10月23日(土)、坂上先生からお誘いいただき、午後2時より三
軒茶屋のサロンテッセラにて開催された、「信時潔 作品の会~
やまとことばを美しく」を聴く。
今回は、坂上先生と門下生お二人--石山真由美さん、十日谷
(とおかや)正子さんによる演奏会(以下敬称略)。
新型コロナの影響で、1年半の延期となったものだ。
客席数は45席ほどかしらん。文字どおり、サロンにふさわしい。
会場には、藝大大学史史料室のスタッフとしても参加されている
仲辻さんのお顔も(→こちらとこちら)。
「信時潔 作品の会」によせて 坂上昌子 プログラムより(抜粋)
父・木下保は美しいひびきの日本語を求め、信時潔作品の中にひとつの歌唱法
を見出しました。「やまとことばを美しく」。受け継いだ私に与えられている
限られた時間と制約の中、できることは今しかないと思い立ち、この演奏会を
開催することに決めました。
<プログラム>
1.小倉百人一首より
2.沙羅
--休憩--
<お話>信時裕子
3.「小品五章」より 子供の踊
4.「鶯の卵」より 張節婦詞
5.茉莉花(まつりか)
6.女人和歌連曲
出演者:
Mez.坂上昌子
Sop.石山真由美
Sop.十日谷正子
Pf.石井里乃
お話:信時裕子
いつもながら、まことにつたない「寸評」を・・・・・・
1.小倉百人一首より 作曲(以下同じ):1920-22年
(前半4曲:石山真由美/後半4曲:十日谷正子)
信時潔(1887-1965)による「小倉百人一首」の世界。
100首の中から、8首を選んでいる。
「小倉百人一首より」(全8曲)をお二人が4曲ずつ歌う。
(1)月見れば(No.23)
秋の到来にふさわしい第1曲。シンプルで素朴な伴奏とやまと
ことばによる歌唱から「もの悲しさ」が伝わってくる。後奏の
和音に「意外性」を感じる。
(2)久方の(No.33)
一転して、日本的なタンタタタンタンの伴奏に乗って、「どう
して桜は散るのだろう」と、明るめ曲と歌唱。「散るらむ」の
最後はきっちり「mu」に。
(3)花の色は(No.9)
ゆっくり。素朴な伴奏としっとりとした味わいのある歌唱に、
小野小町の「気持ち」が表出する。
(4)淡路島(No.78)
ポツンポツンとした琴のような伴奏。いかにも日本的な歌だ。
(まったく余談だが、関西勤務時代に訪ねた淡路島と須磨を思
い出した)。
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(5)長からん(No.80)
出だしの「長からん」にごく僅かなポルタメント--それによ
る、女性の「気持ち」の発露にハッとした。
(6)逢ふことの(No.44)
平安時代中期の歌。信時潔らしいシンプルでゆったりした前奏
に始まるが、途中で大きな変化が。
「恨みざらまし」は、意味のあるクレッシェンドが効いている。
(7)人はいさ(No.35)
紀貫之の「気持ち」が明るく、開放的に歌われる。後奏にも惹
きつけられた。
(8)ほととぎす(No.81)
ゆっくりした、素朴な伴奏。伴奏と一体となった「月ぞ残れる」
の余韻が心に沁みる。
2.沙羅 1936(出版)
(前半4曲:石山真由美/後半4曲:坂上昌子)
(1)丹澤
最初の、きっちり、しっかりした、やや大きめの前奏にしびれ
る。やや速めのテンポから歌詩がすーっと心に入ってくる。
後奏表現にも惹きつけられる。
(2)あづまやの
お上手な、ほとんどインテンポのピアノ伴奏に乗って進む。日
本語の母音の響きのムラがない。
(3)北秋の
一転してAndante、ゆっくり目のテンポ。最後の「北秋の花」
の歌唱が心に沁みる。
(4)沙羅
間奏が2回出現する、fが現れず、気持ちのつなげ方が難しい曲。
作詩家と作曲家による「世界」が再現された。
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(5)鴉
歌詩の「からす」の子音と母音に、楽譜に書けない「ひょうき
んさ」が現れる。
(6)行々子
前半は、しみじみとしたデュナーミクに惹きつけられる。「み
みいたく」のfに、すべての想いが歌われた。
(7)占ふと
この歌から2曲は、pやfを出せばいいというわけではなく、
(普通の人には)難しい。ここでも、言葉と子音の必然性が感
じられる。
(8)ゆめ
2分少々の間に現れる、さまざまな想い、語感に従って変化する
歌唱がすばらしかった。
今までに聴いた、歌曲集「沙羅」のピアノ伴奏では、Topクラスの
すばらしさだった。石井さんのさらなるご活躍が楽しみだ。
--休憩(15分間)--
<お話(15分)>信時裕子
今さらの話だが、信時裕子さんは信時潔の孫(潔の三男三郎のお嬢
さん)で、信時潔の研究をライフワークにしておられる(→こちら)。
信時潔と「沙羅」、木下先生、畑中先生のお話など。
3.「小品五章」より 子供の踊 1926 (坂上昌子)
与謝野晶子の4連の詩。速めで明るい曲だ。4連のリピートだが、
