たかが雑誌の付録というなかれ、2025年ヤマケイ新年号付録の「日本百名山・二百名山・三百名山地図帳」は名山山頂に至る主要登山道のほか、山腹に何本ものリフトやゴンドラの線を引くスキー場の設置状況、名山の登山口へと我々を誘うクネクネと山肌を縫う林道の荒廃状況や通行止め情報なども赤字で教えてくれている。
日本三百名山№272の「川上岳(かおれだけ)と日本二百名山№180「位山(くらいやま)」の地図を眺めると、「川上岳」に至る林道は二か所、「位山」は一か所の林道が土砂崩れや落石の危険があるため通行止めと表記されている。この情報を知らないマイカー登山者は、山に登るために思わぬ迂回や登山の断念などひどい目にあうだろう。
名山の山腹を走る林道の開削は、林業や治山・発電目的のダム建設とそれらの施設維持など、いわば産業目的が主たる目的なのだろうが、登山者ばかりではなくスキー場などの観光施設への集客といった地元振興、観光目的などもあったのだろう。かつて、「スーパー林道」といわれ、自然保護団体の反対を押して作った「南アルプス林道」(山梨県芦安から広河原、北沢峠を経て長野県戸台に至る林道)は、産業目的というより地元振興(観光)が主目的だとされている。
その「南アルプス林道」も2019年の台風により広河原・北沢峠間の林道が大規模な斜面崩壊により、2024年現在も復旧されず通行止めとなっている。十年ほど前にオイラは仙丈ケ岳から下山して広河原発のバスに乗るためこの林道を歩いたが、非舗装とはいえ林道にしては広く立派で、管理が行き届いた道路だったと記憶している。
また、20年ほど前に、百名山の皇海山(すかいさん)を栃木県側から登頂後、徒歩で群馬県側に下山中、親切にも車に乗せていただいて下った栗原川林道にいたっては、これも2019年の台風により被災して廃道となってしまっている。この林道の最終地点に「皇海橋」というところがあり、そこから皇海山に登る「不動沢コース」がこの山に登る最短コースで、百名山登山者の多くはこの林道を利用していたので影響は大であろう。
「南アルプス林道」といい「栗原川林道」といい、現実にその道を歩いた身としては「無常感」はなはだしい。昨日という永遠は存在しないのである。
近未来、異常気象により豪雨や台風は苛烈を極めていくのだろうし、大地震はこの列島が存在する限り不可避と言ってよく、急峻な山肌を削って全国あちこちにつくられた林道はますます被災の程度を大きくすることだろう。
人口も減少し、林業も衰退し、災害リスクも高まり、国や地方自治体から復旧を断念される被災した林道は、今後ますます増えていくのだTろう。オイラみたいに公共交通機関派は、バス路線の度重なる廃止により、十数年前から山へのアプローチが困難となっているが、今後はあちこち伸びた林道の恩恵を受けていたマイカー派も林道の消失とともに山がますます遠ざかる憂き目にあうのだろう。
廃道となっていく林道や関連施設も、やがて、廃業したスキー場の施設と同じように草木に覆われて存在したことさえ分からぬ風景となっていくのだろうか。名山が原始の風景に戻っていくことはいいことなのかもしれないし、地球時間から見れば、それが自然の摂理なのだろう。
かぜねこ三百名山未踏峰・空想(共有)登山
位山(くらいやま)・1529m・日本二百名山№180
飛騨高山の南方にそびえる山容なだらかな二百名山。この山と三百名山の「川上山」を「位山天空遊歩道」という魅力的な道を縦走して繋ぐのがいいのだろう。位山からは2時間30分の距離だ。
かぜねこ三百名山未踏峰・空想(共有)登山
川上岳(かおれだけ)・1626m・日本三百名山№272
位山から縦走してきてなだらかで、低い笹原のため360度の大展望を手中にする登山者の喜びはこの上ないであろう。5月の晴天を得たならば、雪をかぶった御嶽山、乗鞍岳、槍穂の北アルプス、白山の山容に域をのむに違いない。川上(かおれ)という言葉は、恵那山の「川上登山道』でも聞いたが、その由来は・・・あとで調べておこう。
「ふくの登山記録さん提供 位山&川上岳
位
位山~川上岳の縦走路と、川上岳からの白山、御嶽、乗鞍の展望を見せてくれただけでも感謝