ちょっと前のテレビで千原ジュニアが瀕死の大怪我から見事カムバックするまでの
ドキュメントをやっていた。
その中で、これはすごいなぁ、と思ったことがある。それは、芸人仲間達のお見舞い。
そこそこ面会できるようになった頃、何人もの仲間達が見舞いに訪れる。でもその
芸人達は皆、いわゆる“普通の”お見舞いなどしない。
ある者は「何しとんねん、はよ帰ってこんかい!」とだけ言って帰ったり、ある者は、
コンパでどの子が可愛かったなぁ、みたいな話ばっかりしたり、また、絶食で何も食べ
られないジュニアの下へグルメ雑誌を置いて帰ったり。
どの見舞いの方法もこれからの社会復帰を考えた時、ここを乗り切れんようなヤツは
芸人としてはもちろん、人間として立ち直られへん、ということを考えた上での行動で
あって、これこそが本当の優しさであり、見舞いなわけで、実に理に適ってる。
でもその中でも一番すごいと思ったのは、単車で生死の境を漂う事故を起こしたジュ
ニアに単車の雑誌を置いて帰ったというヤツ。
社会復帰をした時に単車を見ずに生活するなんて不可能。でも単車を見る度に事故を
思い出してしまうようでは、到底生きていけない。だからあえて単車の雑誌を持ってい
ったんやろうけど、持っていくほうも並の根性やないし、それを受け取ったジュニアのほ
うもまた並やない器やわな。
いやぁ、一流になる芸人ちゅうのはホンマにすごいわ。
この間例のJR尼崎駅での脱線事故に遭われた方がおひとり自殺された、というニュー
スが流れていた。不慮の事故に遭われ、どうもニュースの内容からすると、非常にお
気の毒なことにもう電車を見ることもできない状態になっておられたみたいや。
でもあえて誤解を恐れずに言うと、この方にこの芸人仲間のような励ましがあったら
同じ結果だっただろうか?そのような予期しない重大な被害に遭っていない俺がいう
のは、不適切なのかも知れないが、いかなる理不尽なことに襲われても、最終的に
生きていなければ何もできない。
ジュニアのお見舞いに行っていたひとりである、ダウンタウンの松本さんが「怒」という
本に書いていたけど、「自殺に追い込む方はもちろん悪いが、最終的には自殺するの
が一番悪いことなんや、とちゃんと言わなあかん」と。
死ぬほど辛い目に遭ったら生きて取り返すしか道はない。スタートラインもゴールライ
ンも、それは常に「生」にあるであるべきではないのだろうか。