最後の連では、よりキッパリとした表情(表現)で歌い分けた。
木下保先生は、きっと、このような歌もお上手だったかと思い、
ジ~ンとなった。
4.「鶯の卵」より 張節婦詞 1933 (十日谷正子)
漢詩の土岐善麿訳(文語訳のローマ字書き)の世界。「Ko wa
Na wo e」のfと和音が衝撃だった。
土岐善麿(1885-1980)の名はどこかで?と思ったら、新憲法
施行記念国民歌『われらの日本』の作詞者だった(作曲:信時
潔、昭和22年)。
5.茉莉花(まつりか) 1919 (石山真由美)
象徴派の詩人蒲原有明(1875-1952)の文語詩に作曲した、比
較的長い、しっとりした曲。「茉莉花」はジャスミン。
歌詩を読んでいると、思わぬところに間奏が出現する。
言葉の子音が意味を持って歌われ、抑えた感情が「わが心この
時裂けつ」のfで爆発する。
6.女人和歌連曲 1965
(前半6曲:十日谷正子/後半4曲:坂上昌子)
信時潔晩年の作品。信時潔らしい「音」に
(1)序歌
いつの世かつくられし歌をときがあらひ
残り残りし一首を尊ぶ
(ほとんど続けて)
(2)あかねさす
有名な額田王の歌。真実がどうであったかは別として、openな
気持ちを明るく歌っている。「(袖)振る」がいかにも「やま
とことば」の語感。
(3)こしかたを
どこで子音を多めに使うか?言葉と子音の「必然性」が感じら
れる歌唱。
(4)大江山
ここでは、歌詩に応じて、重い声、軽い声の使い分けがあり、
聴く方にとっても、勉強になる。
(5)夜をこめて
「(よに逢坂の関は)ゆるさじ」のfに、女性としての強い意
志が表出する。
(6)わがそでは
激しい伴奏に乗った歌唱に「切ない恋」の感情が伝わってくる。
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(7)あらざらむ
紫式部の情念に、虚無的な響きの伴奏。「いまひとたびの逢ふ
こともがな」に想いが込められた。
(8)春の夜の
「かひなく立たむ」の「k」などの子音は楽譜には書けない。
(9)めぐりあひて
紫式部の情熱に寄せる、若々しい歌唱。
(10)有馬山
これによらず、歌詩の中、言葉を切る歌唱に、信時歌曲、日本
歌曲の歌い方の範が感じられる。
人生100年時代、まだまだ10年はお歌いになられるのではない
かしらん。
<アンコール> (ユニゾン~三重唱)
「桜花(はな)の歌」より「いにしへの」(伊勢大輔)
52年前の昭和44年、木下保先生/ワグネル男声でも演奏された
曲。ピアノ伴奏は歌子先生だった。
私は、その翌年、ワグネルに入部し、LIVE録音をLPで聴いた。
それが突然目の前によみがえり、ジ~ンとなった。
一歩外へ出れば、総選挙活動の真っ最中だが、そうした世俗的な
喧噪を忘れさせてくれる、信時潔ならではの作品による演奏会だ
った。
左:チラシ 右:プログラム表紙
プログラム
余談だが、信時潔(1887-1965)は、小泉信三(1888-1966)と
同じ時代を生きた。
12:42 あざみ野
13:05 三軒茶屋下車
13:07 世田谷線改札口報告へ
13:07
13:08 さらに進む。
13:09
13:10 この出口から地上へ
13:12
1階セブン-イレブンの4階が会場のサロンテッセラだ。
早めに行って、場所を確認。
13:13 向かいは世田谷線三軒茶屋駅
13:22
13:24 セブン-イレブン左側にエレベーターの入口がある。
13:26 「しばらくお待ちください」
13:28 目の前で選挙演説中 「大変に厳しい戦い」はみんな言う?
13:31 まずは1階で体温測定、手指、靴底の消毒
13:33 4階受付
13:34 ホール入口から見た受付
13:34 ホール 天井が高い。
13:34
椅子に置かれたプログラムをピックアップして、その席に座る。
13:36 スタインウェイ
13:37 「会場内は会話を自粛願います」
歌子先生と談笑していたら、会場の方から「外でお願いします」とご注意をい
ただいた。ただでさえ、声が大きい?
13:55 開演5分前
14:15 その場で、換気のための5分間の小休憩
14:41 別室というかオープンスペースにて休憩15分間
14:41
14:42
15:23
16:00
お開き後、歌子先生も加わり、「記念写真」を終えてのスナップ
お疲れ様でした!
16:00
16:01
16:07 ここから地下へ
16:09 田園都市線改札
16:11 三軒茶屋より
16:33 たまプラーザ下車
16:34
16:36 キタムラで、この日の写真を焼き増し
16:58 たまプラーザ駅前 選挙活動中
17:03 たまプラーザより
17:06 あざみ野着
17:10 山内地区センターへ
17:10 期日前投票会場へ
17:15 無事に投票を終えて--当日病気になっても大丈夫。
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