絵話塾だより

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2024年1月13日(土)文章たっぷりコース第5期・第4回の授業内容/高科正信先生

2024-01-21 20:30:44 | 文章たっぷりコース

年明け最初の授業です。長らく体調を崩してお休みしておられた方もこの日から復帰され、教室が賑やかになりました。
寒い季節は風邪やインフルエンザなど危険もいっぱいですが、皆さんこのまま健康に過ごしましょう!

元日から能登半島地震が起こったということで、神戸の人間はどうしても29年前のことを思い出してしまいます。
高科先生も「どうってことない日常が毎日続くということが、ありふれた奇跡である」とおっしゃっていました。
私たちも震災当時を思い出しながら、今の穏やかな日々をありがたく思い、一日一日を大切に過ごしていきましょう。

ということで、テキスト『60歳からの文章入門』(近藤勝重 著/幻冬舎新書)のP54~P74を見ていきました。
「読むだけで上達する藤沢周平作品のすすめ~村上春樹も文章のうまさを絶賛」とあり、いくつかの例文が紹介されています。
もちろん好き嫌いはあると思いますが、確かに簡潔で臨場感のある描写は魅力的で、リズミカルな文章は読むだけで学びになるのは分かります。

次の「驚くうちは楽しみがある」のところで、最近ではビジネスの企画書などで「5W1H」ではなく「6W2H」と言われるとありました。
Who When Where What Why How に、「Wow」(感動を表す)と「How much」(費用がいくらかかるか)が必要なのだそうです。

藤沢周平が奥様を亡くされた時の話(『半生の記』文春文庫)が紹介されていた流れで、『いまも、君を想う』(川本三郎・新潮文庫)の一部を見ていきました。
奥様に先立たれた文筆家の方々は、皆さんセンチメンタルな文章を書いておられますが、それに違和感を覚えるという人もいました。
そこで先生は「人間は情動の生き物であり、それをどのように書くかが問題だ」とおっしゃっていました。
即ち、素人は感情の赴くままに書いても良いが、プロの書き手は自分を対象化して、自分を客観的に見る必要がある。
それには自分で実際にいっぱい経験をし、いっぱい人の書いたものを読まないと、技量を獲得できない、と。
人の書いた文章を読むとき、自分ならどんなことをどんなふうに書くだろうかと考えて過ごしているのだとか…

 

休憩をはさんで後半は、前回も見ていった 広瀬友紀著『ちいさい言語学者の冒険――子どもに学ぶことばの秘密』 (岩波科学ライブラリー)  の続きをやりました。

今回は、「しゃ、しゅ、しょ」と記載する時の子音と母音部分の数が合わないとか、「じ」と「ぢ」・「ず」と「づ」の使い分けなど、ややこしいことが出てきました。
実は、学校では英語の文法を学ぶ授業はあるのに、国語の授業では日本語の文法は習いません。私たちは、経験で習得していきます。
だから、なぜそうなるのか疑問に思って、日本語の法則を発見したりするのは、子どもだったり外国人だったりするのだそうです。

前回の提出した課題「たべる」をテーマにした作品については、皆がそれぞれの切り口で書いてきたことを紹介した後で、
もし先生が「たべる」をテーマにした作品を書くなら…という内容について教えていただきました。
まさに先ほどおっしゃっていた「人の書いた文章を読むとき、自分ならどんなことをどんなふうに書くだろうかと考えて過ごしている」ということですね。

最後に、今回の課題は「コラムを書く」です。
コラムは各新聞に必ずある、いわば各新聞社の顔とも言えるコーナーです。
参考に2024年1月11日付けの「天声人語」を見ていきました。先日八代亜紀さんが亡くなったことについて、高倉健の映画『駅〜station』のエピソードを絡めて書かれた作品です。
今回は書く内容は自由ですが、文章のスタイルは18字×35行で、そのうち文頭の5行は14字、文末の2行は17字で書き、書き出しは1字下げて改行の代わりに▼を使う、という約束事があります。
ぜひあーでもないこーでもないと練り上げて、あなたならではの味のあるコラムを書いてください。
提出は次回1月27日(土)の授業の時です。よろしくお願いいたします。


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2023年12月23日(土)文章たっぷりコース第5期・第3回の授業内容/高科正信先生

2023-12-28 17:20:37 | 文章たっぷりコース

約一か月ぶりの文章たっぷりコースの授業でした。
お一人だけ風邪で欠席の方がいらっしゃいましたが、他の方々は元気で今年最後の授業に臨んでおられました。
※ スタッフがうっかりして、この日の記録写真を撮り忘れたため、今回は授業風景の写真がなくて申し訳ありません。

