8月8日(日)、東京オリンピックの閉会式が無事に終わった。
これを機に、『東京オリンピック--文学者の見た世紀の祭典』
を読み直す。
むろん、これは57年前の東京オリンピックだ。私は中学生だった。
これは、あくまで「文学者が見た」ものだが、キガネなく、それ
ぞれの「物の見方」が出ていておもしろい。
これが企業の社長などが書いたら、おもしろくも何ともないのか
もしれない。
私は中学生で知らなかったが、前回の東京オリンピックでも、ナ
ンダカンダの批判があったようだ。
何事も、すべて、「3:4:3」の割合だろうか(笑)。
開会式を見て 獅子文六(71) ( )内は当時の年令
絶好の天気ではあるもののえらい人出であって、こんなに人の集まった場所
へきたのは、生まれて初めてである。(略)これだけ多数の群衆を見ると、
オリンピックを冷眼視した日本インテリも、理屈も何もなくなってくるだろ
う。まあ何でもいい。始めたからには、成功させなければならない。(東京
新聞)
開会の盛典を見て 石坂洋次郎(64)
10月10日は、前日まで天候が気づかわれていたにもかかわらず絶好の秋びよ
りだった。アジアではじめて開かれる第18回オリンピック東京大会の開会式
は、まず天候に恵まれたことが幸いして、なごやかに、厳粛に、暖かく、式
次第は落ち度なくスムーズに完了した。(共同通信)
開会式に思う 石川達三(59)
日本の秋晴れ。・・・・・・この日はまことに美しい秋晴れだった。(略)日本で
オリンピックを開催することについては、、批判的な意見も少なくなかった。
時期尚早という説、お祭り騒ぎだという説、もっと他にすることが有るだろ
うとという意見。・・・・・・私もかなり批判的だった。(朝日新聞)
東洋と西洋を結ぶ火 三島由紀夫(39)
オリンピック反対論者の主張にも理はあるが、きょうの快晴の開会式を見て、
私の感じた率直なところは
「やっぱりこれをやってよかった。これをやらなかったら日本人は病気にな
る」
ということだった。(毎日新聞)
亀井勝一郎(57)
雲ひとつない晴天である。すべてを天候のせいにするわけではないが、もし
も雨の日だったら、効果は半減しただろう。晴天を喜ぶ声が場内にみちてい
た。(日本経済新聞)
オリンピックのテレビ 小林秀雄(62)
何か感想を書かねばならぬ約束で、原稿紙はひろげたものの、毎日、オリン
ピックのテレビばかり見ていて、何もしないのである。こんなに熱心に、テ
レビを見た事は、はじめてだ。オリンピックに、特に関心があったわけでは
なかったので、これは、自分にも意外な事であった。オリンピックと聞いて
嫌な顔をして、いろいろ悪口を言っていた人も、始まってみれば、案外、テ
レビの前を離れられないでいるのかも知れない。(朝日新聞)
もっとおおらかに 村松剛(35)
(前略)島国育ちだから、選手だって国際舞台に出ればかたくなる。日本の
選手に、平素の実力を出しきれないひとがいて、根性が足りないとかいって
よくテレビなどでおこられているが、一億国民がそろってコチコチになって
いるくせに、選手にだけコチコチになるなというのは、ずいぶん酷な注文だ
ろう。(略)
17日は棒高跳びの決勝が、夜の10時過ぎまでえんえんとつづいた日である。
(略)NHKの放送員は、えんえん9時間にわたる試合がいかに感激にあたいす
るかを力説し、最後に思いを込めてこんなことをいった。
「夜おそくまでつづけられたこの息づまる戦いは、のちの世にも長く、語り
ぐさとして伝えられるでしょう」
きいていてぼくはバカバカしくなった。どうしてこうセンチメンタリズムが
好きなのだろう。夜がはやかろうとおそかろうと、仕事が片づかないかぎり
つづけるのはあたりまえで、それは会社員でも役人でも文士でも、かわりは
ないのである。(読売新聞)
あらためて見ると、皆さんお若い。
私などは、当時の獅子文六(明治26年生まれ)だ。
講談社編『東京オリンピック--文学者の見た世紀の祭典』
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