蜜柑(ミカン科ミカン属)花言葉は、信愛。「甘い果実」の意の「柑子」が古くから大切にされてきたが、後に「蜜」のように甘い果汁のものが生みだされ「蜜柑」と呼ばれる。初めは「みつかん」、後に促音が省かれ「みかん」になった。ミカンはミカン科ミカン属の総称だが、一般的には温州蜜柑を指す。日本原産の常緑低木で、枝にはほとんど刺はない。5~6月、白色の五弁花で、芳香がある。果実は偏球で、冬に橙黄色に熟して生食される。紀州蜜柑に代って、明治以降、大規模に栽培されるようになったものである。潮風が当たる地方の蜜柑が甘く美味しいとされいる。蜜柑の他にも、朱欒、分旦、レモン、ネーブル、三宝柑、ポンカン、九年母、金柑など明治時代以降、大規模栽培されるようになった。「山窪は蜜柑の花の匂ひ壺 山口誓子」「旅一夜蜜柑の花を枕辺に 山口波津女」「伊豆は日のしたたるところ花蜜柑 鷹羽狩行」「なみだして馬の老いゆく花蜜柑 吉田汀史」「花蜜柑癇性の手に酸放つ 宇多喜代子」「蜜柑剪る借りし鋏を鳴らし合ひ 百合山羽公」「蜜柑山その下稀に汽車通る 山口波津女」「蜜柑あまし冬来ぬといふおもい濃く 中島斌雄」「荒海へ供養の蜜柑投げ続く 相生垣瓜人」「蜜柑山つづきし湯宿伊豆の果て 和田暖泡」「子のうそのみずみずしさよみかんむく 赤松子」「夜のテレビ黙つて蜜柑渡さるる 福田紀伊」「人ごゑの清潔な朝蜜柑咲く 藤田湘子」「かにかくに逢えばやすらぐ花柚の香 野沢節子」。(蜜柑咲く 我家の鉢は 三鉢に ケイスケ)
セキチク;石竹;唐撫子;常夏の花(ナデシコ科)花言葉は、女性の美。「万葉集」にもその名があるように古くから栽培あれているが、中国原産なので「唐撫子」とも呼ばれる。花壇用の花で、草丈20cm、径3~5cmの五弁の花が株を覆うように密につく。開花は4~5月、花色は赤、桃、白など。「常夏」は石竹から改良された品種群で、江戸時代に流行したといわれている。その後何回か流行したようだが、現在は品種はほとんど残っていない。代って種間雑種の園芸品種群がダイアサンㇲや撫子の名で出回る。四季咲き性のある品種が多く、こちらのほうが花壇でよく見る。「石竹の揺れ合ふ丈の揃ひたる 上野さち子」「石竹を君の娶りの花と挿さむ 星野麥丘人」「石竹や美少女なりし泣きぼくろ 倉橋羊村」「常夏に水浅々と流れけり 松籟青々」。久脚ぶりに今日は一日雨。気温も22℃(今朝の雨 唐撫子も みなかしぐ ケイスケ)
白根葵(シラネアオイ科)花言葉は、優美。キンポウゲ科から独立し、一科一属の日本固有種。花が美しいので古くから栽培されている。中部以北と北海道の雪の多い地帯の落葉樹林下に生える。高さ約20cm、地際から出る葉は掌状で大型。6~7月、花は茎の先端に一個つき、径5~10㎝、淡い青紫色、白色もある。花弁のように見えるのは萼片で、花弁はない。黄色の雄蕊があり、目立つ。花が終わると草丈が60cm、ほどに伸びる。「白根葵咲けりといふよ山彦も 水原秋桜子」「白根葵丘人の霊あそぶごとし 青柳志解樹」「白根葵なほ暮れかねて雪浄し 太田蓁樹」。(白根葵 風の行くては 八ヶ岳 ケイスケ)
罌粟(ケシ科)花言葉は、慰め。東ヨーロッパ地方原産。我が国には中国から伝わった。草丈は1m近くなり、5月頃うなだれた蕾を起こして、紅、赤、白、紫などの四弁の可憐な一日花を開く。五月晴れの空の下に咲く罌粟の花は、華やかで明るいが、見る人の心により一種のかげりも感じさせる。観賞用八重咲きのもの、ひなげし、鬼罌粟など種類が多い。薊罌粟は薊に似て棘があり、黄色の四弁花を咲かせる。また球形をした実は罌粟坊主と呼ばれるのも面白い。そして、ある種の罌粟の未熟の乳液からは、阿片、モルヒネを製するので、栽培は禁止されている。「白芥子に羽根もぐ蟻の形見かな 松尾芭蕉」「散り際に風もたのまずけしの花 室井其角」「雛罌ひらく髪の先まで寂しとき 橋本多佳子」「罌粟散りぬけふ一日の一隅に 千代田葛彦」「白罌粟の脆くなりにし月の前 柴田白葉女」「首ふつて花と踊るや罌粟坊主 石原八束」。(類多き 罌粟一賊は 禁止花 ケイスケ)
