという。
 日本の画像処理技術の貢献で、今秋以降にはその姿を捉えた画像が見られるかもしれない。宇宙ファンの夢は膨らむ。

       (2018.02.21 中国新聞「広場」掲載)

1を重ねて孫史

2018-03-21 16:29:57 | 岩国エッセイサロンより
2018年2月11日 (日)
   岩国市   会 員   片山清勝

 孫新聞を作り始めて17年目、毎月「1」ずつ増えた号数は先月で200号になった。創刊号は孫娘3歳の時、読み姶めたという平仮名ばかりで作った紙面が今は懐かしい。
 京都生まれの孫は少し小さく生まれたが、大きな患いもなく育ったことがうれしい。今は、留学に備えての準備と授業で忙しい学生生活を送っている。
 ファイルは、時々の様子を思い出す孫史になっている。そして、単に「1」の積み重ね以上の重みを感じさせる。
 パソコンを相棒に毎号、楽しみながら、面白い充実した紙面にしようと頑張っている。

    (2018.02.11 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

ステレオの役目

2018-03-21 16:29:17 | 岩国エッセイサロンより
2018年2月 9日 (金)

  山陽小野田市  会 員   河村 仁美

 実家の居間に父が買ったステレオがある。買った当初は、めずらしがってクラシックのレコードをかけて楽しんでいたが、いつの間にか物置になった。

 もう40年以上そのままなので「捨てたら」と弟に言ったら意外な答えが返ってきた。「父が立ち上がる時につかまり、ドアまで歩く時の手すりになっている」という。おまけに座椅子が後ろに倒れていかないように背もたれの役割も果たしている。

 本来の音を奏でる役目とかけ離れてしまったが父の役に立っているようだ。今まで邪魔だと思っていたが、いとおしくなった。これからも父をよろしく。

(2018.02.09 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

有効活用度

2018-03-21 16:28:44 | 岩国エッセイサロンより
2018年2月 3日 (土)
   岩国市  会 員   森重 和枝

 市のイベントに参加。会場の健康相談の所に、大勢の人が並んでいた。血管年齢、脳年齢が測れるというのが魅力で、受けてみた。
 このごろは、忘れることや覚えられないことばかりで、脳年齢の測定には大分ためらった。
 画面に1~50の数字がランダムに並ぶのを順番にタッチしていく。2回目は画面の数字が動く。両方とも結構早くできた。素早さ、脳の元気度、有効活用度が表示され、64歳と出た。
 予想外だ。総合評価欄に元気な脳が上手に使われていないとある。これからは、もっと脳の活用度アップを心掛けようと思う。
  (2018.02.03 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

自由なこころ

2018-03-21 16:26:04 | 岩国エッセイサロンより
2018年2月 2日 (金)
岩国市   会 員   上田 孝   

 最近、髪が薄くなってきたので、散髪はカミさんにやってもらっている。臨時の床屋と客はノーベル文学賞のカズオ・イシグロのような形を目指していて、出来栄えにはほぼ満足している。
 ところがである。朝は前髪を垂らすように櫛を入れているのに昼や夕方に鏡を見ると、ほとんどの場合七三分けに戻っている。現役時代に長年つけた癖が髪の毛を形状記憶にしてしまったのだろうか。サラリーマン時代の「常識的な身だしなみ」の象徴のようで何だか面白くない。髪形は解放されないままとしても、せめて心は自由な作家のようにありたいと思う。
   (2018.02.02 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

