震災から1ヶ月が経った昨日、NHKで福島第一原発が立地する福島県双葉町の井戸川町長の談話が流れていました。町民にやっとほんとうのことを言い始めたのかと思いました。
双葉町長 避難は数年以上か
4月11日 20時16分
東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、埼玉県加須市に町民およそ1400人が避難している福島県双葉町の井戸川克隆町長は、震災から1か月の11日、NHKのインタビューに答え、「町に帰れたとしても何年も先になると」と述べ、避難生活が数年以上に及ぶことを前提に、町民の雇用や住宅の支援が必要だという考えを示しました。
この中で井戸川町長は「町民からは双葉町に早く戻りたいという声が聞かれるが、双葉町は福島第一原発にとても近いところにあり、放射線の影響が大きいので、町民の安全を考えるとそう簡単には帰れないと思う。想像ではあるが、帰れたとしても何年も先になると思う」と述べました。また、町民の間からせめて福島県内に戻りたいという声が上がっていることについて「避難先では町民一人一人が仕事を見つけ、生計を立てていかないといけないが、福島では双葉町の人たちを吸収できるだけの雇用の場はないと思う。町民には加須市を拠点にもっと長いスパンで生活していくことを考えてほしい」と話しました。そのうえで井戸川町長は「今の避難所では、町民のプライバシー確保の問題が出てくると思うので、今後は仮設住宅の建設や住宅を借り上げるなどの対策を考えていきたい。町民には自立した生活を送れるよう頑張ってほしいし、そのためにできるかぎりの支援をしていきたい」と述べ、避難生活が数年以上に及ぶことを前提に、町民の雇用や住宅の支援が必要だという考えを示しました。(NHK)
僕のような門外漢が考えても果たして双葉町を再興できるかどうか、大いに疑問です。放射能汚染の被害は深刻で三宅島や大島(火山噴火)のようにはいきません。帰れるかどうか、あてはないのです。
にもかかわらず、TVで聞く町民の声がノーテンキなのは町長をはじめとする町のリーダーたちが無責任で、行き当たりばったりの発言や行動を繰り返してきたからだと僕は思ってきました。二つの例を紹介します。
(例一) 帰郷し復興、強い決意 埼玉へ役場移転の福島・双葉町長
東京電力福島第一原子力発電所の事故で、役場機能ごとさいたま市に避難した福島県双葉町の井戸川克隆町長が21日、「帰りたい。全町民が共有している」と述べ、いずれ福島に戻って町の復興を目指す決意を強調した。民主党の岡田克也幹事長は、国の全面的な支援を約束した。
原発に隣接する福島県内の8町村が役場機能を含めた全体避難をしている。井戸川町長は、さいたま市の避難施設を視察した岡田氏に対して、帰郷に向けた財政面などでの支援を要請した。
井戸川町長は会談後、記者団に対し、さいたま市での集団避難生活について「我々が先遣隊として住みやすい地域づくりを進めたい。全国に散らばった町民も(さいたま市に)戻ってくると思う」と述べた。さいたま市に避難した住民約1200人を中心に町民の再結集を図る考えだ。双葉町に戻る時期については、他の被災自治体と調整しながら検討する意向を示した。
岡田氏は、2000年に噴火に見舞われた三宅島の全島避難を例に、「町ごと移転して、しばらく何年間かやっていただくことを、国として後押しできればと思う。いろんな負担が自治体にかかるが、国がピシッと見る」と述べ、支援を約束した。(朝日新聞)
(例二)原発増設見直し「時期尚早」 河瀬全原協会長、官邸に要望
(2011年4月5日午前7時30分)
東京電力福島第1原発の事故を受け、全国原子力発電所所在市町村協議会(全原協)会長の河瀬一治・福井県敦賀市長らは4日、首相官邸で福山哲郎内閣官房副長官らに会い、菅直人首相宛ての要望書を提出した。まず原発事故の事態の収束に取り組むとともに、緊急時の代替電源確保などを要請。首相が原発増設計画の見直し方針を示している点に関しては、時期尚早との思いを伝えた。
河瀬市長や山口治太郎美浜町長、福島県双葉町の井戸川克隆町長ら全国3市4町の8人が首相官邸を訪れ、福山副長官、芝博一首相補佐官に7項目を要請。原発災害の早期の収束や緊急安全対策の実施、徹底的な原因究明と対策などを求めた。県原子力発電所所在地市町協議会としても同時に、安全確保など6項目を要請した。
エネルギー基本計画の見直し方針について河瀬市長は「国としてぶれないエネルギー政策をやってほしい」と要請。福山副長官は「まずは災害の復旧支援、事態の収束に全力を挙げる」と話す一方、エネルギー政策見直し論議には触れなかった。
要請後、河瀬市長は記者団に「あくまで今は事故の収束、原因究明などが最優先課題」と強調。「住民の多くが雇用などで原発に関わる自治体にとって、原発廃止はあり得ない。政府には想定外を想定内に変える安全対策をしてほしい」と述べた。
経済産業省では松下忠洋副大臣に同様の安全対策を求めた。松下副大臣は「要望を一つ一つ十分受け止め、事故原因を含めしっかり検証したい」と答えた。原発をめぐる今後の対応では「みなさん(原発立地地域)の意見を聞き、相談させてもらいたい」と述べ、今は事態の収束、安全対策などに優先的に取り組む意向を示した。
民主党本部で副幹事長の糸川正晃衆院議員にも要請書を渡した。
政府は、2030年までに原発を現状より14基以上増やすなど、原子力の積極的な利用拡大を図るとするエネルギー基本計画を閣議決定。今回の事故を受け、菅首相は3月31日、基本計画を白紙にして見直す方針を表明した。日本原電敦賀原発3、4号機増設も影響を受ける可能性がある。(福井新聞)
双葉町は原発依存の町造りの果てに財政が破綻寸前となり、東電に原発増設(7・8号機)を求めてきました。放射能地獄にたたき落とされても町民の中に甘い夢を追い求める人がいるのは井戸川町長の行動と無縁ではないでしょう。
町長が今しなければならないことは何か。このような現実を招いた責任を明らかにし、何よりも東電に落とし前をつけてもらうことです。東電にはカネもあれば土地もあるはずです。自然災害ではないのです。何でもかんでも政府に要求するのは筋違いです。
地方自治体の長や議員の選挙のただ中です。国や巨大企業にすがっていたら町も命もなくなってしまいかねないことを学びました。何とかして独立自尊の町造りのリーダーを生み出したいものです。