どこかの木から落ちたのか、誰かがころげ落としたのか
道の真ん中に果実が一つ、ころん。
見たこともない果実。名前もわからないし、食べられるものかどうかも知りません。
何を主張するでもなく、枝からおちた果実は、黙ってそこに転がっているだけでした。
木に付いている時は、他の実と一緒に、毎日水を蓄え、ちょっとずつ大きくなっていっていたはず。
もう、枝に戻ることはなく、あとは。
クルマも通る道なんだよな。
子どもが蹴っ飛ばして遊ぶかもしれないけど。
数時間経ってまた通ってみたら、その場所にその果実はもう無く、なんでもない、平べったい、いつもの道があるだけでした。
昨日、夜中になって、あの女性の訃報を知りました。
少なくともテレビなどで見知った顔であれば、誰の訃報だって、あっちが僕を知らなくたって、それなりに驚きや悲しみを感じるものですが、昨日は、今までのそれとは違いました。
「まさか」と思うと同じくらい、なんとなく漠然とだけど、引退された時の様子から、どこかでなんとなく予想していたことが本当に起こってしまった、という気持ちとが入り混じって、頭をガーンと殴られた様な、言いようの無い痛みを伴った喪失感に襲われてしまいました。
ネットで少し今回の事件について見ていたら、誰かが「数日前、突然彼女のことを思い出した。今思えばあれは・・・」って書いているのを見て、ハッとしました。
・・・たまたまですが、僕も3日ほど前友人と話していて、ほんとに他愛ない、全然関係ないような話から、突然「彼女」の話が出たんです。不思議な話ですが、ほんと唐突に。あれも、今思えば・・・。
詳しいことはいずれ分かるのか、・・・いや、もしかしたら、分からないままかもしれませんね。なにせ、密室での出来事。本当のことなんて、当事者にしか分からないことですからね。一週間、寂しかったでしょうね。いや、その前からだったのかな。ほんと、何にも分からないままになってしまいましたね。
僕は、彼女のカラッとした言動が好きでした。ずけずけ物を言っているようで、でも嫌味がない。時にキツイことを言っても、不思議とトゲトゲしさを感じない。
賢い人だな、っていつも思っていました。そして、分かったようなことを書いてしまいますが、人の心の痛みを知っている人だったんろうな、って思います。
そして、彼女があんなに活躍していたテレビの中は、今日もいつも通り賑やかなようです。バカバカしいほど、もっと言えば、ちょっと憎々しいほど、いつも通りで。
そして、かく言う僕も、いつも通りで。申し訳ないくらい、いつも通り。
飯島さん、志半ばだったとは思いますが、ほんとうに、お疲れ様でした。ゆっくり、お休みください。心より、ご冥福をお祈りいたします。
では。