すっかり春らしくなった3月の初め、
友人と一緒に
湯島にある国立近現代建築資料館に初めて行ってみた。
建築家原広司氏の展示会をやっていると新聞に載っていたから。
何十年も建築の仕事をやってきたのに、
恥ずかしながらこの施設の存在も知らなかった。
湯島地方合同庁舎内の奥の方にあるこの施設は入場無料。
入口で守衛さんからバッチをいただき、胸に付けて入場し、
帰りに返却する、というシステム。
そういえば江戸城跡もそうだった。
中に入ると
大きなポスター。
さほど広くない会場には所狭しと図面やスケッチが展示してある。
今ではすっかり見かけなくなった手描きの図面が懐かしい。
CADというソフトで書いた図面は、
印刷物のように美しいけれど、
手描きの図面はそれ自体が芸術作品のようだ。
もちろん、描いた人によりますが・・・
個人住宅の図面やスケッチからはじまり、
小さな美術館、幼稚園、小学校・・・
どれも、動線や光の入り方まで何度も考察した後がスケッチから読みとれる。
こんなに考えられた住宅に住める施主はどんなに幸せなことだろう。
こんなに細かい配慮が施された幼稚園や小学校で学んだり遊んだりできた子供たちはどんな大人になってるのだろう。
と目の前に様々な情景が浮かんで図面やスケッチの前で妄想する。
大きな有名美術館と違って人が少ないので、
また、平日の午前中ってこともあり
じっくりゆっくり立ち止まって見ることが出来る。
順番に見ていくと
おなじみの京都駅や大阪の新梅田シティ・スカイビル、札幌ドームが現れる。
一緒に行った友人は、ご主人のご実家のお墓が京都にあり、
度々京都を訪れているのだが、京都駅にはいくたびに新しい発見があるという。
展示室の真ん中には原氏の思想の集大成らしい大きな模型が展示されている。
これまでに設計されてきた建物の模型がランダムに配置され、
「有孔体と浮遊の思想」が表現されているらしい。
会場内に流されている動画で原氏自身がそのことについて語っていたけれど、
凡人には難しくてちょっと理解できなかった。
有孔って聞くと建物の開口部のことみたいだけれど、
単純にそうではなく
建物自体とそれを取り巻く空間、環境、景観などもっと大きなことにむかって開かれているもののような・・・
確かに原氏の建物は曲線をふんだんに使ったり、と個性的だけれど
沖縄の首里城の隣の小学校にも見られるように、
首里城の景観を邪魔することなく、高さに配慮し、色も合わせて、風景に溶け込んでいる。
これでもか、とその建物だけが周囲から浮いて自己主張するものも数ある中、
そもそもの発想から違っていることにスケールの大きさを感じた。
展示会のタイトル
「建築に何が可能か」
と言うことを改めて考える貴重な時間。
私などが手掛けるものは街並みの中のほんの小さな一部だけれど、
それでもそんな小さな一つ一つが大きな街になっていく、ってことを改めて思った。
午後から観劇の予定があったので、
この施設のお隣にある
旧岩崎邸庭園は見る時間が無くて残念。
旧岩崎邸庭園|公園へ行こう! (tokyo-park.or.jp)
岩崎邸と、すぐそばにある湯島天神はまた後日、と言うことで、
私たちは渋谷パルコ劇場に向かったのでした。
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おしごとブログ | 晶設計室 (sho-designroom.com)
撮影していいのかどうかわからなくて
なんとなく気が引けて撮影しなかったけど、
見終わるころにはシャッター音が聞こえていたので、
撮っておけばよかった、とちょっと後悔。
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