二文字ともに「女偏」がつくが、嫉妬の感情は性別を問わない。例え ば森鴎外は、軍医としての出世競争に敗れた後、ライバルと上司へ の敵討ちを図る。小説「舞姫」の中で悪口を並べて、わざわざ当てこ すった。▼関が原の戦いは嫉妬が起こしたともいう。豊臣秀吉は石 田三成を重用した。これを加藤清正らがやっかんだのを「徳川家康が 巧みに利用したことが直接の原因となっ」。札幌生まれの歴史学者・ 山内昌之さんが指摘する。(嫉妬の世界史)▼ねたんで自分が幸福 になるわけではない。それでも、人の世で当たり前に見かける。これ に関する脳の活動を、放射線医学総合研究所が解明したという先の ニュ-スは興味深かった▼恵まれた人にねたみを持つと、脳のある 部位が活発に働くそうだ。体の痛みを感じるときと共通の部位だ。ね たみは「心の痛み」だつた。他人の不幸を喜ぶと、脳の別の部位が 働いた。ほうびをもらって心地よく感じるのと共通する部位だ▼つまり、 脳科学からみても「人の不幸は蜜の味」なのだ。しかも、うらやみの 脳活動が強い人ほど、人の不幸を喜ぶ脳活動が強い。蜜の味を、よ り甘く感じる▼不幸が重なれば嫉妬が膨らむ。人の不幸がうれしくな る。こうして歴史が動くし、「誰でもよかった」と犯罪も起きる。脳活動 の解明がいくら進んでも、やっかいな感情であり続けることは間違い ないだろう。
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