年末ということで、今年の締めくくり的なお話から。

今年もたくさんの方が亡くなりました。
11月末に亡くなった脚本家の山田太一は、ドラマ「岸辺のアルバム」や「ふぞろいの林檎たち」などの話題作で有名です。
高科先生はこの人の作品がお好きで、脚本集も持っておられるとか。
たとえ亡くなっても、その人が残した作品を見るといつでも彼らの世界に触れることができます。
高科先生も、いま山田太一の作品を読み直しておられるところだそうです。

ということで、テキスト『60歳からの文章入門』(近藤勝重 著/幻冬舎新書) のP36〜P53を見ていきました。

著者は、新聞でコラムを書くようになってから「気づきメモ」を取るようになり、後日そのメモから文章の題材を見つけるようになったとか。
文章に行き詰まったら、歩き回るとアイデアが浮かぶ、とも。
中国で昔、欧陽脩という人が、「気づき/ひらめきが得られる場所は、鞍上・枕上・厠上である」と言い、それが「三上の説」として伝わっているそうです。
「今なら移動中の電車の中、床の中、トイレの中であろう」とは、外山滋比古が著書『思考の整理学』 (ちくま文庫) の中で言っていることです。 
外山氏はさらに、「夢中・入浴中・散歩中」にもアイデアが浮かぶことがある、と言います。これは皆さん思い当たることでしょう。
そして、時には「休む」ことも重要だとのこと。
人それぞれやり方があると思いますが、自分のやりやすい方法を探してみるのも良いのではないでしょうか。

 

休憩をはさんで後半は、広瀬友紀著『ちいさい言語学者の冒険――子どもに学ぶことばの秘密』 (岩波科学ライブラリー)  から、
子どもたちがなぜ言い間違い、書き間違いをするのかという興味深い箇所を見ていきました。

「か」と「が」「た」と「だ」は発音する時の口の形が同じなのに、「は」と「ば」は違うから間違うのだ。とか、
「女心」は「おんなごころ」なのに、「女言葉」が「おんなことば」は、通常なら2つめの言葉の最初の文字が濁音になるところも、2つめの言葉に既に濁音が含まれているときはこの限りではない(ライマンの法則)とか、目からウロコな内容でした。

昔、日本には書き文字がありませんでしたが、奈良時代に中国から漢字が伝わり、平安時代にはかな文字ができて、書き言葉が盛んになったのは江戸時代になってからです。そして明治時代に学校ができ、現代仮名遣いが統一されました。
今はひらがな44音・濁音18音ですが、奈良時代にはかな61音・濁音27音もあったそうです。
もう使われなくなってしまった音も多いですが、神楽や能などの中には、昔の発音で歌われていることもあるようです。

最後は、課題についてです。

課題を提出するときに、書き直しを何回するかということで、皆に訊いていきました。
高科先生は、①下書き→②書き直す→③少し時間を置いて過不足を調整し、推敲する→④清書する→⑤読み直して、順番や言い換えを考慮して再度書き直す→⑥清書する
というように進めているそうです。
人それぞれにやり方がありますが、今はワープロソフトで書いている人も多いため書き直しも簡単にできるので、先生のような進め方も参考にすると良いでしょう。

そして、今回の課題のテーマは「わらう」です。
「あるく」「たべる」と動詞が続いていますが、テーマは言葉そのものではなく、「わらいにまつわるさまざまなこと」と捉えていただければ結構です。
いろんな「わらう」について好きなように、文字数やジャンルも自由に書いてください。

提出は、年明けの1月13日(土)にある次(4回目)の授業の時にしてください。よろしくお願いします。
お正月休みの間にアイデアを練ってくださいね。

それでは、良いお年を!

