ひとは生涯に
何回ぐらい
さくらをみるのかしら
ものごころつくのが十歳くらいなら
どんなに多くても七十回ぐらい
三十回
四十回のひともざら
なんという少なさだろう
もっともっと多く見るような気がするのは
祖先の視覚も
まぎれこみ重なりあい
霞だつせいでしょう
〜 茨木のり子「さくら」〜
美しさ
も
優しさ
も
遣る瀬無さ
も
刹那さ
も
ヒト
は
慣れるコト
無く
その度
に
ハッ
と
させられる
の
です
初めて
の
よう
な
もう
二度
と
味わえぬよう
な
その
中
で
不意
に
懐かしい
と
感じる
時
が
ごく稀
に
在る
のは
きっと
自身
の
守り神
が
どうしても
消したくなかった
ココロ
の
機微
を
吾
に
託して
くれた
から
でしょう
あぁ
どうか
いま
吾
が
感じる
幸い
の
たった
ヒトツ
でも
消えぬよう
失くならぬよう
この
花びら
に
乗せて
後世
に
残りますよう
に
語り継がれるコト
は
なくとも
ほんの
欠片
と
して
此の
場所
で
輝き
続けられます
よう
に