アヤメ;花菖蒲(アヤメ科)花言葉は、神秘な人、よき便り。ノハナショウブを原種として改良された園芸品種で、水辺や泥湿地に栽培する。葉は剣状で先がとがり、中央に太い主脈と平行脈が通っている。5月末から6月にかけて80㎝位の花茎を立てて、赤紫、濃紫、淡紫、白、絞りなどと大形の花を開く、萼に相当する三枚の外側の花弁を豊かに垂れる姿が美しい。江戸系、伊勢系、肥後系などの産地の系統がある。堀切菖蒲園、明治神宮外苑、その他各地に菖蒲の名園が多い。同じアヤメ科の多年草で、草原に群がって自生する「あやめ」もある。これは乾いた土地でも育ち、花は紫または白。外側の花弁の付け根の黄色の部分に斑点がある。優美なので庭園にも栽培される。「花菖蒲たゝしく水にうつりけり 久保田万太郎」「白波のごとくはるかに白菖蒲 山口青邨」「咲き垂れて背丈定まる花菖蒲 秋元不死男」「きれぎれの風の吹くなり菖蒲園 波多野爽波」「花菖蒲紫紺まひるは音もなし 中島 斌」「菖蒲田の夕日に浮かぶ花となりぬ 松本たかし」「あやめ咲く野のかたむきに八ヶ岳 木村蕪城」「はなびらの垂れて静かや花菖蒲 高浜虚子」「うつむくは一花もあらず花菖蒲 長谷川秋子」「花菖蒲夕べの川のにごりけり 桂 信子」。(花菖蒲 風を待ちおり なんとなく ケイスケ)
ジャガイモ(ナス科)花言葉は、恩恵、情け深い。早春に種薯を植えると、開花は5~6月。葉の脇から花茎を伸ばし、白または淡紫色の合弁花を数個集めて開く。花は小さいが,畑一面に咲き揃うと見事。馬鈴薯は南米のアンデス山地原産。日本にはオランダ人がジャガトラ(現在のインドネシア)から持ち込んだので「ジャガタライモ」略して「ジャガイモ」と呼ばれる。●畝の頂に競うように咲く姿には、ひたむきなものの美しさが感じられる。地中の薯との対比も面白い。「じゃいもの花朝の蚊沈みゆく 阿部みどり」「じゃがいもの花のさかりのゆうまぐれ 日野草城」「じゃいもの花より雲の湧ける丘 伊藤白翠」「馬鈴薯の花の日数の旅了る 石田波郷」「じゃいもの花に言魂ねむりけり 佐藤鬼房」「嫁不足黄かむらさきか薯の花 丸山海道」「じゃいもの花の起伏の地平線 稲畑汀子」「じゃいもの花の地平の濁らざる 小檜山繁子」「子ら合唱昏れても白き馬鈴薯の花 酒井弘司」「じゃいもの咲いて子供を叱る声 山本洋子」。我が家でも、馬鈴薯の芽が出たので、植木鉢に一個植えて見たら花茎が伸びてきているが、果たして花が咲くだろうか?様子を見ているとこおろです。(一鉢に 植えた じゃがいも 淋しけり ケイスケ)
バラ(バラ科;薔薇属)花言葉は、愛。落葉または常緑の低木の総称で、種は多く、それらの交雑種も含む。薔薇はその香りと薬効で、古代ギリシャ、ローマ時代から庭園に植えられたという。ヨーロッパや西アジアなどの野生種を元二品種改良が行われていた古代薔薇に、中国や日本の野生種も加えられて本格的に品種改良が行われたのは19世紀以降のこと。四季咲きの系統ができ、無数といってよいほどの品種作出され、現在も新品種が生まれ続けている。薔薇の樹形を大別すると叢生と蔓性があり、枝には鋭い刺がある。花の芳香は品種によって微妙に異なる。花色は品種によって微妙に異なる。花は単弁と重弁があり、花の形地や大きさ、花色などは変化に富んでいる。5~6月が開花の盛期であるが、四季咲きのものは秋まで咲き続ける。「ばら」は刺のある小木の総称である。「茨(棘.荊)」によった名。「薔薇」は野茨の漢名「野薔薇」に基ずく。◎ギリシャ神話やキリスト教との結びつきで、西洋では愛と美の象徴の花である。