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本間祥白について〜鍼灸の科学化を志した大先達〜

2018-07-16 11:13:05 | 鍼灸理論・東洋医学
鍼灸の世界の現状は、(自身にとっては)人類の歴史性に学ぶことを怠ったがゆえの惨状と思えてしかたがない。そして、この流れはもう定まってしまっていて、「病膏肓に入る」の感があると諦めにも似た思いが自身にはある。
しかしながら、そんな思いでいるときに『誰にもわかる経絡治療講話』(本間祥白著 医道の日本社)に出会った。一読して、鍼灸の世界にもかつては志高く「鍼灸の科学化」を目指した方がいたのだと、鍼灸の世界で初めて出会った同志に感無量の思いとなった。
それゆえに、今はもう忘れさられてしまっている?とも思えるこのような大先達が鍼灸の世界にもいたのだということを知ってもらいたい、特にこれから鍼灸を学んでいこうとする皆さんには、との思いでの今回のブログ記事である。

[本間祥白に何を学ぶか]
科学万能である現代において(正確には科学万能ではなしに科学技術万能というべきなのかも知れないがそれはさておき)、そんな現代に生まれてあれこれを学んで育ってきた我々は、鍼灸を学ぼうと考えた場合にも当然に、それ(鍼灸)もまた古来から伝わってきているものそのままではなしに、それが誕生し育ってきた時代性ゆえの不足(迷信?)を補う形で、かつそこに含まれる文化遺産をしっかりと受け継いでの科学的なものとして創り上げられた、再構築された存在として「鍼灸」があるはず、もっといえば科学的鍼灸理論に導かれるところの科学的な鍼灸術というものが存在するのであろう、と思うはずである。
ましてそれが私的な学校でではなくて文部科学省が認可している専門学校、あるいは大学で教えられるものだとすれば尚更のことである。
ところが、そこにあるのは「鍼灸は科学とは無縁、相容れない!」として旧態依然たる鍼灸を教えようとするか、「鍼灸も科学化すべし!」として過去の文化遺産の大半を放棄して現代西洋医学的=解剖生理学的な鍼灸を教えようとするかのどちらかになってしまっている、という状況である。

しかしながら、これは人類の歴史性に学ぶならば、例えば(ヘーゲル)哲学をどのように学んで行った人々がまともな発展を持ちえたのか?を思ってみるならば、どちらの道もダメであろうことは容易に想像された。
それゆえに自身は第三の道を、過去の文化遺産を受け継いでの「科学的鍼灸」というものを志すこととなったのであるが、そのような思いを持つ同志は自身の周囲にはどこにも存在せず、であった。

これは、哲学とか論理とか、人類の歴史性、歴史の流れに中学生の頃より興味を持ち続けてきた自身にとっては有り得ないことであったのだが、そうであっただけに、かつては一世を風靡し、現代の日本鍼灸の源流であるとされる「経絡治療」というものを一般的にでもおさえておきたいと思って手にした『誰にもわかる経絡治療講話』の「第1節 古典医術研究の態度」を読んだ時には、「過去にはこのような志を持って鍼灸に挑んだ大先達もおられたのだ!」と鍼灸の世界で初めて同志に出会えたとの感激、同時に「この方も「科学とは何か」を分かることが無かったがゆえに、志、情熱は見事であっても・・・・・・」と残念な気持ちで一杯となった。

それゆえに、「本間祥白」についてはいつか取り上げたい、と『誰にもわかる経絡治療講話』に初めて目を通した時から思い続けていたのであるが、今回、自身の「東洋医学・鍼灸の学びの総括」を四百字詰原稿用紙500枚に書いていく作業の中で「本間祥白」を取り上げたので、その部分をブログ記事として書くことで、「鍼灸の科学化」ということを、時代の要請でありそれに応えることが自身の責務であるとして、あるいは科学化ということを成し得なかったならば鍼灸が滅んでしまうとの危機感を持って、真剣にそのことに取り組んでいた時代がかつては存在したのだということを、自身で再認識しておくべきとの思いから、かつ現代に鍼灸を学ぼうとする皆さんに知っておいてもらいたい(おそらく『誰にもわかる経絡治療講話』を手にする方は現代ではほとんどないであろうから)との思いからでもある。
以下、現在書いている「東洋医学・鍼灸の学びの総括」の「本間祥白」を取り上げた部分の抜粋をブログ記事用に書き改めたものである。

[鍼灸の学びにも一般教養が求められる]
(自身が鍼灸を学ぶ以前に長い長い一般教養的な学びの期間を持ち得たことを踏まえて・・・・・・)そういう意味では、そのような一般論、指針を持たずに、自身のそこまでの僅かに二十数年程度の人生で自然成長的に育ってきたものの見方考え方でもって、東洋医学、鍼灸に挑んで行かねばならなかったであろう同級生諸氏の、のみならずほとんどの鍼灸の世界の人々の大変さは、想像を絶するものがあるのであって、東洋医学(鍼灸)の観念論的な理論に搦めとられてしまうか、それに反発して過去の文化遺産を捨て去ってしまうか、になってしまったのはやむを得ないというべきであろう。