 

 

 


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2023年11月25日(土)文章たっぷりコース第5期・第2回の授業内容/高科正信先生

2023-11-26 20:54:52 | 文章たっぷりコース

文章たっぷりコース第5期の第2回目の授業は、高科先生が自作にかけた思いについての話から始まりました。

世の中には沢山の本があります。書店に並んだ本からお気に入りを選び、それを買って読んだり
あるいは図書館で借りて読むこともあるでしょう。
その時は、読者はその本を好きに読むことができるし、どんな感想を持っても良いでしょう。
作者が何を思って作品にしたかなど、できあがってしまうと読者には関係ありません。
でも、ほんの少しでよいから、作者が伝えたかったことについて気にかけてくれると嬉しいとのことでした。

まず、今期テキストとなる『60歳からの文章入門』(近藤勝重 著/幻冬舎新書)を皆で音読。
前回の【思うより思い出すことを書け】の続きで、筆者が毎日新聞で発表したコラム「アジサイを振り返り眺めつつ」と
【身のまわりの変化をとらえる】から、灘中の入試問題に使われたコラム「サンダルからブーツ」と、「天気は天の気」
を見ていきましたが、入試問題はとても難しく、先生を含め受講生の皆さんはどうやら灘中に入れそうにないことが分かりました。

続いて、哲学者の鶴見俊輔が1979年に行った一般向けの文章教室で話した内容をまとめた『文章心得帖』(ちくま学芸文庫)から
鶴見氏が考える理想の文章の条件が書いてある部分を皆で読んでいきました。

鶴見氏は必要なのは、①誠実であること ②明晰であること ③わかりやすいこと だと言っています。
 ①は、人が作った言い回しなどを使わずに、普段使っているような自分の言葉で書くこと
 ②は、自分できちんと定義できる範囲の言葉で書くこと
 ③は、読者にとって分かりやすい表現で書くこと だそうです。
 特に高度な知識を持つ人は、「おりていく」ことが必要ではないかということでした。

では、分かりやすく書くにはどうすれば良いか。
文章をまとめていく段階として①思いつき ②裏付け ③うったえ の順番があるそうです。
 ①は、発想、気づき、ひらめき のこと
 ②は、①の根拠を調べて確認する作業のこと。文章にリアリティを持たせるうえで、重要になります。
 ③は、何が書きたかったかを明確に示すこと なのだとか。
最後まで書いても分かりにくいときは、②③を繰り返しましょう。
以上は、コラムなどを書く場合で、小説を書くときはもう少し複雑な作業になるそうです。

休憩をはさんで後半は、ひらがなについての興味深いお話です。
50音には、各行ごとに色や形の特徴的な感覚があるというのです。
そこで、絵本『かっきくけっこ』(作・谷川俊太郎/絵・堀内誠一 初出・ひかりのくに/再版・くもん出版)を紹介してくださいました。

この本は、1972年に ひかりのくに から出版され、高科先生はそのバージョンを持って来てくださったのですが
そのバージョンには、ことばパフォーマーの はせみつこ さんたちが朗読したソノシートがついていて、今回はその音声を聞かせていただきました。

言葉というものは発声しないとわからないこともあって、ひらがなの各行には特徴的なイメージがあります。
ひらがなに濁点がつくと、また違ってきます。
ひらがなの持つ柔軟性と、その中から生まれてくる言葉遣いに気をつけて、かなを使うようにしましょう。

最後に、前回の課題「あるく」の参考文献として、朝日新聞に寄稿した平民金子さんのコラム『神戸の、その向こう』より
「心の中に きみだけの花を」「ふいに特別な 深夜散歩」を見ていきました。
平民さんのコラムはいつも、日常のほんの一瞬を捉えた “この人にしか書けない文章” になっているので、先生は以前からよく紹介してくださいます。
ユーモアやペーソスがあり、具体的に分かりやすく、読んでいると情景が浮かんでくる…彼のような文章が自在に書けたらいいですね。

さて、今回の課題のテーマは「たべる」です。
食べること、食べたこと(思い出)、食べ物についての考えなどについて、自由に書いてください。
食べることをテーマにした、創作でもかまいません。
枚数も自由ですが、できるだけ人に伝わるように書くためには、それなりのボリュームが必要になってきますね。

ということで、次回12月23日の授業の時までによろしくお願いいたします。

授業はここまででしたが、終わった後で生徒さんから
一つの作品の中で時間が行き来したりすることがある場合、一行空けたりするのはどうしたらよいか?という質問がありました。

文章には、まず “音節” があります。音節とは「わたしは」など、これ以上小さくできない(意味のある)言葉の単位です。
それを集めたものが “文章” で、文章を集めたものが “段落” です。段落は、意味がそんなに違わない文の固まりです。
段落は、あまり長くなりすぎると読みづらいので、4〜5行から長くても7〜8行を目安にすると、書き手も読み手も分かりやすいです。
そこから別の文章に移るときに、“改行” をします。
改行をしてからも話は続くのですが、そこで今まで書いてきた時点から時間が経ったり、別の視点から書くことになる場合は、
そのまま続けて書くと話が分かりにくくなるので、“一行空け” たりして進めるのが、常套的な手段になります。

