私が大学4年の時、同期の「学生指揮者」は福永陽一郎先生に
「師事」していた。また「四連」の合同演奏(『海の構図』男声
版)の指揮者は福永陽一郎先生だったこともあり、先生には少し
だけ「お近づき」になった。
福永先生の私の印象は、friendlyであり、frankな方だった。
福永先生にケタケタ大笑いされたのは、
昭和49年の四連時の同志社大学(何館といったかしらん?)に
おいて「京都烏丸の話」で「シ~ン」となった時(→こちら)。
そして、昭和55年12月19日JACのXmas Partyにおいて、トリオ
(後のMy Heart)で歌った「いい日旅立ち」が上手く歌えなかっ
た時だ。
先生はプロの音楽家であり、指揮者だったが、学生が好きだった。
福永先生は論理が明晰な文章家だ。
久しぶりに鎌田雅子さんが編集された『CONDUCTOR福永陽一郎』
(本書は鎌田さんの労作だ!)を読み返すうちに時間を忘れた。
どこを読んでも、反対意見(if any)を挑発するような、小気味い
い、radicalな文章だ。--radicalとは「根本的」ということであ
る。
畑中良輔先生や大中恩、宇野功芳との対談や「論争」など、今読
んでも興味深く、刺激される。
以下、一部を引用させていただければ・・・・・・
指導者に恵まれないためにひどい目にあっている合唱団たくさんあるわけね。
この間の東京のコンクール聴いてもそう思うわけよ。本当に一生懸命暗譜して、
一生懸命歌っててさ、真剣そのもので夢中になってやってるのにね、指導者が
ひどいばっかりに、結果的にひどい音楽にしかならない。(本書p26。1971年)
* * *
<聴衆不在の音楽会>
私がこのことを問題にするのはアマチュア合唱団の演奏会にも「聴衆」はいな
い、と思うからだ。合唱の演奏会を埋めるのは「関係者」だけである。私的感
情なしで、演奏されている音楽をきいてくれる人は、まずいまい。そこで、我
々はいつも、架空の存在にむかって音楽をすることになる。(p27。1966年)
* * *
<指揮の勉強法>
明日に間に合うような、便利な方法があったら、私自身が教わりたいくらいで
す。指揮という仕事が、一朝一夕にできるものと思ったら、大間違いです(以
下略だが、実は「以下略」の「以下」がおもしろい!p70-71。1967年)。
* * *
「合唱連盟に望むこと」を述べてほしい、ということであるが、私は、合唱連
盟との関連を、出来うるかぎり遠いものにしようと努めてきた者である。・・・・・・
世の中には「功罪相半ばする」という便利なレトリックがある。・・・・・・
まずは、話をコンクールに限定する。合唱コンクールは、日本の合唱に対して
「合唱連盟」が犯した最大の過誤である。
芸術活動の分野で、勝った、負けたは、本質的に意味をなさない。自明のこと
である。話を音楽に限ると、うまくてもつまらない音楽があれば、へたでも感
動的な演奏がありうる。
わが連盟のコンクールでは、優勝したからといって、得るものは名誉だけであ
る。・・・・・・
私は、百名を越す女子高校の生徒が、課せられた責務を果たそうと、一心不乱
に、死に物狂いになって指揮者に従っているのを見るとゾっとする。あれは音
楽などというものではなく、魔に憑かれた者たちの集団修行ではないか。
(p134。1989年10月『ハーモニー』)
福永先生は、合唱コンクールに出場したこともあったし、審査員
をされていたこともあったが、根本的には、合唱コンクールに批
判的だった。
先生がある地方の合唱コンクールの審査員に招かれた時。
本番前日に地域の連盟により一席が設けられた。
その時、審査委員長クラスの人が
「明日の優勝は〇〇のものでしょうね~」
と発言したという。
「これじゃ、まるで談合だよね(笑)」
と笑いながら怒っておられた。
今はそんなことはないだろうが。
『演奏ひとすじの道』と『CONDUCTOR福永陽一郎』
宮崎の焼酎 焼酎は蒸留酒だ。
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