米の湖で発見 生命の要素異なる
[ワシントン共同]通常の生物にとっては有毒なヒ素を、生命活動の根幹となるDNAに取り込んで成長できる細菌を発見したと、米航空宇宙局(NASA)などの研究グル-プが、米科学誌サイエンス(電子版)に発表した。
地球上の生物は、主に炭素、酸素、水素、窒素、リン、硫黄の6元素でつくられており、これらは生命活動に不可欠と考えられている。だが、この細菌はリンをヒ素に換えても生きることができるという。現在知られているものとは異なる基本要素で生命が存在する可能性を示し、生命の誕生、進化の謎に迫る発見といえそうだ。専門家らは生命を構成するのが6元素であることを前提に地球外の生命探しを進めているが、研究グル-プは「どのような物質を追跡の対象にするか、より真剣に考えなければならない」と指摘している。研究グル-プは、米カリフォニア州にあるヒ素濃度の高い塩水湖「モノ湖」に生息する「GFAJ1」という細菌に着目。ヒ素が多く、リンが少ない培養液で培養すると、リンが多い培養液よりは成長は遅くなるものの、細胞数が6日間で20倍以上に増え、GFAJ1はヒ素を取り込んで成長することを確認した。細胞内の変化を調べると、DNAやタンパク質、脂質に含まれていたリンが、培養によってヒ素に置き換わっていた。リンとヒ素は化学的性質が似ているため、このような現象が起きたと考えられるが、どのように置き換わるかや、置き換わった分子が細胞の中でどのように働くかは分からないとしている。
進化史上古くない 生命の初期進化を研究する山岸明彦東京薬科大教授の話
リンの代わりに化学的性質が似ているヒ素を利用する微生物の存在は、理論的には考えられたが、実際に見つけるのは難しかった。大腸菌に近い仲間なので、進化史上、それほど古くないのではないか。今回の発見により、「生き物」というものの考え方がかなり広がった。地球外生命を探す際の視野も広げる必要がある。例えば、土星の衛星タイタンには液体のメタンがたくさんあり、水の代わりにメタンを利用する微生物が存在するかもしれない。
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