とても静かで品のいい舞台を観た気がする。
もちろん、今まで見た他の舞台が下品だったというわけでは断じてない。
ただ、全体に流れる空気感と言うか、ピンと通っている糸というかそういうものが
なんだか、とても心地よかった。
恥ずかしながら、夏目漱石の「草枕」は読んでいない。
どうも昔から漱石はなんとなく苦手で、すいすい読み進んでいかない。
なんだか私には展開がまどろっこしいというか・・・。
「草枕」を読んでいたらもっと深く理解できて、よりおもしろかったのかもしれない、
と思うとちょっと残念。
この舞台は「草枕」を舞台化したものではないらしい。
ただ主人公が30歳の画工という設定は同じのようだ。
この画工を段田安則さんが演じる。
30歳っていうのはちょっとどうだろう・・・?
画工は卓(つな)という美しい女性の絵を描きたいと思う。
この卓が小泉今日子さん。
凛とした中に楚々とした雰囲気を醸し出し、本当に美しい。
この卓の美しさと強さの理由を知り、彼女の絵を描く力を磨くために、旅に出た画工は、
山あいの温泉場に逗留し、そこで三度結婚に失敗したという女将、那美と出会う。
那美は小泉さんの二役だ。
この那美が「前田卓(つな)」という実在の人物のモデルとか。
最初に出てきた卓とは違って、
あっけらかんとして、ぽんぽんと物怖じしない振る舞いと、ちょっとミステリアスな美しさで画工を翻弄する。
ここで画工が出会う禅僧、大徹に春海四方さん。
那美の従姉弟で洋画を描く久一に山田悠介さん。
那美の父である案山子(名前)や茶屋の老婆、床屋の亭主、宿屋の仲居、中折れ帽の男など一人で5役を演じるのは、浅野和之さん。
浅野さんが出てくると、会場は一気に笑いに包まれ、すこしゆるんできた観客をわしづかみで舞台に引き戻す。
いつも思うけれど、本当にすごい。
以前に観た、三谷幸喜さん作の「ペッジ・パードン」では、
下宿のオジサン、オバサン、来客の女性や泥棒、挙句に犬まで一人で演じてらっしゃった。
そうそう、この時は夏目漱石本人のお話だったっけ・・・。
舞台は筆で書いたようなモノクロの背景。
時々映像で動きが出る。
例えば身を投げた女性が川を流れてくる映像とか・・・。
終始、明るく、時に激しい那美が、出征する久一や、夢を追って満州に行こうとしている元夫の乗る汽車を見送るシーンは後姿だけ。
死を予感させる男たちの旅立ちを見送るその表情は見えないので、
泣き顔なのか、毅然とした表情なのか、はたまた泣き笑いの笑顔なのかはわからないが、背中がなんとも切ない。
画工は美しさと強さの前には「あわれ」がある、と気づき、卓の肖像画を描きながらそれを語り、幕が下りる。
このあわれが「憐れ」なのか「哀れ」なのかどっちもなのかちょっとわからないけれど、
そういうものを秘めた上での美しさと言うのは、太陽のように明るい美しさより、ちょっと深みがあるように思う。
段田さんの物静かな落ち着いた画工を、振り回す小泉さんのキュートなこと
いつも思うことだけれど、彼女の美しさはなんだか肝がすわっている。
ちょっと難しくはあったけれど、観終ったあと、「なんだかいいものを観たな~」と
心に残る、素敵な舞台だった
この日一緒に行ってくれたのは、19歳の女の子。
私の同級生のお嬢さん。
はじまる前に、この日の劇場「シアタートラム」の入っている
三軒茶屋キャロットタワーの最上階のレストランでお食事をして、楽しくおしゃべり。
息子しかいない私には至福のひととき。
オバサンにお付き合いしてくれる彼女には申し訳ないけれど・・・。
終演後も、近くのカフェで、またまたおしゃべり。
次男と同世代の彼女は、次男とは比べ物にならないくらい大人だ。
若いけれど、さまざまな痛みを乗り越え、進む道を模索している姿が頼もしい。
同じフリーで仕事している仲間としてもいろいろ話しをすることが出来た。
この年になってもふらふらしている私には、あまり参考になる話はできないけれど、
想いを他人に話すことで、確認し、納得し、前に進むことが出来ることもあるはず。
その年齢の「今」はとても長く感じて、焦ったり悩んだりすることがたくさんあることは、
そこを通ってきた私達大人は知っている。
そしてその時間がものすごいスピードで過ぎていくことも、
その先にいくらでもやり直したり、コースを変えたりできる時間があることも、同じく知っている。
だからと言って安易に「あっという間に過ぎるよ」とか「まだまだ先は長いから」などと言っちゃいけないのは
重々わかっているけれど、そう言うことで少しは不安を和らげてあげられるような気がして、ついつい口にしてしまう。
自分で経験しなければわからないってこともわかっているのに。
などという自分の反省点に気づかせてもらえる、貴重な時間を過ごさせていただく。
前回も遅くまでおしゃべりして彼女のご両親に心配をかけてしまったというのに、
前回ほどではないにしろ、またまたあっという間に時間が過ぎてしまった。
楽しい時間をありがとう。
次回8月にまたお会いしましょう
もちろん、今まで見た他の舞台が下品だったというわけでは断じてない。
ただ、全体に流れる空気感と言うか、ピンと通っている糸というかそういうものが
なんだか、とても心地よかった。
恥ずかしながら、夏目漱石の「草枕」は読んでいない。
どうも昔から漱石はなんとなく苦手で、すいすい読み進んでいかない。
なんだか私には展開がまどろっこしいというか・・・。
「草枕」を読んでいたらもっと深く理解できて、よりおもしろかったのかもしれない、
と思うとちょっと残念。
この舞台は「草枕」を舞台化したものではないらしい。
ただ主人公が30歳の画工という設定は同じのようだ。
この画工を段田安則さんが演じる。
30歳っていうのはちょっとどうだろう・・・?
