「ナカタニサンと初めて会ったのは昭和51年だよ」
「ええーでは50年も昔?」
「ホラこの写真」
トンボメガネのサングラスに白いきものを着た30代のチャ子ちゃん先生
風俗史学会の研究会で最上川流域の紅花畑を視察して、温泉に入るという研修旅行であった
パピリオや資生堂の口紅を作るとき紅花が必要であると、それぞれの研究室の方が中心に案内してくれた
視察なのだが体験も含んでいたので、紅花餅を作ったり、紅花の花を臼で衝いたり、足で花を踏んだりしながらの研修、着物を着ているチャ子ちゃん先生は体験はパスで皆さんの体験する姿を眺めていた
とそのとき
「きものを着ている人がいるので、この花で染めをしている人のところにも行ってみましょう」
と研究員の方が話を持ち出し、ぞろぞろと染織をしているという工房に向かった
山がまじかに見える農地の真ん中に綺麗な小川が流れていて、その水は最上川にそそいでいるのだという工房に入った
「赤崩草木染工房」と木に彫り込まれている文字を見て
「なぬ?草木染という言葉は山崎青樹さんしか使えないはず、なんと!」
と思いながら紅花で染めたというのれんをくぐり、座敷に上がると青年がいて紅花染めの説明を始めた
この人の名が山岸幸一ということを知った
そして座敷に置かれている本棚に山崎青樹さんの美術出版から出たばかりの草木染の本が置いてある
説明が終わり、みんなが染め上がった布を見ている時
「山崎さんをご存じなの?」
と高ぴー態度で聞くと
「師匠と仰いでいます」
「あらそうなの私もよく存じていますよ、私ナカタニヒサコと申します」
「ああーお名前聞いています先生に、ああそうですか、よくいらしてくださいました」
と丁寧な応対、先ほどの高ピー態度を恥じるチャ子ちゃん先生
紅花は寒の水で染めるのだという一がきっかけで3年間、新年あけてすぐ小寒のころから泊まり込みで「見学」丑三つ時の染なので寒い眠い、そしてその道まっすぐの山岸幸一さんの仕事ぶりをずっと応援している
自然から教えられるとおりに生きていらっしゃるので、三人のおこさんのうち二人は仕事を継ぎ、工芸展での入賞も果たす腕前に成長
親の背を見て育つといはよく言ったものだと、いつもの座敷に座って、喜々として後を継いでいる子供たちの成長をまぶしく見た
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