効果 1、2年生 驚きの集中力
2000年12月に全国の自治体として初めて、0 歳の赤ちゃんに絵本を贈る「ブックスタ-ト」を始 めた恵庭市。活動が全国に広がる一方、子ども たちと本をつなぐさまざまな活動も展開してきた。 活字離れが叫ばれる中、注目を集める同市の取 り組みを報告する。
午前8時半。はしゃいでいた子どもたちが、静まりかえった。「朝読書」 の時間だ。「いいチョッキだね。ちょっと着せてよ」-。1年2組の教室 から、絵本を読む子どもの声が聞こえてきた。「ねずみくんのチョッキ」 を読んでいた盛瑞希ちゃん(6)は「本は好き。小さいときから家で呼ん でもらってるの」と、はにかむ。恵庭ブックスタ-トは、本に親しむことで 親子のコミュニケ-ションを図り、子どもの情緒を豊かにしようと、導入 された。瑞希ちゃんたちは、絵本を贈られた“1期生”の子どもを指導す る2年1組担任の忠岡万紀子教諭は「読書中に『静かにしなさい』と注 意したことがない」と子どもたちの集中力に舌を巻く。
貸し出数が大幅増
ほかの小学校でも、1、2年生の本好きに驚く声が挙がっている。「夏 休み前、子どもたちの行列が図書館にできた」「入学直後で図書館は まだ利用できないと言われた1年生が、泣いた」市内の学校図書館の 平均か貸出冊数も大幅に伸びた。04年度は一人あたり15・2冊だった が、06年度は28・6冊、07年度は41・7冊。子どもたちの「活字離れ」 が指摘される中、まつたく逆の現象が恵庭で起きている。ブックスタ-ト に当初から携わってきた恵庭市立図書館の内藤和代さんは「大人が環 境を整えれば、子どもたちは本を読む」と力を込める。
全小学校に司書
導入当時、図書館長だった中島興世さんが05年に市長になったこ ともあり、子どもたちの読書環境整備にも力を注いできた。「絵本を 配るだけでは、単なるお土産。本とのふれあいを継続的に支援した い」(内藤さん)との思いからだ。市立図書館には授乳室やベビ-カ -を備え、赤ちゃん絵本コ-ナ-を設置。1歳6ヵ月健診でも絵本を プレゼントする「ブックスタ-トプラス」も07年度から始めた。「小学 校に入って『本を読もう』と言っても遅い。スタ-トは家庭での読書。 赤ちゃんと一緒に利用できる図書館を目指した」と内藤さん。学校図 書館の整備も進んだ。04年度には道内で初めて、すべての小学校 に専任司書を配置。05年度から10年間の「子ども読書プラン」を策 定し、07年度に市立図書館と学校図書館の計36万冊をオンライン で結ぶ配本システムを導入。読みたい本を申し込むと、配本車で翌 日に学校に届く。昨年、江別市内の学校から恵みの旭小赴任した四 方正教頭は「図書館への力の入れようには驚いた」と振り返る。そし て、こう続ける。「読書活動は、子どもの成長にとってまちがいなくす ごい力になる」
ブックスタ-ト 0歳児健診などで、赤ちゃんに絵本をプレゼントする事 業。自治体が実施する場合が多い。1992年に英国で始まった。英国 ではブックスタ-トを受けた家庭ほど、親子で本に親しむ時間が増えた り、子どもの言語能力が向上するといった効果が報告されている。日本 では「子ども読書年」の2000年に紹介され、同11月に東京都杉並区 で試験的に実施された。NPO法人「ブックスタ-ト」(東京)によると、9 月末で全国672の自治体が導入。道内では90市町村(道教委調べ) が行っている。
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