また、会話文の書き方についても質問がありました。
先生の考え方では、(慣れないうちは)会話文と地の文は分けて書いた方が良いでしょうということです。
でも会話だけで続けていくと、話し手の様子が分かりにくくなるので、「…」の前後で情景が分かる文章を入れる場合もあります。

という具合に、このクラスでは先生のお話だけでなく、生徒さんからの質問で思いがけず授業が盛り上がることも多々あります。
皆さん意欲的に授業に参加されているので、2時間半があっという間な感じがします。

次回の授業まで一か月ほどあきますので、受講生の皆さんは体調を崩さぬよう気をつけて、課題執筆に務めてください。

なお、高科先生はつねづね課題以外の文章についても、何か書いたものがあれば読んでアドバイスしてくださるとおっしゃっているので、
皆さんどんどん書いていってくださいね!

 


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2023年11月11日(土)文章たっぷりコース第5期・初回の授業内容/高科正信先生

2023-11-13 20:41:16 | 文章たっぷりコース

文章たっぷりコース第5期が始まりました。

まず、皆さんがなぜこのクラスを受講しようと思ったかを含めた自己紹介をし、
高科先生の自己紹介の中では出版されたばかりの『プレゼントはひとつ』(文:高科正信/絵:コマツシンヤ 福音館こどものとも年中向き2023年12月号)
と、前作『はしを わたって しらない まちへ』(文:高科正信/絵:中川洋典 福音館こどものとも2017年10月号)についての話をしてくださいました。

この講座では、「、」「。」の打ち方から原稿用紙の使い方まで、文章の書き方をていねいに教えてくださるそうです。

この日は、中高生のための文章読本 ー 読む力をつけるノンフィクション選(編:澤田英輔・仲島ひとみ・森大徳 筑摩書房)から、
長田弘の詩「世界は一冊の本」という詩と、序文を紹介してくださいました。
この詩は『ポケット詩集』(編:田中和雄 童話屋)に収められた作品です。

『ポケット詩集』からは、茨木のり子の「聴く力」も紹介してくだいました。
今から文章の書き方を学ぼうとする皆さんの心に、届いたでしょうか。

このように、さまざまな書籍の中の文章を取り上げながら「書くとはどういうことか」「いかに書くか」について、
先生ができるだけのことを伝えていこう、書いていくときに本当に必要なものは何かを話していこうと思う、とおっしゃいます。
せっかく受講するのだから、できるだけたくさんのことを手に入れてほしいとのことでした。

そして、今期のテキスト『60歳からの文章入門』(著:近藤勝重 幻冬舎新書686)を皆で音読していきました。
「、」「。」に気をつけながら読んでいくと、作者の意図や意味、リズムや文体が分かり、自分にも身につくようになります。

この日は
●言葉と文字と文章と
・言葉を選択する力
●「思うこと」より「思い出すこと」を書く
・作文10カ条
・文章は最高の自己表現
・体験は「気づき/ひらめき」の素 のところを見ていきました。

とくに作者による「作文10カ条」のところは、これから文章を書くときに気をつけていきたいことです。
書くテーマと自分の間にある程度の距離をとり、自己を対象化して、主観性だけでなく客観性を持たせることが重要だとか
文章を書くということは、たとえ日記であっても誰かに読まれることを前提に書くべきだとか
皆が次々と質問して、授業が盛り上がりました。

高科先生によれば、人類が誕生して他の人に何か(感情・情動)を自分ではない誰かに伝えたいときに、言葉が生まれたのではないか。
最初は表情や身振り手振りや仕草やうめき声だったでしょうが、まず何かを表す言葉ができ、次に洞窟などに絵言葉を描いて残し、そしてその地方独自の文字ができ、それをつなげて意味の分かるものにして言ったのが、文章であろう、とのことでした。

