第86話. 五輪後日談

2018-03-14 23:28:36 | スポーツが与えてくれる力
湖畔人です。

冬季オリンピックが終わり、パラリンピックがもう始まりましたが、オリンピックの後に、様々な後日談が色々と聞こえて来ましたね。色々と考えさせられたので、ちょっと触れてみたいと思います。怪我、過去の挫折、スポンサーの問題等です。

まず、怪我ですが、フィギュアの羽生選手はどうもギリギリの状態でオリンピックに臨まれていたようですね。痛み止めを飲んで、怪我を完治させる事を脇に置いてでも金を獲る事に全てを掛けて決死の覚悟で臨んだ大会だったようです。条件が限られる中、その手持ちの札を最大限の効果が出るよう組み立てて戦略的に臨んだ大会だったようですね。ジャンプが飛べるようになったのも大会の二週間前、競合への心理対策として練習時の情報露出も戦略的に抑制し、演技のメニューも体への負担を最小限にしつつ出来るだけ高得点が狙えるものに変えたようです。非常に計算されたギリギリの選択と戦略と精神力により勝ち得た勝利だったようですね。知性と勇気と決断力、そして応援してくれた人達への恩を動機とした、愛の思いを根底に置いた戦いであったようです。これは、最大限の人為と天の応援をも引きだす絶妙且つ最強のバランスであって、最強の準備をされた印象です。演技中のミスに対してもとっさの判断で挽回をしましたし、機転も、負けん気も、凄まじいものを見せてくれました。若いのに本当にスゴイです。ただの連覇ではないですね。持てる材料を絶妙に組合せ僅かなチャンスに賭け、己を信じて挑んだギリギリの戦い、桶狭間のようなギリギリの戦いだったようです。彼は今、五輪を終え、治療に集中していますね。稀勢の里のように怪我が長引かないことを祈るばかりです。本当に見事な戦いぶりでした。本当にお疲れ様でしたね。

怪我と言えば、ノルディック複合の渡部暁斗選手も、助骨を折ったまま五輪に臨んだようですね。本当にどうかしています。それでノーマルヒルで銀を獲ったのですから本当に大したものです。また、彼は、怪我について他人に言うつもりはなかったと言っているようですが、どうもその理由が、15年ぶりに地元白馬村でW杯が開催された事を彼はとても嬉しく思っていて、自分がその大会で怪我をした事が情報として広まってしまうと、喜ばしい出来事であったはずの地元開催のW杯に悪いイメージが付いてしまって、関係者に迷惑をかけるのではないかと危惧をしたようなのです。どうもそれが彼が怪我を黙っていた理由のようです。地元を庇う為に自分のケガを隠すなんて何か男気がありすぎて本当に困ってしまいますよね。骨の一、二本位くれてやる位の覚悟で彼は五輪に臨んだようです。ホント大した奴です。彼は、その後、ラージヒルでも団体でもメダルを逃し、複合日本チームの抱える課題を走力不足と結論付けたようです。多分その通りなのでしょう。ただ、そうは言っても、五輪後の今月10日に行われたオスロのW杯での優勝した姿を見てしまうと、怪我さえなければ、もっと万全な状態で五輪に臨んでいたなら、もっと上(金)を狙えたのではないのか?と、素人は直ぐにそんな想像をしてしまうのですが、いずれにせよ勿体ないような、残念なような気が致します。が、でもきっと、次の五輪では、個人としてもチームとしても今回見出した走力不足と言う課題を見事に乗り越えて、克服をし、数段レベルアップした姿を我々に見せてくれるはず、と確信をしています。彼らの躍進を、次の冬の五輪の最大の楽しみとしたいと思っています。乞うご期待ですね!もう今から楽しみです。

