はりぶろぐ

鍼灸師のブログです。東京都国分寺市にて孔和堂鍼灸院を開業しています。
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認知症の方と接するときに大切にしたいこと

2021-04-15 14:47:00 | 日記

「認知症」という病気を多くの方がご存知だと思います。年々患者数は増加しており、いつ誰がなっても不思議ではないことから、認知症予防について関心は高まってきているようです。

しかし、認知症の患者さんに対してどう接すれば良いかを知っている人はまだまだ少ないと感じています。
代表的な認知症は4種類あります。
・アルツハイマー型認知症
・脳血管性認知症
・レビー小体型認知症
・前頭側頭型認知症
認知症状は病気の種類によって異なりますが、「記憶障害(もの忘れ)」「見当識障害(日付や自分のいる場所が分からなくなる)」「感情失禁(急に怒ったり泣いたり感情のコントロールができなくなる)」「幻視(実際にはないものが見える)」など様々です。
 
患者さんご自身にとって、これまでできていたことが少しずつできなくなる恐怖感や不安感はかなりのものだと思われます。患者さんと関わる家族や身近な人たちも、以前と様子が変わっていくことを受け入れられず辛い気持ちになります。
病気だから仕方がないと分かってはいても何度も同じことを繰り返し言われたり、良かれと思ってしてあげたことで急に怒られたりすると、ついイライラして声を荒げたり投げやりな態度を取ってしまったりすることがあると思います。
近しい存在ほど、そうした不和が生じやすくなります。
 
私自身、祖母が認知症と診断されるまでの1年ほどの間、祖母自身の状態の変化を身近で見ていた経験があります。当時は全く医療の知識がなかったこともあり、戸惑うことばかりでした。元々感情表現が豊かな人でしたが、だんだん笑わなくなって無表情でいることが増え、家事も身支度もどんどんできなくなっていきました。家族との衝突も日に日に多くなりみんなが限界を迎えた頃、認知症と診断されました。持病もあったため入院しましたが、祖父と同室になったことで少しずつ笑顔が出るようになりました。その後、グループホームに入居する頃には笑顔が出る機会が増えました。
もう20年ほど前の事なので、今よりも認知症に対する情報が少なく限界はあったと思いますが、今だったらもっと優しく丁寧に接することができたかなと思います。
 
今はインターネットでも認知症のことや対応策について簡単に調べられるので、何か困ったことが起きたタイミングで調べてみるのも良いと思います。何も起きていない時に調べてもなかなか実感が伴いませんが、実際にトラブルが起きた時だと腑に落ちやすくなります。
 
ただ、家族の場合は頭で分かっていてもつい感情的になりがちです。
そうした場合は、介護の専門家に相談するのが一番です。
認知症の診察は受けていないけれど、もしかして認知症かもしれない、という場合は、地域包括支援センターに相談することをおすすめします。
担当のケアマネジャーさんがいる場合は、そうした日常における悩みを打ち明けてみるのもいいと思います。
これは何に対しても言えることですが、まず正しい知識を持つことが最優先です。その上で冷静に状況を判断し、随時適切な対処を行うようにしていくことが大切です。
 
 
認知症の方はちょっと前に起こったことも忘れますが、その時に生じた感情は印象として残ります。
もし誰かがイライラして乱暴な言動を取ってしまったら、認知症の患者さんは自分がなぜ怒られたかは分からないけれど、怒られてしまった印象は残ってしまいます。そんなことが日々の暮らしの中で繰り返し起きてしまうと、自分は怒られてばかりいると辛く悲しい気持ちになって、いっそう感情が不安定になってしまいます。
だからこそ、楽しい!という感覚をたくさん体験してもらえるような工夫が大切なのかと思います。
当院にも認知症の患者さんが来院されていますが、毎回飾っている花や置き物を見て喜んでくださいます。素敵な笑顔につられて私も笑顔になります。
患者さんが治療院で過ごす時間は患者さんの中ではごく僅かの時間かもしれませんが、ここにきたら楽しい、と感じてもらえるような雰囲気づくりを意識しています。
 
認知症の患者さんにとっては、今この瞬間が全てです。その瞬間瞬間の積み重ねが素敵な時間であるように接することができたらと思っています。
 
 
私の祖母は今年で93歳になります。最後に会ったのは一年半前。会う度に祖母の大好きなお灸をすえていましたが、現在は入院しているため、帰省できたとしてもお灸をしてあげることはできません。自宅で生活していた頃は、毎日自分でお灸をすえているほどでしたから、今でもお灸のことは覚えているかもしれません。
まだまだ会うことは叶いませんが、祖母のことを思うと、お灸をした後の嬉しそうな笑顔が一番に思い出されます。またお灸をしてあげたい気持ちはやまやまですが、毎回悔いのないよう接することができていたのだな、と、会えなくなった今実感しています。
 
 
身近に認知症の患者さんがいる方の中には、日々複雑な思いを抱えられて過ごされている方もいるかもしれません。見守り続けるのはとても大変なことですが、時には専門家のアドバイスを取り入れながら、患者さんと一緒に今この瞬間を楽しんで過ごせる機会を作れるといいですね。
 
コメント
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