チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 452

2021年09月27日 10時21分58秒 | 日記
悉皆屋さんとの会話
「先生良く汚すね」
「ほんとね、すぐ出さないから汚れが定着してしまうのね」
「そうだよ、汚したっと思ったらとにかくその汚れ水で落としておいてくださいよ」
「はい」
「うちのお客さんの中で一番汚れがひどいのが先生だよ、まあ毎日来てるから仕方がないけどね」
「はい」

先日ある別の洗濯屋さんに着物を出したら、汚れすぎているうちでは綺麗にできません。と返された
内心「綺麗にするのがお宅の仕事でしょう?」と思ったけど、まあ病院で言えば「手の施しようがありません。自宅で死ぬのを待ってください」
ということなんだろうなあ

ところが、長年付き合いのあるこの悉皆屋さん
「せんせいここのシミのところ砂子を撒いてもらおうか」
「いいわねそうするとまた違った着物になる」
「お金かかるけどね、先生の着物素材がいいから勿体ないよね」
「ハイお願いします。この帯はこのシミの場所刺繍の花入れて入れてくれるといいけどどうでしょう?」
「ああ預かっておくよ」

悉皆屋さんの仲間内でお互いに着物を盛り上げてくれるのだ
「ねえ黄ばんじゃったこの麻の長襦袢色染めしてもらえるかな」
「いいよ何色?赤は一枚ではだめ、桶が赤くなるのでね、今一つの桶しか使っていないので、赤染めるんだったら何枚がまとめてくれて言われている。薄い色にしてよね」
「藤色か萌黄色」
「染屋さんに聞いてみるよどちらがいいかね」
「じゃあ見本の色私ておくわね、どちらでもいい」


津京友禅の作家さんたちのこともわかっているので
「この着物は○○さんでしょう?ここのシミのところに一輪書いてもらおうか、それに袖口がやけているので色のせしてもらおうか」
「そうよよくわかるわね、私から連絡しなくてもいい?」
「着物みりゃあ先生のとわかるよ」
「そうねではそちらもよろしく」

こうやって死を迎えるはずのものが見事に生き返った!

尼崎の町医、長尾和宏先生の「絶対に死なせへん」というお気持ちで患者と向き合っている姿勢と共通する
長尾先生の書物を読むと心底元気になる

早期診断、即治療
これは病にも着物にも同じ道

人の命も物の命も大切にし、真摯にかかわっていた日本人の先人達、居間こそその姿を取り戻したい

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