毎日の気温に一喜一憂している。それは着物の素材選びにかかわるから
もう透ける着物はいくら何でも手を通したくない
しかし洋服を着ていらっしゃる方々はノースリーブだったりして30度もすれば仕方がないよね、とわかるのだが、透けた着物はやはり敬遠する。不思議な感覚だが、これが着物と付き合う基本なのかなとも思う
悉皆屋さんが大荷物をもって現れた
かねて頼んでいたある方の洗い張りや生き洗いだ
「表がこれだけいいものなのに何で化繊の裏をつけているんだろうね」
「結局そろえるだけで着ないからよね、裏は何でもいい、とにかく表を売ればそれでいい」
「裏をせめて安くするとか」
「これだけいいものを購入するお宅ですもの、裏地で節約するという御考えないでしょう」
「裏は処分してもいいよね」
「この時代は黄変加工もしていないのね、裏が黄色くなっている」
「ああ、裏が黄色くなるので化繊にしたのかもね」
「なるほど!そうかも、一理あるわね」
でもかなり前、やはり裏が黄変していて使い物にならないと判断し、断りなく処分したことが在って、その方はカンカンに怒り、二度と当社に現れないどころか、悉皆屋さんの立て替えも無視された
そういうことが在るので「処分していいかとお断りしましょう」と電話、快くオーケーをしてくださった
引っ越しの前
預かっていた洗い張りの終わった着物を引き取っていただこうと連絡したら
「もう着ることもないので、適当に処分してください」
で結局悉皆屋さんに立て替えたお金はもらえずじまい
さてその着物をどうするか、きれいになった布が活躍できることはないのか、今は反物の幅が広くなっていて、昔の幅は1寸弱狭い、そうすると裄も短く、着丈も短い、150センチ以下の人でないとぴたりとあわない
布絵作家の知人に送って、利用していただくのが一番いいかもしれない、と思って引き取っていただいた
「必ず役立てますね」
とおっしゃっていただき胸を撫ぜ下す
悉皆屋さんに透けた夏の着物を一抱え渡す
「全部生き洗い、もしよほど汚れていたら解き洗いをお願いね」
「先生の着物は生き洗いで終わらない、よく汚してくれているから、ははは」
と肩に風呂敷つつみ担いで笑いながらドアを出ていった