広島大教授ら 抗がん剤活用期待 体内物質の働き確認
細胞や血液などに含まれる「マイクロRNA」と呼ばれる物質の一種に、乳がんと子宮頸がん細胞を「老化」させ、がんの増殖や転移を抑える働きがあることを広島大の田原栄俊教授(細胞分子生物学)らのチ-ムが突き止め、18日付けの米科学誌に発表した。 田原教授は「マイクロRNAは生体内でつくられる物質で、既存の抗がん剤に比べ副作用のリスクが低い。次世代の抗がん剤としての活用が期待できる」と話している。 マイクロRNAは、細胞の増殖や分化などさまざまな生物現象の調節に関係していると考えられている。田原教授は、通常の細胞が分裂しなくなり老化するにつれて、いくつかのマイクロRNAが増加することを発見。このうち老化せずにがん化した細胞で減少していた「miR22」に着目した。培養された乳がんと子宮頸がんのがん細胞にmiR22を加えると、老化が進み増加が抑えられることを確認。マウスを使った実験でも乳がんの転移を抑制することが分かった。細胞の老化は、がん化を防ぐための生体の防御機構とみられている。田原教授は「miR22を投与することで老化のプログラムが再開され、がん細胞の増殖が抑えられた」と分析している。
写真miR22を投与されたマウス(上)は非投与のマウス(下)に比べ、乳がん(着色部分)の増殖や転移が抑えられている