重苦しい後味の舞台だった。
舞台は地方の町にある小学校の教室。
よく見かける風景そのままに、小学生の書いたお習字の作品が貼ってある。
全員が「希望」と書いている中、ひとりだけ「絶望」と書いている。
このクラスの担任、菊池(井上芳雄さん)がそれを書いた子の母親と電話で話しているところから物語は始まる。
菊池は生徒にも保護者にもとても人気のある「いい先生」らしい。
そこにかつての同級生たちが集まってくる。
かつて「番長」と呼ばれ、今はレストランを経営している不知火(高橋努さん)
かつて「がり勉」と呼ばれ、今は実家の工務店を継いでいる坂田(岩瀬亮さん)
かつて「のけ者」にされていて、教室に入って行っても「誰だっけ?」と言われる水本(有川マコトさん)
かつて「恋する女子」で地元の役所に勤めている漆原恵子(小島聖さん)
かつて「マドンナ」だった小西友紀(鈴木砂羽さん)その妹蘭(前田亜季さん)
「マドンナ」が事故で子供を亡くしたことを励まそうという趣旨で、菊池が企画したプチ同窓会に集まった彼ら。
和やかな楽しい会になるはずだった。
が、そこに招いていないはずの、かつての担任、寺井(近藤正臣さん)が、足を引きずりながらやってきたことから、
不穏な空気が流れだす。
寺井は、体罰当たり前の厳しい教師で、みんなが彼に不満を抱いていた。
話しが進むにつれ、それぞれの抱える過去や現実が次々と明らかになり、秘密が暴かれ、
友人に対して抱いていた、善意や悪意が浮き彫りにされいく。
とりわけ、生徒たちが、子供特有の残酷さで寺井に仕掛けた「仕返し」の代償の大きさに愕然とする。
それぞれが、自分に都合の悪い過去の記憶を半ば無意識のうちに塗り替え、正当化している様子は、
私達の誰もが多少なりとも思い当たることがあるのではないだろうか。
普段、しっかり者で明るく前向きな人物を演じることが多い鈴木砂羽さんが、
どんより暗く後ろ向きで、すべてを他人のせいにして生きている女性を好演。
非の打ち所がない、「いい先生」は実は事なかれ主義で、誰にでもいい顔をしていることで、
生徒からの信頼を失ってしまい、どうも、この後、まずい立場になりそう。
いつも生徒を突き放し、時には罵り、体罰も辞さない「悪い教師」は、実は生徒の一人一人を理解して、
自分なりに向き合っていたらしい。
「正しい」とはなんなのか、がどんどんわからなくなってくる。
人間は、辛いことや悲しいことから先に忘れていくという。
そうでなければ、辛くて生きていけないから。
かくいう私も、学生時代をふっと思い出すときは、楽しい思い出がほとんどだ。
けれど、子供特有の残酷さで、先生に反抗したり、誰かを傷つけてきたことだろう。
大人になった私たちは、かつて抱いていた夢や希望の通りに生きていない人がほとんどではないかと思う。
それでも、日々の生活に折り合いをつけながら、その中で小さな希望や喜びを見つけながら、
少しずつの幸せを感じて生きて行けたら・・・。
少なくても、かつての仲間に会うときに、成功してなくてもいいから恥じることがない人生を送れたら、
と、この年になると思ったりもする。
ちょっとちっちゃい・・・
寺井先生を演じる近藤さんがホントに素敵。
時に、いや~な物言いをするかと思うと、静かに本質を突く言葉をつぶやく。
カーテンコールの退場の時はとってもキュート
こんな風に歳を重ねて行きたいものだ。
脚本の蓬莱竜太氏の、学校への思いが現れているのかどうかはわからないけれど、
なんとなく、学校教育への絶望のようなものがうかがえるような・・・。
けれど、わが子も含めて、学校へは行かなければならないし、その狭い狭い社会の中で、
居場所を見つけなければならない。
結局は自分の身は自分で守り続けなければいけないんだな、としみじみ思う。
なんとなく、下向きの気持ちになってしまう舞台を観た翌日、
私は、別の舞台を観に、阿佐ヶ谷へ
こちらは前日のパルコ劇場とはうって変わって、まるで喫茶店を思わせるような小さな劇場。
一番前に座ったら、舞台までの距離が1mも無いくらい。

カードキーのようなチケットがとっても素敵
以前に参加していたセミナーでご一緒した方が、脚本を書いた舞台上演される、というお知らせをいただき、
のこのことやってきた。
このとき、ご一緒した方たちは、セミナー終了後も情熱を失うことなく、精力的に作品を作り続けている。
リーディングを含めた発表の場も次々と企画して、すばらしい。
私はと言うと、皆さんの作品を観に行くだけで、ちょっと心苦しい。
「team3E」というユニットの「フロントコールは0番へ」という舞台。
大規模シティホテル「team3E」を舞台にした4話からなるオムニバス形式。
「ザ・ライトスタッフ」
「イノナカ」
「プラン」
「カモミール」
セミナーの時にスタッフとしてお世話になった梅咲ミヤビさんがこの劇団の方だったってことをこの日初めて知った。
「ザ・ライトスタッフ」というコントの脚本を書いてらっしゃる。
