酒を飲まずに眠れない夜だったり、深夜に目覚めても布団から這い出したくない冬の時間帯に、このところYouTubeにアップされたショパンをBluetooth radioをオンにし、低音量で聴いたりしている。
若い時には何やら「演歌調」で馴染めなかったこのポーランドの作曲家の残したピアノ曲が、老いてくるとともに「心に染み入って」くる。理由は分からない。
今朝は、といっても今日は午前1時ごろ目覚めて、眠れないので「マズルカ全集」を聴いていた。2時間30分以上にわたるこのような長大な小品群は、「睡眠導入薬」として好ましいのだが、今日は益々眼が冴えて、おしまいまで聴き入ってしまった。
聴きながら、「誰が弾いていたんだろう」と画面を見てみると「Rem Urasin」という聞きなれないピアニスト。でもまんざらでもない演奏だったので、調べてみたら「1995年のショパンコンクールで第4位に入賞したロシアのカザン出身の1976年生まれのピアニスト」であることが分かった。一流のピアニストだ。
いろいろな想念が駆け巡った。
「カザンってどこにあるんだっけ。」
「ロシアの芸術家たちは、今どうしているんだろう、海外で演奏できているのだろうか」
「彼らに罪はないけど、プーチンを支持しているんだろうか」などなど。
Wikipediaで「カザン」をひいてみたら、ロシア西部タタールスタン共和国の首都だ。
「タタールスタン?」
いよいよ調べていくと、日本では「韃靼人・だったんじん」と呼びならわされているイスラム系のタタール人の古い都。(ロシアの作曲家ボロディンの「韃靼人の踊り」のメロディーが駆け巡る)
カザンは、その昔(日本の戦国時代あたり)、モンゴルとタタールの血を引いたカザフ・ハン王国の首都だったというが、あの悪名高いイワン4世(イワン雷帝)により滅ぼされ(男は皆殺しにされ)、ロシアに併合されたとのことである。
こんな事実を知っていく過程で・・・イワン雷帝の所業まで知るところになり、
「あれ、誰かに似ている」
と蒲団の中で、モジモジしながらスマホをいじっていると、偶然、yahooニュースに「私たちが生まれ育った国はもうない」という見出しが眼についた。
あのノーベル平和賞を受賞したロシアの反骨メディアの流れをくむ「ノーバヤ・ガゼータ欧州」の記事をクーリエ・ジャポンが紹介している。読み進めると「そうか、ロシア人に罪はない。国や文化を壊そうとしているあのイワン雷帝似の権力者のせいで、いまの事態が生じているんだ。」と、いう思いにいたった。
カザンのWikipediaに掲載されている「ロシア連邦内のタタールスタン共和国の位置」といういう地図をよく見ると、大きな馬か犬がヨーロッパに背を向けて疾走している姿におぼえた。
「欧州やウクライナに背を向けて敗走する狼みたいだ。」
Brilliant Classics Rem Urasin(piano) ショパンマズルカ全集
「私たちが生まれ育った国はもうない」露メディアがプーチンを痛烈批
ひさしぶりに、理路整然として誠実なロシア人の発する言葉を聞いたような気がする。ぜひすべてのロシア人にもこの記事を届けてもらいたい。前線にいる兵士たちにもだ。