孫新聞

2018-03-21 16:25:33 | 岩国エッセイサロンより
   岩国市   会 員   片山清勝

 季刊の予定で始めた「孫新聞」。作るのが楽しくて月刊にし、ことし17年目。1月で200号になった。
 きっかけは、京都に住む孫娘が3歳になる少し前のこと。「平仮名が読めるようになりました」という嫁からのうれしい知らせがあった。離れて暮らしている孫が読んでくれたら思いが伝わるかな、とパソコンを使って作り、仮名ばかりの第1号を送った。
 小学校低学年までは学年に合わせた漢字ドリルを買い、学校で習う漢字を取り入れた。すると、次第に新聞らしくなり、作る面白さが増してきた。紙面も絵本形式から縦書きの新聞仕様に変えた。
 B5判の片面印刷は創刊以来変わらない。読めば5分とかからないが、出来上がるとほっとする。中学生までは学校に関わる内容も記事にした。しかし、孫の学齢が進むにつれ、時代の相違もあって状況に追いつけなくなった。最近は、私ら夫婦の近況や身の回りの内容が増えた。読めば孫一家も安心してくれると思っている。
 少し小さめの誕生だったが、大きな患いをすることもなく育ったのが何よりうれしい。今は大学1年、自転車通学している。そんな孫の顔を思い浮かべて作っている。ゲラを妻に見せる。たまに修正案も出る。夫婦で合意して仕上げる。
 ファイルは6冊目、楽しみながら作っているが、それにしてもよく続いたと自分でも思う。それでもいつかは終刊の時は来る。できる限り続けたい。

     (2018.02.02 中国新聞セレクト「ひといき」掲載)

48年ぶりの和服

2018-03-21 16:24:26 | 岩国エッセイサロンより
2018年1月
2018年1月30日 (火)
  岩国市  会 員   山本 一 

 「和服にしたら」という妻の勧めに従い、元旦、四苦八苦して着替える。動きにくいし、今ひとつシャキッとしない。丈が長いのは私の背が3㌢縮んだのが原因だ。48年前に妻の両親から贈られたもので、最初の正月に着てから以後一度も記憶がない。時代の変化もあるが、私も着るのを躊躇した気がする。長男長女の結婚で双方の親の気持ちが複雑に交錯。私たちは常に親の感情を斟酌した。
 いま、4人すべての介護を終わり、親との葛藤も終わった。着替えたら早速、我が家にある妻の両親の仏壇に手を合わせた。背中に妻の思いを感じながら。
    (2018.01.30 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

言葉の力

2018-03-21 16:23:12 | 岩国エッセイサロンより
2018年1月22日 (月)

    岩国市  会 員   横山恵子  

 昨年12月に母を亡くした。慌ただしく過ぎた通夜、葬儀。喪中はがきを出すには遅すぎると思っているうちに年が明けた。  
 四十九日法要を終え、改めて母の91年の人生を思う。天寿を全うしたのだからと自分に言い聞かせる日々。  
 息子の「(昨年)11月、おばあちゃんから、お母さんを助けてやりんさいよと言われた。それが僕への遺言と思う」との言葉に涙がにじむ。  姪の3歳の子が「ひいばあは、ひいじいに会えて喜んでるよ」と言ったと聞き、心が明るくなった。今ごろ、第二の新婚生活を楽しんでいるだろうか。
   (2018.01.22 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

ちゃちゃ丸

2018-03-21 16:21:09 | 岩国エッセイサロンより
2018年1月20日 (土)
岩国市  会 員   稲本 康代

 広島に住む娘がプードル犬を飼い始めた。5カ月の雄で、ちゃちゃ丸と名付けられた。
 正月に我が家に連れて帰ったが、私にとっては驚きの連続。犬ではない。完全に家族の一員である。常に娘にまとわりついて、また、娘も立っても座っても抱っこしている。孫はペロペロと顔をなめられながらも、うれしそうに一緒に遊んでいる。2人の姿が見えないとキャンキャン鳴いて、うるさい! 
 正月が終わり、日常生活に戻った今日このごろ、シッポを振って私を見上げたちゃちゃ丸の顔をしきりに思い出す。
 会いに行こう……かな。

   (2018.01.20 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

神の声

2018-03-21 16:20:39 | 岩国エッセイサロンより
2018年1月16日 (火)
 
岩国市  会 員   吉岡 賢一



 ありがたいのかどうなのか、やや複雑な思いで「後期高齢者」の指定を受けた。あれから1年過ぎた今も、自ら健康優良老人を名乗るだけあって、一般検診や血液検査、がん検診など、検査項目すべて特に異常なし。
 「ほらね、この通り」と自分の手柄のように報告した。だが待てよ。朝はおかゆとみそ汁に自家製梅干し。夕飯は玉ねぎワインと酢をたっぷりの大根おろしの前菜を欠かさない。そんな用心深い食事管理を毎日するのはカミさんじゃないか。そのお陰だと、胸の中で手を合わす。
 「メタボだけは自己管理よ」と厳しい声が耳を刺す。



