川越だより

妻と二人あちこちに出かけであった自然や人々のこと。日々の生活の中で嬉しかったこと・感じたこと。

Aさんの故郷訪問

2007-04-07 08:11:30 | ふるさと 土佐・室戸
 4月1日から5日まで土佐の室戸と高知に帰っていました。
室戸はもうすぐ100歳になる父の住む僕のふるさと。高知は中高の6年間を過ごしたところです。
病気というわけではないのですが父は眠りつづけています。
妻が声をかけると目を覚まして涙を浮かべます。私たちがわかったようです。
でもまた、眠りにつきます。昨年からこんな感じです。

今回の目的は88歳になるAさんの帰郷を支援することです。
Aさんは5歳で高知を離れ、東京で生活してきた人です。文部省で視聴覚教育の草分けといわれる方だと聞いています。
昔、父が高知師範の学生だった頃、遠戚に当たるAさんのお母さんに世話になったと聞いたことがあります。室戸という田舎から高知に出て寄宿舎生活をする父にとって、週末のオアシスだったのではないかと思います。
Aさんには42年まえに1度、お会いしたことがあるだけです。
大学の5年生の時、どこにも就職が決まらない僕のことを心配して、父がAさんに会うことを勧めてくれたのです。
今は脳梗塞の後遺症やアルツハイマー症状を持つAさんの帰郷の念をふくらませたのは僕の突然の電話です。
  (中略)。
Aさんの娘さんが父上の思いを深く受け止め、その実現のため奔走しました。
結局、妻が障害者用のレンタカーを運転し、僕は道案内をすることになりました。

3日午後、高知空港にAさんと娘さん、お孫さん一行がつきました。松江からもう一人の娘さんも駆けつけました。
「おんちゃん、よう来てくれました」というとAさんはありがとう」といって涙ぐみました。
あとのメンバーは全員が初対面ですが旧知のように2泊3日の旅を始めたのです。 

Aさんの記憶がよみがえるかもしれないいくつかのスポットを案内しました。
「めずらしい」を連発していたAさんの口から「懐かしい」という言葉がでてくるようになりました。
幼少期や学生時代の帰省時を過ごした唐人町を歩いたときです。
そこには見越しの松のあるお屋敷の風景が残っていたのです。鏡川沿いの筆山を近くに見ることができる町の一角です。

松江から来た娘さんはこんなに輝いている父の顔は見たことがないと言いました。
Aさんは幼少時、父親とは疎遠でお母さんと暮らす日々だったようです。
筆山の見える庭で遊んだ遠い記憶がよみがえったのでしょうか。お母さんのことや友達のことを思いだしたのでしょうか。

ふだんからずっと父上の介護をしている娘さんの苦労は並大抵ではありません。
しかし、またその分、父上の喜びや悲しみを肌で感じていると思われます。
その娘さんから「天候に恵まれ、良い旅だった」「最高だ、こんないいことはない」「良かった」というAさんの言葉が伝えられてきました。今までで最高の感謝の言葉だったといいます。さぞ嬉しかったことでしょう。
この故郷訪問がAさんの生きる意欲を励ますことにつながってくれればサポートした私たちも嬉しい限りです。