休憩をはさんで、後半は「書く」ことについて学んでいきました。
まずは、これから毎回でる課題を書いていくときに使う原稿用紙の使い方の確認です。

①原稿用紙は縦書きを使う。サイズやメーカーは問わないが、1枚400字詰めのものを選ぶ。
②題名は2行目の3〜4マス目くらいから書き始める。
 短いものは行内でバランスを取るが、題名が長くて2行にわたるとき2行目は1行目より少し下から書く。
③作者名は4行目の下の方に書く。②の題名が2行にわたっていても、作者名は4行目固定で。
④本文は6行目から始め、書き出しは1マスあけて2マス目から書いていく。
⑤1枚に一つノンブル(ページ数)を書いておくと、入れ替わったときに気づきやすい。
⑥ 文末の 、 。が次の行にわたるときは、前の行の欄外にぶら下げる。
⑦「」は一文字と数え、行頭にくるときは段落が変わるときでも1マスあけなくても良い。
⑧撥音(っ・ゃ 等)・長音(ー)は行頭になってもかまわない。
⑨数字や外国語は基本は縦書きだが、文字を寝かせた横書きでもかまわない。
⑩会話文の「」中には文末に。はつけない。
⑪「」『』()などの使い方に気を配る。
⑫以上の表記上の約束事は、一つの文章の中では統一する。
⑬公募などでどこかに提出する原稿は、上に1枚題名と作者名の書かれた別紙をつけるのが礼儀である。

等々、たくさんの約束事がありました。
文章を書くとき、手元に辞書の他に各新聞社などが出している「用字用語辞典」の類いがあれば
何か書いていて迷ったときにすぐ確認できて、便利です。

そして、今回の課題です。
上記にあるような約束事を守り、「あるく」をテーマにしてエッセイ・創作・詩など、自由な内容・長さの文章を書いてください。
※ この教室での課題を提出する際は、上に1枚つけなくても、本文が書いてあるページからで結構です。

実際に歩いてみて、または以前歩いたときに感じたことや考えたことなど、「自分にしか書けないこと」を思い浮かべながら書いてください。

次の授業は11月25日(土)です。皆さん、頑張ってくださいね!


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2023年7月15日(土)文章たっぷりコース第4期・16回目(最終回)の授業内容/高科正信先生

2023-07-16 21:55:11 | 文章たっぷりコース

文章たっぷりコース第4期も、ついに最後の授業になりました。
昨年11月から約9か月、毎回さまざまなテーマについて学びました。

最終回はいつもと逆で、テキスト『文章のみがき方』(辰濃和男 著・岩波新書)を先に学びました。
この日は「Ⅳ. 文章修行のために」から、「4. 概念を壊す」「5. 動詞を中心にすえる」「6. 」低い視線で書く」のところです。

高科先生も、駆け出しの頃によく「今まで身につけてきた既成概念を壊して書け」と先輩から言われたそうです。
創作する時は、走り幅跳びのように、①気持ちを高めて ②助走のスタートを切り ③加速して ④タイミングを合わせて ⑤踏み切り ⑤空中姿勢を保って ⑥なるべく距離を伸ばし ⑦着地する という工程で進めます。
初心者はつい、次は⑦の着地した所から始めようと思いがちですが、実はまた①から始めなければならない、と先生はおっしゃいます。
一つ完成したら、それをもっと良くしたいと手を加えたくなりますが、そうではないのです。
すぐれた批評家というのは、①〜⑦のさまざまな場面について、アドバイスをしてくれます。

初心者はまた、「私は(この作品を)こんなふうに思って作った」と言いがちですが、完成した瞬間から作品は作者の手を離れて読む人・見る人の手に委ねられ、好きなように読んで・見てもらうような存在になるです。

長田弘はエッセイの中で「今は名詞が多すぎて、動詞が少なすぎる」と言っているそうです。
テキストの中では、新しい名詞がどんどんできて、使い捨てられていく。そして動詞は「カタカナ語+する」という使い方が増えている。その風潮は日本語の根源を揺るがす危機ではないかと問題提起しています。

※ 参考文献として、大野晋の『日本語練習帳』(岩波新書)と、今井むつみ・秋田喜美の『言語と本質―ことばはどう生まれ、進化したか―』(中央公論社)を紹介してくださいました。

 『日本語練習帳』(大野晋・岩波新書)https://www.iwanami.co.jp/book/b268415.html

 『言語と本質―ことばはどう生まれ、進化したか―』(今井むつみ・秋田喜美、中央公論社)

https://www.chuko.co.jp/search.php?name4=言語の本質&btn.x=0&btn.y=0

視線については、「人間中心主義」では発見することができない、視線を低くすると見えてくるものにも、きちんと目を向けていきましょう、とのことでした。

今期は、テキストを最後まで見ていくことができませんでした。
残りの「7. 自分と向き合う」「8. そっけなさを考える 」「9. 思いの深さを大切にする」「10. 渾身の力で取り組む」の箇所は、各自で見ていってください。
そうして、本に書いてあるさまざまなことの中から、自分で良いと思うところを取り入れていくのが良いでしょう、というところで、今期のテキストの授業は終わりです。