高貴な美さをいかした句が多いが、棘の故か、翳りのある句も生まれる。『手の薔薇に蜂来れば我王の如し 中村草田男』「夕風や白薔薇の花皆動く 正岡子規」「雷すぎしことばしづかに薔薇を撰る 石田波郷」「老いにも狂気あれよと黒き薔薇とどく 殿村登四郎」「薔薇よりも淋しき色にマツチの火 金子兜太」「薔薇を剪る夜明けの音をつくりつつ 原田青児」「記念樹の薔薇の名アンネ爆心地 重本泰彦」「手に薔薇の傷いつぱいよ逢いたかり 矢島 恵」「自らへ贈るくれなゐ強き薔薇 櫂未知子」「少年の指の血甘し夜の薔薇 田口一男」「太宰の恋白薔薇ひとひらづつ毀れ 島貫 恵」「愁いつつ丘にのぼれば花いばら 与謝蕪村」「古郷やよるもさわるも茨の花 小林一茶」「薔薇を喰う虫聖母見給ふ高きより 水原秋桜子」「薔薇の香か今き過ぎし人の香か 星野立子」「薔薇一枝挿しぬ忘れてはゐずや 藤田湘子」「花いばら髪ふれあひてめざめあふ 小池文子」。(吾庭の 一鉢の薔薇 咲き急ぐ ケイスケ)
シキザキベコニア(シュカイドウ科)花言葉は、幸福な日々。ベコニア属は約2000種。熱帯から亜熱帯にかけて分布する多年草または半低木で、園芸品種も多く、ベコニアはそれらの総称であり、代表種は四季咲きベコニアと呼ばれるベコニア.センパフローレンス。草丈15~40㎝、葉は光沢があり、赤や桃、白などの小花を密につける。苗を4~5月に花壇やコンテナに植えると、霜の降りる頃まで咲き続ける。鉢物で出回る木立ベコニアや、エアチオールベコニア、球根ベコニアなどもあり、どれも美しい。栽培が容易なためか、マンションのベランダや公園などでよく見かける。身近に観察することが出来るので、活用したい季語の一つである。「ベコニアの多情多恨や日の射して 加納立子」「ベコニアの花だけ残り花時計 泉 早苗」。(客待ちの 駅前の花壇に ベコニア並びたり ケイスケ)
紫蘭(ラン科)花言葉は、互いに忘れない。日当たりのよい庭で、植え込みの紫蘭が明るい紫の花をいっぱいにつけているさまは静かな華やぎを感じさせる。野生蘭でありながら栽培が容易のため、観賞用として普及してきた。山地の岩の多い湿つた斜面などに群生地がある。萼片3枚と側花弁2枚は狭長楕円形でほぼ同長。唇弁は3裂し、中裂片は大きく、数個の縦の襞が隆起する。古くは根を漢方に用い、漢名を白及という。紫蘭といいつつ、白い花もある。「紫蘭咲いていささかは岩もあはれなり 北原白秋」「雨を見て眉重くゐる紫蘭かな 岡本 眸」「司書の眼をときどきあげて紫蘭咲く 富安風生」「紫蘭もて訪ひ來し人を逢はしめず 加藤楸邨」「朝戸出や紫蘭の花に雨あがる 村上入沼」。(紫蘭咲き 群がるさまは 踊るよう ケイスケ)
ドイツアヤメ;ジャーマンアイリス(アヤメ科)花言葉は、虹の使者、素晴らしい使者。日本の花菖蒲や鳶尾草もアヤメ属だが、ヨーロッパ原産のアヤメ属を総称してアイリス、または「西洋あやめ」という。ジャマンアイリスも代表種の一つ。「オランダあやめ」は球根で、ドイツアヤメは、根茎で、葉も花も大きく、花色も多彩。緋赤を除いてあらゆる色があると言われる程花色豊か。花弁にはフリルが入って華やかである。切り花は一年中花店に並ぶが、球根の開花は5月。鳶尾草は中国名で、中央に鶏冠状の突起を鳶の尾に見立てたもの。アヤメ、杜若、花菖蒲などの中で「一早く咲く」ことに由来している。「すばらしい今日の出会いの目印を ドイツアヤメは とどめてくれる 鳥海昭子」「アイリスを見ゆる一眼にて愛す 日野草城」「アイリスや妻の悲しみ国問わず 楠本憲吉」「葉の中のアイリスの茎折れてをり 長谷川 櫂」「いちはつのぬてゐるなり紙のごと 吉岡禅寺洞」「一八の花のほとりに對を切る 三橋鷹女」。(アイリスは 飛び石囲み 池の内 ケイスケ)