次に挫折についてですが、実は、今大会で活躍した多くの選手が実は過去挫折をし、それを乗り越えて勝利を掴んでいたことが後になって判ってきましたね。銅を獲った日本女子カーリングチームの主要メンバーも心に傷を負った過去を持つ方々の集まりであった事が後から判明しましたね。そもそもあのチームは、引退する前に再度カーリングが好きだという事を実感してみたい、日本のチームが抱える課題、コミュニケーションの問題、お互いに本音を柔らかく語り合えるような、そうした忌憚なき意見が言えるようなチームを作り上げてみたい、また、そうした課題にじっくり取り組める練習環境、競技環境を作ってみたい、そしてそれを地元北見で是非実現してみたい、と、そう言う本橋麻里さんの強い願望からこのチームはスタートをしており、このチーム自体が、ある意味、主流からの離脱、地方から出直しと言う、“挫折”からの再起を果たさんと出来上がって来たチームだったようなのです。また、彼女の元に集った主力メンバーも、皆一度は深い挫折を経験しており、所属チームから戦力外通告を受け失意に沈んでいた吉田知那美選手もそうだし、同じくソチ五輪に選ばれず失意に沈んでいた藤澤選手も、二人とも、失意と迷いの中、もがき苦しんでいる所を、本橋選手に声を掛けて頂き、この風通しの良いチームへの合流を果たしたようなのです。決して皆、順風満帆にメダルを手にした訳でもなく、それぞれが、一度は深い挫折と、主流からの離脱を経験した後に、再チャレンジをする中で、勝ち取った銅メダルであって、このメダルは多くの教訓と軽くない輝きを纏ったものとなっていますね。明るく朗らかで自然体の今の彼女達からは想像もつきませんが、彼女達は、失意と絶望の淵から這い上がって来たチャレンジャーであって、彼女達の存在自体が、諦めない事の重要さ、何度でも立ち上がり、再チャレンジする事の重要さを我々に教えてくれる象徴的な存在に成りつつあるように見えます。しかも日本カーリング界初の五輪のメダル獲得です。本当に立派な偉業ですね。

挫折と言えば、スピードスケートの小平選手も、高木美帆選手も二人とも挫折と迷いから抜け出してきた方々です。高木選手はソチでは代表にも選ばれず、深い挫折を味わい、小平選手もソチにおいては世界との差をまざまざと見せ付けられ、二人ともこのままでは行けない、変わらねばならない、と深く、強く決意する所から今回の五輪までの長い4年の旅路を始めたようです。二人ともまず、スケートに全て捧げる覚悟を決めた所から始めています。そして、必ず己の納得のいく姿になってみせるぞ、必ず成功を手にして見せる、と心を定め、肚を決めた所からこの4年を始めたようなのです。そして、二人とも科学的な解析を行う名コーチを持つ幸運に恵まれ、二人ともその名コーチが課す厳しい練習メニューをこなす能力と理解力と自己管理能力を持ち合わせ、その中で大きな成長を手にして来たようですね。高木選手に至っては、ヨハンデビットコーチに“全ての練習に意味を持たせ、全ての練習に答えを得ようと取り組んでおり、高いプロ意識の持ち主で、彼女程の選手は世界を見渡しても他にいない”とまで言わしめています。一方、小平選手の方は、結城コーチが、彼女の動きを画像解析し、その解析結果から、カーブを滑る際に、彼女の腰骨が傾いている点が氷を蹴る力を弱める要因になっている、と言う仮定をし、その課題の克服の為に、左右の骨盤を別々に鍛えると言う特殊で不思議な練習方法を編み出し、その練習法の意義を小平選手が理解をし、正しいと信じ、粛々と練習メニューをこなし、その鍛錬の結果、骨盤の傾きを矯正する事に成功をし、タイムの短縮に成功をしています。その練習法は、一本歯の下駄を履いて練習をしてみたり、それはまるで王貞治が荒川コーチの指導の元、一本足打法を生み出した際の真剣を使った不思議な練習の如くであって、一般人には到底理解不能な世界ではありますが、五輪での金メダル獲得と言う事実が、結城コーチの見立ての正しさと練習法の正しさに説得力と凄味を与えてくれています。何れにせよ、高木選手も小平選手も4年前の挫折から全てを始めており、そこからの再起を、スケートに人生の全てを捧げる、という深い決意から始めており、二人ともそれぞれ名コーチの元、コーチの要求する厳しく且つ特殊な訓練をストイックに、そして高い意識を伴ってこなし続け、そして大きな変貌を遂げて、今、五輪で金メダルを獲得し、世界の頂きに立っているのです。それは、挫折の最中にあった4年前の彼女達には、到底想像も付かなかったような境遇の変化であって、その事実は、我々に、自分自身を信じる事の大切さ、そして明確な意図を伴った努力が必ず成果をもたらす事、またそれを信じる事の重要さを教えてくれています。高木選手は五輪後も快進撃を続けており、先日行われたオランダでのスピードスケートの世界選手権で、アジア初の総合優勝も果たしており、ますます勢い付いているようですね。勢いが止まりません。
一方、小平選手は、どうも五輪の少し前に大学の同窓で親友ともいえる存在を失しなっていたようですね。同じ五輪を目指すスケーターだったようですが、友人の突然の死を受けて、小平選手の動揺は計り知れないものがあったと想像しますが、彼女はそうした精神的苦痛、精神的困難の中で戦っていたようなのです。色々なものを抱えての勝利、本当にスゴイとしか言いようがありませんね。自分が滑り大会記録を出し盛り上がる会場に対し、次に滑る韓国のライバルに気付かい、観客に静かにするよう促してみたり、銀に終わり母国の期待を裏切り自分を責める韓国のスケーターを労り励ます姿も世界で称賛されていますが、本当に人としても立派な、本当に見事なアスリートだと思います。まずは、しっかり休んで疲れを取っていただきたいですね。