  (2018.01.15 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

胸躍る2軍キャンプ

2018-03-21 16:19:24 | 岩国エッセイサロンより
2018年1月10日 (水)
   岩国市   会 員   吉岡賢一

  岩国市の新球場で広島東洋カープの2軍キャンプを実施するという。思いがけないお年玉をもらった気分で、「こいつぁ春から縁起がいいわい」と悦に入っている。
 2軍の春季キャンプ第1クールの2月1~3日を、 「キズナスタジアム」で行うという。早速、友達にも声を掛けてカレンダーに書き込んでおいた。
 キズナスタジアムは、国が米軍と市民の共同施設として整備、昨年11月にオープンしたばかりで、どのような施設なのか興味津々。そして、グラウンドを駆け回る選手のユニホーム姿に今から胸を躍らせている。
 ありがたいことに、岩国市には由宇球場というカープの2軍練習場がある。2軍公式戦も行われ、注目の選手に近くで声を掛けることもできる。
 今年は大型選手の入団で、由宇球場は熱く燃えるに違いない。球春に胸躍る春季キャンプの岩国実施は、野球ファンに限らず楽しみなイベントだ。粋な計らいに拍手を送りたい。 

    (2018.01.10 中国新聞「広場」掲載)

「その日始め」心掛け

2018-03-21 16:18:46 | 岩国エッセイサロンより
2018年1月 8日 (月)
   岩国市   会 員   片山清勝

 仕事始めの記事を読みながら、それに縁のなかった職場時代を思い出した。30代半ばくらいまで、化学製品の製造プラントで3交代勤務をしていた。連続して安定・安全運転をすることが毎日の仕事で、仕事始めなどという区切りはなかった。
 プラント運転ではちょっとした油断は事故や災害につながる。毎日の運転や安全についての始業前ミーティングが重要な仕事始めだったと思い当たる。
 年末年始の勤務によっては、タワーの頂上から瀬戸内海に昇る初日の出に何か手を合わせた。思い返せば、ぜいたくな経験をしていた。
 昔、農村では田畑へのくわ入れ、山村では木の切り始め、漁村では舟の乗り始め、商家では初売りや初荷を仕事始めとしたとある。
 現在は官庁、企業とも職員を集め、幹部の訓話が一般的となっている。それに比べると、昔の仕事始めはそれらしい実感が湧く。
 今年からは毎朝、「その日始め」を実行したい。平穏に過ごせることを実践し、人に迷惑を掛けないように心掛けたい。 

     (2018.01.08 中国新聞「広場」掲載)

家族として

2018-03-21 15:59:12 | はがき随筆
 長女家族は借家に暮らしているが、子供が5歳になり部屋も手狭に感じたため、マンションを買うことにした。孫は、大型店のトイレに行って戻る途中に逆走して迷子になったり、お店の物を勝手にさわって落としたり、気になるものがあれば道路に急に飛び出すなど、やんちゃ盛りの男の子だ。不動産屋との契約に「大人の長い話になるから」と母親に諭され、孫は我が家で一時預かりとなった。自分だけ置いてきぼりになった孫は、バァバに「僕も家族として一緒に行きたかったのに」とふくれて見せた。口達者でもある。
  鹿児島市  高橋誠  2018/3/21  毎日新聞鹿児島版掲載

山椒

2018-03-21 15:52:58 | はがき随筆
 山椒の木を買ったのは、葉に虫が付いていたからだ。追加料金を取られることもなく、鉢植えは我が家にやってきた。ハジカミはそのまま2齢幼虫の餌となり、羽化したアゲハはどこかへと旅立ち、棘だけが目立つ若木が残された。山椒はひっそりと葉を広げ、枝を伸ばした。白い花は実を結ばず、木枯らしが吹くと葉を落とした。根をさらうのも惜しく、置いたままにしていたら、水ぬるむ頃にまた静かに芽吹き始めた。
 桜のような派手さはない。沈丁花ほどには香らない。けれど、その静かな息遣いが告げる春を今年も楽しみにしている。
  鹿児島市  堀之内泉  2018/3/20  毎日新聞鹿児島版掲載