日本橋高島屋で開催されていた民藝展を見に行って、寄木細工のちりとりを買ったことを数日前に書いた。
ちりとりはとても使いやすくて、
テーブルの上の食べこぼしとか、
シュレッダーで粉砕された小さな紙片がこぼれたのとか、
ささっと掃けてストレスフリー。
それにしても
あのとき民藝展には実にたくさんの素敵なものが展示されていた。
美しい色の陶器やガラス。
小さくて軽くて使いやすそうな鉄のフライパン。
伝統の織物。
幻想的なろうそくと燭台。
どれも立ち止まってじ~っと眺めて欲しいな~と思いつつ結局買ったのは「ちりとり」。
あんなにいろいろあったのに、ちりとりを買ってきたんだあ、なんて思い返していたら、遠い昔の「醤油さし」を思い出した。
それは、高校を卒業後、進学のために上京して間もないころのこと。
すでに、東京にいた(正確には神奈川だけど)3つ年上のイトコが、食事に誘ってくれた。
その日は叔父と叔母も上京していて、一緒にランチをごちそうになった後、入学祝に何か新生活に必要なものを買ってあげる、と渋谷東急の食器などを売っている売場に連れて行ってくれた。
好きなものを、と言われても、まったく思い浮かばなかった私は、その時ホントに持っていなかった「醤油さし」を指さした。
おそらく1000円したかしないかのどこにでも売っている普通の醤油さし。
あの時の3人の「え?」っていう顔は今でも目に浮かぶ。
私は嬉しくて、大満足だったのだけれど、
それだけではなんだかちょっと、と思ったらしい叔母が一瞬消えたと思ったら図書券を買ってきて手渡してくれた。
あとになって、なんでもう少し気の利いたものを思いつかなかったんだろう、と申し訳なく思ったものだ。
デパートの食器売場なんて行ったことが無かった田舎から出てきたばかりの女の子には、東急の食器売場はキラキラしすぎてどうしていいかわからなかったのかもしれない。
その時の醤油さしは恐ろしく丈夫で、結婚するまで引っ越しのたびに持ち歩き、数十年たった今も母が使っている。
叔父は10年以上前に亡くなり、叔母は90歳を過ぎて施設で暮らしている。
あの時も、その後も彼らはいつも穏やかで優しくて、その思い出は大切な宝物だ。
「ちりとり」をチョイスしたことで、思いがけない引き出しが開いた。
二度おいしい、とはこのことだろうか・・・。
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