高科先生の三回目の授業は「行って帰ってくる物語」がテーマでした。
高科先生の書籍『たぬきがくるよ』も行って帰ってくる物語です。
高科先生の作品には珍しいファンタジーのお話です。
『たぬきがくるよ』は主人公わかばが、ウサギ穴に落ちたり、タコ滑り台を滑ったり、押し入れに入ったりして、不思議な世界へ迷い込んで行く……
高科先生の作品はリアリズムのお話が多いのですが
「子どもの頃は家に絵本はなく、絵本の中でリスや魚と遊んだ記憶がない。今、書くことでそれを追体験しているかもしれない」と、おっしゃていました。
行って帰ってくるお話で『ナル二ア国物語』のように映画化になっている作品は沢山ありますが、
その中で『ホビットの冒険』J・R・R・トールキン作 1937年・・・瀬田貞二 訳 を紹介していただきました。
『ホビットの冒険』を翻訳されている瀬田貞二の『幼い子の文学』の中で、幼い子の喜ぶ話には、構造上のパターンがある。それは「行って帰ってくる話」と、あります。
子どもの頃の遊びで「はないちもんめ」がありますが、同じセリフのくり返しで行って帰ってくる面白さがあるのではないでしょうか。
行って帰ってくる物語の絵本を紹介していただきました。
『アンガスとあひる』マージョリー・フラック 1930年
スコッチテリアのアンガスとアヒルのお話です。
アンガスは安全で安心の世界(退屈で守られた世界)から、生け垣を越えることで新しい経験をしてまた日常に帰って来ます。
帰って来た時には、以前のアンガスではなく、経験を積んだアンガスになっているのです。
『かいじゅうたちのいるところ』モーリス・センダック 1963年
少年マックスが、かいじゅうたちがいる空想の世界に行って帰ってくるお話です。
日常(現実世界)にいるマックスが、目を閉じて非日常(空想世界)に行って圧倒的な満足感を得て、自分の部屋に帰って来ます。
絵の大きさにも特徴があって、ページごとに絵の大きさが変わっています。
この絵の大きさには、マックスの空想世界の大きさを表しています。
『アンガスとあひる』では、生け垣という地続きのところに日常と新しい経験という境目があるのですが、
『かいじゅうたちのいるところ』では、目を閉じるという行為で非日常へ行ける。リアリズムとファンタジーの違いです。
『おしいれのぼうけん』古田足日 作 田畑精一 絵 1974年
幼稚園の押し入れに入るとねずみばあさんが現れるお話です。
現実の幼稚園の中にも、幼稚園の押し入れの中が空想世界になってます。
大事なのは、子どもの文学では行ったら必ず帰ってくることで「あー、よかった」と思って読み終えることが出来ることです。
次回11月11日(水)テーマは「私とは誰か?」です。
【課題】
「絵本のテキストを書く」 *締切11月4日(水)
登場人物に、ひよこ・うさぎ・きつね・を必ず登場させてください。
(それ以外の登場人物が増えてもいいです)
15見開きで、文章のみで書いてください。(絵はいらないです)
見開きの書きだしに1~15の番号を打ってください。
縦書きの原稿用紙に書いてください。