グループでご一緒したのは真柄茂和さん。
第2話の「イノナカ」担当。
こちらはコントではなく、短編戯曲。
それぞれの話につながりはないけれど、ホテルの中でおこりそうなさまざまな出来事を、
面白く、時にはシリアスに綴っていて、全体としてとってもよくまとまっていて違和感がない。
寺坂光恵さんが演じるお嬢様がとってもキュート
恋人の追及や下心をのらりくらりとかわしながらも、時々グサッと鋭いことを言って、したたかな顔をのぞかせる。
現状を打破したい強い決意みたいなものを感じる台詞は、作者の思いを反映してるのかしら?なんて深読みしてしまう。
ひらりと鮮やかに恋人を切り捨てて行く様が小気味いい。
アメリカのバスケットボールの選手が言っていた(と思う)言葉を思い出す。
「失敗には耐えられる。挑戦しないことには耐えられない」っていうような意味だったような・・・。
いつもうろ覚えですみません
軽妙な言葉のやり取りに、笑いながらも、ときどきドキッと心に響く、楽しい舞台でした。
実はこの前の週にも、同じくセミナーでご一緒した小谷陽子さんが所属する「制作委員会」と言う劇団の舞台、
「尼ちゃん」を観に行った。
脚本も小谷さん。
タイトルでまず笑ってしまう。
秋葉原の小さな劇場で、立体駐車場のターンテーブルのような小さな回り舞台。
その上でのドタバタは、在りし日のドリフターズを彷彿とさせる(古い
)
お寺を舞台に登場人物のそれぞれのエピソードや人間関係が、わかりやすく楽しく描かれていて、
とても楽しかった。
小谷さんご自身も出演されていて、ピリッとしたセリフで締めている。
「正しい教室」はちょっと未来が見えない感じで、暗い気持ちになったけれど、
こちらの二つは、内容もかかわっている方たちからも前向きなオーラが伝わってきて、
元気をいただいた気がする。
次回の作品も楽しみにしています。
また、お声をかけてくださいね
舞台は地方の町にある小学校の教室。
よく見かける風景そのままに、小学生の書いたお習字の作品が貼ってある。
全員が「希望」と書いている中、ひとりだけ「絶望」と書いている。
このクラスの担任、菊池(井上芳雄さん)がそれを書いた子の母親と電話で話しているところから物語は始まる。
菊池は生徒にも保護者にもとても人気のある「いい先生」らしい。
そこにかつての同級生たちが集まってくる。
かつて「番長」と呼ばれ、今はレストランを経営している不知火(高橋努さん)
かつて「がり勉」と呼ばれ、今は実家の工務店を継いでいる坂田(岩瀬亮さん)
かつて「のけ者」にされていて、教室に入って行っても「誰だっけ?」と言われる水本(有川マコトさん)
かつて「恋する女子」で地元の役所に勤めている漆原恵子(小島聖さん)
かつて「マドンナ」だった小西友紀(鈴木砂羽さん)その妹蘭(前田亜季さん)
「マドンナ」が事故で子供を亡くしたことを励まそうという趣旨で、菊池が企画したプチ同窓会に集まった彼ら。
和やかな楽しい会になるはずだった。
が、そこに招いていないはずの、かつての担任、寺井(近藤正臣さん)が、足を引きずりながらやってきたことから、
不穏な空気が流れだす。
寺井は、体罰当たり前の厳しい教師で、みんなが彼に不満を抱いていた。
話しが進むにつれ、それぞれの抱える過去や現実が次々と明らかになり、秘密が暴かれ、
友人に対して抱いていた、善意や悪意が浮き彫りにされいく。
とりわけ、生徒たちが、子供特有の残酷さで寺井に仕掛けた「仕返し」の代償の大きさに愕然とする。
それぞれが、自分に都合の悪い過去の記憶を半ば無意識のうちに塗り替え、正当化している様子は、
私達の誰もが多少なりとも思い当たることがあるのではないだろうか。
普段、しっかり者で明るく前向きな人物を演じることが多い鈴木砂羽さんが、
どんより暗く後ろ向きで、すべてを他人のせいにして生きている女性を好演。
非の打ち所がない、「いい先生」は実は事なかれ主義で、誰にでもいい顔をしていることで、
生徒からの信頼を失ってしまい、どうも、この後、まずい立場になりそう。
いつも生徒を突き放し、時には罵り、体罰も辞さない「悪い教師」は、実は生徒の一人一人を理解して、
自分なりに向き合っていたらしい。
「正しい」とはなんなのか、がどんどんわからなくなってくる。
人間は、辛いことや悲しいことから先に忘れていくという。
そうでなければ、辛くて生きていけないから。
かくいう私も、学生時代をふっと思い出すときは、楽しい思い出がほとんどだ。
けれど、子供特有の残酷さで、先生に反抗したり、誰かを傷つけてきたことだろう。
大人になった私たちは、かつて抱いていた夢や希望の通りに生きていない人がほとんどではないかと思う。
それでも、日々の生活に折り合いをつけながら、その中で小さな希望や喜びを見つけながら、
少しずつの幸せを感じて生きて行けたら・・・。
少なくても、かつての仲間に会うときに、成功してなくてもいいから恥じることがない人生を送れたら、