しかしながら、例えば「本間祥白」の如くの大先達も存在する。本間祥白は、経絡治療の理論的な中心であった人物であるが、彼は東洋大学哲学科卒との一般教養を持っての鍼灸(東洋医学)に挑むであったので、鍼灸の科学化は時代の要請であり、それに応えること無しには鍼灸は滅んでしまうとの危機感を持っての、鍼灸の学びであった。それだけに、鍼灸の文化遺産を受け継ぐという長年にわたっての努力の末に、それを「経絡治療」という形で結実させることが可能となっていった。
しかしながら、科学とは何かを分かり得なかった、当時の時代性としての科学=自然科学という発想しかなかったがゆえに、結果として鍼灸の科学化を成すこと能わずで、後生にそれを託すしかない、ということになっていってしまっている。とは言え、彼、本間祥白がそれなりの成果を上げることができたのは、東洋大学哲学科での一般教養の学びがあったればこそ、と思う。

これについては『誰にもわかる経絡治療講話』、特に「第1節 古典医術研究の態度」を読んでいただければと思うが、簡単に紹介しておきたい。


[本間祥白の鍼灸の科学化にについての見解]
「最後に鍼灸術科学化の問題、・・・(中略)・・・われわれの鍼灸医術も、この際この歴史洗礼(=科学的洗礼のこと・・・・・・ブログ筆者)を受けなかったら、永遠に古典、クラシックの名を冠せられて医学発達史の1ページに書き残されるに過ぎないものとなることは当然です。われわれの責務はここにあります。」

「よいものは滅びないといわれますが、・・・(中略)・・・時代の思想と合致しないものは、いつの時代にも自然消滅が行われるものです。ゆえに「よい」と認められている間に科学の軌道に乗せて、時代とともに進まねばならない理由があるのです、」

「われわれ鍼灸家がいくら科学化を絶叫したところで科学化はできません。なぜなれば、現在の鍼灸家で科学的教養を持った人はまれであるからです。鍼灸家もこれからは科学的教養を積まねばなりませんが、その問題以前に、鍼灸術と鍼灸家そのものの問題があります。現在の鍼灸家の大部分は・・・(中略)・・・数千年間の尊い経験の累積たる歴史的医術を体得していません。したがって、鍼灸術の一部はわかっていても、本質には触れていないのではないでしょうか。そこで全国の鍼灸家はその本質を十分に体得して臨床価値を高揚すれば、科学的教養ある人はなんでこれを見捨てましょうか。われわれが科学化、科学化といくら叫んだところで、かけ声のみです。科学的教養のある人に、このとおり立派な医術であることを指示し、科学の素材をそこに採ってもらわねばならないのです。そのためにわれわれは歴史ある尊い鍼灸術の本質を体得し、そして科学者へ素材としてこれを提供すべきです。これが最も賢明な方法と思います。その方法を誤ってへたに科学化の仕事にかかられると、科学化によって、かえって鍼灸術が破滅する可能性のあることに気づかねばなりません。」

要するに、本間祥白は、鍼灸の科学化ということは時代の要請であるだけではなしに、人類の(学問の)歴史から考えても必然であり、それ無しには鍼灸は時代に取り残されて消滅していくしかない、との危機感を持っていた。
そうではあるけれども、現在の鍼灸界には科学化を成し得るだけの科学的教養を持った人材が無いのだから、下手に科学化に着手して失敗するよりは、伝わっているものをしっかりと受け継いで、科学的教養を持つ人が鍼灸の科学化に着手するのを待つしか無い、と考えたということであろう。

これは、自身の管見内の事実からすれば、まさにその通りなのではあるが、本間祥白の情熱と一般教養とを知るにつけ、どうしてそんな「マザコン」的な、との思いを持つ。
とはいえ、昭和26年当時にあっては(未だに『弁証法はどういう科学か』すら存在しない時代の日本であってみれば)、科学=自然科学となるしかなかったのだと、鍼灸術の研鑽とともに新たな鍼灸科学を構築していくということを成し得なかったのも仕方のないこととも思える。

しかしながら、鍼灸の科学化ということを、人類の歴史の流れの必然性という大きなスケールで視ることの出来た本間祥白であってみれば、もっと志高くあって欲しかった!と残念の一言である。

『誰にもわかる経絡治療講話』は、一般にもわかりやすくを心がけて対話形式で書かれているので、本間祥白の認識、情熱に直接触れて見られることをおすすめしたい。
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