ここで、以前学んだ「土地の言葉で書く」ということについて、質問がありました。
ネイティブでない言葉で書くときは、その土地の言葉に精通した人に見てもらうのが一番ですが、それができない時は、できるだけその土地の言葉で書かれたものや、話している音声を聞いて、自分で慣れるしかありません。

 『ブス愚痴録』(田辺聖子、文藝春秋)

https://books.bunshun.jp/ud/book/num/1671533600000000000O


田辺聖子のように、地の文は標準語で台詞は関西弁という人もいるし、千草茜のように両方関西弁の人もいます。また、宮沢賢治は東北の言葉で書く以外に、独自のオノマトペを使うところが、特徴であり、魅力になっています。

高科先生は、今年の11月に福音館から『プレゼントはひとつ』(絵・コマツシンヤ、こどものとも年中向け12月号)という絵本を出版されます。先生はもう後書きも書き終えて、あとは絵の完成を待っているところだそうです。楽しみですね!

休憩を挟んで、後半は今日のテーマ「子どもの本ってなんだろう?」に沿った作品の紹介です。
先生が何度もおっしゃるように、子どもの本に色濃く流れているのは、ある種の「おめでたさ」「祝祭」です。

 『クマのプーさん』(著・A.A.ミルン、絵・E.H.シェパード、訳・石井桃子、岩波書店) https://www.iwanami.co.jp/book/b269483.html

クマのプーさんのお話は、全てトンチンカンでおめでたいものです。

方言で書かれた『いちにちにへんとおるバス』(文・中川正文、絵・梶山俊夫、ひかりのくに)は、山のタヌキが恩返しをするお話です。作品におめでたさがあるから、読後、息がしやすく・生きやすくなります。

 『いちにちにへんとおるバス』(文・中川正文、絵・梶山俊夫、ひかりのくに)

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=22861&pcf=1

続いては『のまどくん』(作・片山健、文溪堂)です。のまど(NOMADO)とは、遊牧民・放浪者の意味で、自由気ままに生活する人をイメージした名前です。
繰り返される「のまどくんは◯◯が好き」というフレーズで、話はどんどん展開していき、概念や価値観にとらわれずに生きていけるというお話です。

『のまどくん』(作・片山健、文溪堂)

https://common.bunkei.co.jp/books/3212.html

 『タンゲくん』 (片山健、福音館書店)

https://www.fukuinkan.co.jp/book/?id=565

片山健の作品は『タンゲくん』(福音館書店)でもそうですが、レイチェル・カースンが言うところの「幸福に驚く力、(ある種の)機嫌の良さ」に満ちており、それが魅力になっています。
子どもの本に必要なのはそういうことだと、清水真砂子・河合隼雄・宮崎駿らも言っています。

次に、まど・みちおの『いわずにおれない』(集英社)から、クスッと笑える3つの詩を紹介してもらいました。彼の作品も、ひらがなを使い、軽みがあるからこそ「おめでたさ」に満ちています。

『いわずにおれない』(まど・みちお、集英社)

https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=4-08-650101-5

まどさんも、前回の授業で紹介していただいた長新太と同じく、「子ども性」を持ち続けている作家です。子どもの本の作家は「子どもを生きる」ことを常に考えて、書き続けているのです。

最後に、前回の課題(おもちゃ、おもちゃ箱、おもちゃの持ち主の子どもをテーマにした短編)を返してもらい、参考文献として高科先生の掌編『ぽいぽいぽーい』と、レオ・レオニの『アレクサンダとぜんまいねずみ』(訳・谷川俊太郎、好学社)を紹介していただきました。

 『アレクサンダとぜんまいねずみ』(作・レオ・レオニ、訳・谷川俊太郎、好学社)

https://leolionni.jp/books/313/

高科先生は、絵本や児童文学の知識が豊富で、毎回さまざまな作品を紹介していただきます。
臨場感のある読み聞かせも楽しく、2時間半の授業があっという間です。
課題のテーマも多岐に渡り、書いたことのないジャンルにチャレンジでき、先生がそれを読んで一人一人に」アドバイスしてくださるので、文章力アップにつながります。

今期はこのような感じで進んできましたが、11月から始まる第5期は、テキストや毎回の授業のテーマも変わるそうです。
このブログを読んで、ご興味をもたれた方、参加してみたいと思われた方は、ぜひご連絡ください。よろしくお願いいたします。


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