と、この年になると思ったりもする。
ちょっとちっちゃい・・・
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寺井先生を演じる近藤さんがホントに素敵。
時に、いや~な物言いをするかと思うと、静かに本質を突く言葉をつぶやく。
カーテンコールの退場の時はとってもキュート
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こんな風に歳を重ねて行きたいものだ。
脚本の蓬莱竜太氏の、学校への思いが現れているのかどうかはわからないけれど、
なんとなく、学校教育への絶望のようなものがうかがえるような・・・。
けれど、わが子も含めて、学校へは行かなければならないし、その狭い狭い社会の中で、
居場所を見つけなければならない。
結局は自分の身は自分で守り続けなければいけないんだな、としみじみ思う。
なんとなく、下向きの気持ちになってしまう舞台を観た翌日、
私は、別の舞台を観に、阿佐ヶ谷へ
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こちらは前日のパルコ劇場とはうって変わって、まるで喫茶店を思わせるような小さな劇場。
一番前に座ったら、舞台までの距離が1mも無いくらい。
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カードキーのようなチケットがとっても素敵
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以前に参加していたセミナーでご一緒した方が、脚本を書いた舞台上演される、というお知らせをいただき、
のこのことやってきた。
このとき、ご一緒した方たちは、セミナー終了後も情熱を失うことなく、精力的に作品を作り続けている。
リーディングを含めた発表の場も次々と企画して、すばらしい。
私はと言うと、皆さんの作品を観に行くだけで、ちょっと心苦しい。
「team3E」というユニットの「フロントコールは0番へ」という舞台。
大規模シティホテル「team3E」を舞台にした4話からなるオムニバス形式。
「ザ・ライトスタッフ」
「イノナカ」
「プラン」
「カモミール」
セミナーの時にスタッフとしてお世話になった梅咲ミヤビさんがこの劇団の方だったってことをこの日初めて知った。
「ザ・ライトスタッフ」というコントの脚本を書いてらっしゃる。
グループでご一緒したのは真柄茂和さん。
第2話の「イノナカ」担当。
こちらはコントではなく、短編戯曲。
それぞれの話につながりはないけれど、ホテルの中でおこりそうなさまざまな出来事を、
面白く、時にはシリアスに綴っていて、全体としてとってもよくまとまっていて違和感がない。
寺坂光恵さんが演じるお嬢様がとってもキュート
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恋人の追及や下心をのらりくらりとかわしながらも、時々グサッと鋭いことを言って、したたかな顔をのぞかせる。
現状を打破したい強い決意みたいなものを感じる台詞は、作者の思いを反映してるのかしら?なんて深読みしてしまう。
ひらりと鮮やかに恋人を切り捨てて行く様が小気味いい。
アメリカのバスケットボールの選手が言っていた(と思う)言葉を思い出す。
「失敗には耐えられる。挑戦しないことには耐えられない」っていうような意味だったような・・・。
いつもうろ覚えですみません
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軽妙な言葉のやり取りに、笑いながらも、ときどきドキッと心に響く、楽しい舞台でした。
実はこの前の週にも、同じくセミナーでご一緒した小谷陽子さんが所属する「制作委員会」と言う劇団の舞台、
「尼ちゃん」を観に行った。
脚本も小谷さん。
タイトルでまず笑ってしまう。
秋葉原の小さな劇場で、立体駐車場のターンテーブルのような小さな回り舞台。
その上でのドタバタは、在りし日のドリフターズを彷彿とさせる(古い
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お寺を舞台に登場人物のそれぞれのエピソードや人間関係が、わかりやすく楽しく描かれていて、
とても楽しかった。
小谷さんご自身も出演されていて、ピリッとしたセリフで締めている。
「正しい教室」はちょっと未来が見えない感じで、暗い気持ちになったけれど、
こちらの二つは、内容もかかわっている方たちからも前向きなオーラが伝わってきて、
元気をいただいた気がする。
次回の作品も楽しみにしています。
また、お声をかけてくださいね
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