エアコンに間欠運転装置というのを後付けして省エネ・節電を図るという製品があります。例えば売り文句はこのようなものです。「エアコンのコンプレッサーの運転を10分間の内3分間強制的に停止させますので、30%の省エネ(節電)になります。」といったものです。しかもご丁寧に「わずか3分間しか止めませんので、室温の上昇は僅かで温度変化に気付かないくらいです。」といったことを言う業者もいるようです。
本当にこの業者の主張は正しいのでしょうか?
間欠運転とは動作中のものを定期的(間欠的)に停止させることです。例えば、先の30%の動作を換気扇を用いて説明します。今、換気扇が動き始めました。動作を開始して7分経過した時点で換気扇を3分間止めます。3分経過後再び動作させます。以後これを繰り返すということになります。
さてこの場合消費電力量は、皆様お気付きの通り、30%削減できます。ですから業者の言い分は正しいわけです。
さてエアコンの場合はどうでしょうか。エアコンには温度設定というものがあります。例えば28℃に温度設定をしたとします。エアコンを運転する前は部屋の温度(室温)が32℃あったとします。しばらくすると部屋が冷えてきます。そのまま冷やし続けると28℃よりも室温が下がってしまいます。そこでエアコンの温度調節装置が働き、室温が約27℃になった時、冷気を作る元となる圧縮機(コンプレッサー)を停止させます。そうするとエアコンは冷気が出なくなり、いわゆる送風運転となります。しばらくすると室温が上昇してきます。室温が約29℃になった時、温度調節装置が働き圧縮機を運転させます。そうすると再び冷気が作られ部屋が冷やされます。以後これの繰り返しです。このように温度調節装置は部屋の温度を調べ、圧縮機の運転を制御して室温を一定に保つ働きをしております。
もうお気付きのことと思いますが、圧縮機の運転は間欠的に動作しております。インバータエアコンの場合には、圧縮機の運転/停止ではなく冷気を作る能力を増減させることによって温度を一定にしておりますので間欠運転とは若干異なります。
エアコンの動作の概要をご理解いただいたところで、本題の間欠運転による省エネの話に入ります。先述のように元々エアコンは間欠運転をしております。この間欠運転をしているところに、更に強制停止をさせよう(停止時間を長く)というものです。
余り長くなるので、結論を申し上げます。省エネ・節電率は、温度調節装置による本来の動作による圧縮機の稼働率(%)と間欠率(先の例では30%)を用いて近似的に次式で表されます。
① 間欠率≧(100-稼働率)
省エネ率=稼働率×削減率
② 間欠率<(100-稼働率)
省エネ率≒0
何故そうなるかということにご興味のある方は「エアコンの省エネルギー」をご参照ください。
そこで業者の主張を検討してみましょう。換気扇の場合には、通常は常時動作しますので稼働率100%ですから①に該当します。従いまして、省エネ率=100(%)×30(%)=30(%)ということになります。即ち、エアコンの場合でも圧縮機の稼働率が100%であれば、30%の省エネができます。しかし、稼働率が100%以外の場合には、当然のごとく30%の省エネはできません。そして稼働率が70%を切った場合には、ほとんど効果がないということになります。
ましてや「短時間の停止だから室温の変化には気付かないくらいです。」というのは省エネできないことを自ら自白しているようなものです。
業者さんの反論を大歓迎いたします。