後は、後日談として気になったのは、選手たちの日々の仕事を得る事の難しさ、スポンサー探しの難しさですね。確かに、一般企業が将来どうなるか判らない選手に対し、仕事とお金を与えて育てる、と言うのはそう簡単な事ではなく、営利団体である企業が、直接利益に結び付くか判らないアスリートの育成を請け負うのは難しい判断だったと思います。自分がその立場なら、と考えると中々厳しいものがあります。小平選手も、大学を出た後も、結城コーチの指導を受け、競技を継続したいので長野に留まりたいと希望をし、地元で就職先を見付けようとしたが、かなり大変だったようです。そうした中、将来が見えない小平選手を雇い、遠征費など多くの負担を請け負ってきた相沢病院の決断には驚かされます。相沢理事長は「頑張ろうとしている若者を地元が支えるのは当然」と思ったと、小平選手を預かると決めた理由を述べています。本当に凄い方です。2009年からですから、約8年間の経済的負担は小さなものではなかったと思いますが、であるにも拘らず、相沢理事長は「幸せな瞬間に立ち合わせてくれた小平さんに感謝したい」と感謝をしているのです。相沢理事長なくして今の小平選手は無かったはずで、感謝するのは小平選手の方であろうに、本当に徳がある人というのはこの世の中にいるものなのですね。活躍を見てからスポンサー役を請け負うなら、まだ出来ると思いますが、まだ原石の状態のアスリートを請け負うのは、中々難しい判断だと思うし、簡単ではないと思います。ですから、こうした目的にはもっと国の支援があっても良い気がします。アスリートはこれだけ多くの感動と教訓を我々国民に与えてくれるのですから、文科省はもっと予算を引いてくるべきですよね。彼らは生きた教科書です。財務省は文書書き換え問題等で前ほど偉ぶれないはずですので、アスリートへの国民的人気をバックにして予算配分を変えさせるべきです。こうしたアスリート育成と言う尊い目的ならば、血税の使い道として国民も納得するはずです。是非、検討いただきたいですね。

また、余談として、パシュートで高木美帆選手チームメートだった佐藤綾乃選手ですが、彼女もとても魅力がある存在だなと思いました。彼女は練習の後に反省ノートを付けおり、自分の抱える課題を見出し、それら課題と向き合い克服しようとしているシーンがテレビで紹介されておりました。彼女も高い意識を持って競技と向き合っているようです。それは菊池選手も同様であって、彼女も大変高い意識を持って自らの課題と向き合っています。高木姉妹は目立ちますが、あのパシュートチームの快挙はやはりチームメート全員の意識の高さが成功の主要因に成っているのだなと、改めて思わされました。

何れにせよ、今回の冬の五輪は学びと感動の多い大会でしたね。色々と考えさせられましたし、励みにもなりました。

次の東京も北京も楽しみですね。もう待ち遠しいです。

湖畔人