チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

きものを識れば日本が見えてくる 2 プロローグ

2024年01月07日 10時16分15秒 | 日記
雑誌の文章は事実を伝えるということが肝心
きものを中心のページを作ることになったとき、カラーページで着物の説明をしていてもちっとも面白くない
カラーの写真はもう目に映ることそのものであって、柄の説明やなぜ今この着物を着るのかというTPOが中心になる
きものに全く興味がなかったので、いちいち先輩に聞く、うるさがられるので図書館に行って調べる。柄にはいろんな意味合いがあることを知る。だからと言って「それがなによ」と思ってしまうので、ページつくりに熱が入らない。

撮影の現場では、そのころ本仕立ての着物を着るということはなく、仮仕立てで背中がいている、つまり襟肩あきを縫っていないきものを着せるのだから、着せるほうも着る方も大変だ、帯ももちろん縫っていない、折り筋が付かないように、折り目に真綿を入れて、胴に回し、後ろは洗濯ばさみを使って落ちないように固定する。撮影が終わったらアイロンをかけ、借りた問屋やメーカーに返すのだ

モデルは動けない、前を向いて、手もあまり動かせない、顔の表情と、足の動きで裾の美しさを出す。そうすると当然美しい顔の女優さんでないと絵にならない。

当時の女優さんは美しかった大体ご自分でメイクをし、髪型だけを専門家に依頼する。その当時ヘアー係は結髪やさんと呼んでいた。着付けは前の襟あわせ、裾の合わせは女優さんがするので、後ろのごちゃごちゃは編集の先輩が整える

当時の女優さんは映画ではほとんどきものを着ることが多いので、自分で襟合わせをしたい人が多かった。また日本舞踊などで所作を心得ているから体の動かし方もきれいだった

撮影をするカメラマンも「婦人科」といわれる秋山庄太郎、河合肇、早田雄二さんなど映画雑誌で女優、男優を撮る人たちだったので、女優さんたちとの息もあい、撮影現場は和気あいあい、ぺいぺい編集者のチャ子ちゃん先生の仕事は、撮影者の脇に立って、半襟が左右均等に出ているか、腰に布のたるみがないか、袖がよじれていないかなどを直す役

きものの名称もこの時自然に覚えていった
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きものを識れば日本が見えてくる 1 プロローグ

2024年01月06日 15時43分47秒 | 日記
年末から年始チャ子ちゃん先生はブログの内容について考察していた
ブログを始めたのは作家宇野千代さんのきものへの思いを取材し、その文章が雑誌に載ったときの会話を思い出した時だった
「ヒサコさんあなた文才あるね、もっと磨くといいわ、そのうち小説も書けるかもしれないよ」
「はー上手になりたいですが、読書だけではだめなのですよね」
「コツを教える、毎日一行でも書きなさい、それは自分の思いを書く日記ではなく、読む人を意識した社会的な考察であり自分の考えをテーマ決めて一年綴ってごらん」
といわれたが、すぐ実行をしたわけではなった

というのはそのころは雑誌の編集に携わっていて、毎日文章を書いており、自分の文章を磨くというより、校閲の手を煩わせぬように見たこと聞いたことを正確に書くことに集中していたから、日記すら書くのが面倒だった

校閲から帰ってくる私の原稿にデスクが「お前の文章酔っぱらてるぞ!」とからかう。つまり誤字脱字が多くさらに、文章表現も人と変わっていているため校閲が赤字で直してくるのだ。

グラビアの写真説明を一時間も「違う」「書き直し」「それじゃあ読者に伝わらん」と難癖付けて書きなおしをさせられたこともある
若くて素直だったから、一生懸命書き直す。何が不足なのか最初はわからない
「どこが悪いのか教えてください」
「写真見せて写真の事細かく説明していいわけねえだろうが」
「ではどう書けばいいのですか」
「てめえで考えろ」

こうやって突き返されているうち
この写真の裏の状況とか写真に載っている人の洋服の色(白黒写真の場合)その付近の様子、何に驚いてこんな顔をしているのか、静止した写真から周りの動きを書いてみた時
「いいねえ」とデスク

書いた原稿を黙って突き返されているうち、読者に伝える文章のコツというものがぼんやり見えてきた

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