後に雑誌ではなく染色用の「見本帳」(きものブック)の撮影をするようになり女優さんとの接点がさらに密になった
このきものブックはそれぞれの町にある「悉皆や」さんが購入し、そこに来たお客さんの着物の染め替えや、きものを新しく染めるという相談に使うもので、毎年春と秋用に作られていた
その見本帳を作るころは、専門の着付け師も養成され、当初は襟肩あきの空いたきものもあったが、そのうち本仕立てになり着せやすくなった
着付け師は主に花嫁の着付けができる人や映画や舞台の衣装部の人が手際よく着せていた、髪型も専門のヘアーデザイナーが登場し結髪ではなく緩やかなヘアースタイルが一般的になった
それでもまだ化粧は女優さん自身がなさる方が多く、いつの間にかヘアーメイクの方々の出番も多くなっていった
絶対に化粧だけは自分でする、という女優さんは大体ご自分の家で完了、スタジオに入ったときは顔ができているので、撮影も早く終わる
素顔でスタジオに入る女優さんは「美しい」やはり基本が美しい人が女優になるのだなと納得、素人と全然違う美しさだった当時はーー
「見本帳」は大体30枚から60枚の着物を載せる。女優さんは5枚ずつ着る。また見本帳はそれぞれ染色工場が出すので10冊以上は東京で撮影、京都の地元での撮影もある、女優さんの予定を抑えるのも大変だ、売れっ子はスタジオ掛け持ち
もちろん当時売れっ子の女優さんばかりなので、スタジオ同士の争奪戦もある
スタジオで女優さんのスケジュールを把握しているところもあるが、それがないところは、私たちがマネージャーと掛け合う。女優さんも、スタジオも、撮影者も私たち編集や印刷会社もいい収入になったな
やはり大女優さんたちの立ち居振る舞いは優雅だ、ストーリーを作り上げて話すと、すぐ表情が変わりしっとりとした雰囲気で着物のを浮き立たせる。ご自身はもとより、着物の柄をどう綺麗に見せるかというサービスも徹底している
何より驚くのは
ご自分が持参して来る足袋下着腰紐に至るまで清潔でアイロンがきちんとかかっている、そして丁寧なスタッフへのいたわり、ここで日本人の物腰の美しさに触れて自分の粗野な態度を反省する
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