人生ブンダバー

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半藤一利『ソ連が満洲に侵攻した夏』

2008-08-09 09:00:01 | 読書
昨日8月8日は北京オリンピックの開会式だった。こういうものは自分の目で見るの
が一番いい。新聞だと解説めいた記事になるからだ。

オリンピックで注目の的となったチベット問題が今後どうなるのか、興味深い。ベ
ルリンオリンピックのときもユダヤ人迫害は一時的に抑えられた。「歴史は繰り返
す」のであろうか。

さて今日8月9日は、今から63年前、ソ連が日ソ中立条約に違反、一方的に破棄し
て、「満洲に侵攻した」日である。(長崎への原爆投下の日であもある。)

本書(文春文庫)は文字どおり「ソ連が満洲に侵攻した夏」をテーマにしたドキュ
メンタリー作品である。(単行本初版平成11(1999)年)

帯には「かくして皇軍は百万邦人を見捨てた!」とある。シベリア抑留も中国残留
孤児も、これによって生まれた。
ソ連から日本への宣戦布告文全文などが資料として織り込まれているのは良心的で
ある。


なおシベリア抑留者送還問題については、戦後日本の政治家が、はたしてこれぐら
いの正論を、ソ連首脳にぶつけたことがあったかとして、西独アデナウアー首相と
ソ連ブルガーニン首相のやりとり(1955年)を記載している。少しく興味深いので
以下に引用させていただく。

 ブルガーニン「ソ連はドイツ人捕虜は一人もいない。捕虜は全部還した。ソ連に
 残っているのは捕虜ではなく、ソ連国民ならびに平和と人類に対して重要な犯罪
 を犯した戦犯だけである。彼らのために数百万の無辜(むこ)の人々が殺され
 た」
 アデナウアー「ソ連首相は捕虜について話されたが、私が捕虜という言葉を全く
 使わなかったことに注意を払っていただきたい。私はわざとこの言葉を避けた。
 捕虜ではなく、ソ連にいる抑留者について、私はお話したいのである。・・・・・・ド
 イツ軍がロシアを侵略したのは事実である。そして多くのよくないことが起こっ
 たのも事実である。だが、その後、ロシア軍が防衛しながらドイツに入ってきた
 のも事実であり、その時、ドイツで多くの恐ろしいことが起こったのも事実であ
 る」


追記 同氏の作品では『ノモンハンの夏』(文春文庫)もおもしろい。よくまとま
    っている。

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