画工は卓(つな)という美しい女性の絵を描きたいと思う。
この卓が小泉今日子さん。
凛とした中に楚々とした雰囲気を醸し出し、本当に美しい。
この卓の美しさと強さの理由を知り、彼女の絵を描く力を磨くために、旅に出た画工は、
山あいの温泉場に逗留し、そこで三度結婚に失敗したという女将、那美と出会う。
那美は小泉さんの二役だ。
この那美が「前田卓(つな)」という実在の人物のモデルとか。
最初に出てきた卓とは違って、
あっけらかんとして、ぽんぽんと物怖じしない振る舞いと、ちょっとミステリアスな美しさで画工を翻弄する。
ここで画工が出会う禅僧、大徹に春海四方さん。
那美の従姉弟で洋画を描く久一に山田悠介さん。
那美の父である案山子(名前)や茶屋の老婆、床屋の亭主、宿屋の仲居、中折れ帽の男など一人で5役を演じるのは、浅野和之さん。
浅野さんが出てくると、会場は一気に笑いに包まれ、すこしゆるんできた観客をわしづかみで舞台に引き戻す。
いつも思うけれど、本当にすごい。
以前に観た、三谷幸喜さん作の「ペッジ・パードン」では、
下宿のオジサン、オバサン、来客の女性や泥棒、挙句に犬まで一人で演じてらっしゃった。
そうそう、この時は夏目漱石本人のお話だったっけ・・・。
舞台は筆で書いたようなモノクロの背景。
時々映像で動きが出る。
例えば身を投げた女性が川を流れてくる映像とか・・・。
終始、明るく、時に激しい那美が、出征する久一や、夢を追って満州に行こうとしている元夫の乗る汽車を見送るシーンは後姿だけ。
死を予感させる男たちの旅立ちを見送るその表情は見えないので、
泣き顔なのか、毅然とした表情なのか、はたまた泣き笑いの笑顔なのかはわからないが、背中がなんとも切ない。
画工は美しさと強さの前には「あわれ」がある、と気づき、卓の肖像画を描きながらそれを語り、幕が下りる。
このあわれが「憐れ」なのか「哀れ」なのかどっちもなのかちょっとわからないけれど、
そういうものを秘めた上での美しさと言うのは、太陽のように明るい美しさより、ちょっと深みがあるように思う。
段田さんの物静かな落ち着いた画工を、振り回す小泉さんのキュートなこと
いつも思うことだけれど、彼女の美しさはなんだか肝がすわっている。
ちょっと難しくはあったけれど、観終ったあと、「なんだかいいものを観たな~」と
心に残る、素敵な舞台だった
この日一緒に行ってくれたのは、19歳の女の子。
私の同級生のお嬢さん。
はじまる前に、この日の劇場「シアタートラム」の入っている
三軒茶屋キャロットタワーの最上階のレストランでお食事をして、楽しくおしゃべり。
息子しかいない私には至福のひととき。
オバサンにお付き合いしてくれる彼女には申し訳ないけれど・・・。
終演後も、近くのカフェで、またまたおしゃべり。
次男と同世代の彼女は、次男とは比べ物にならないくらい大人だ。
若いけれど、さまざまな痛みを乗り越え、進む道を模索している姿が頼もしい。
同じフリーで仕事している仲間としてもいろいろ話しをすることが出来た。
この年になってもふらふらしている私には、あまり参考になる話はできないけれど、
想いを他人に話すことで、確認し、納得し、前に進むことが出来ることもあるはず。
その年齢の「今」はとても長く感じて、焦ったり悩んだりすることがたくさんあることは、
そこを通ってきた私達大人は知っている。
そしてその時間がものすごいスピードで過ぎていくことも、
その先にいくらでもやり直したり、コースを変えたりできる時間があることも、同じく知っている。
だからと言って安易に「あっという間に過ぎるよ」とか「まだまだ先は長いから」などと言っちゃいけないのは
重々わかっているけれど、そう言うことで少しは不安を和らげてあげられるような気がして、ついつい口にしてしまう。
自分で経験しなければわからないってこともわかっているのに。
などという自分の反省点に気づかせてもらえる、貴重な時間を過ごさせていただく。
前回も遅くまでおしゃべりして彼女のご両親に心配をかけてしまったというのに、
前回ほどではないにしろ、またまたあっという間に時間が過ぎてしまった。
楽しい時間をありがとう。
次回8月にまたお会いしましょう
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