希望を求めて-再生へこう考える
学校秩序の再構築を -教育が今抱えている最大の問題は何でしょ うか。「戦後の日本を支えてきた義務教育シス テムが機能不全を起こし、崩壊の危機に直面し ていることです。昨年秋以降に相次いだいじめ 自殺や、学級崩壊、不登校などの諸問題はその表れです。 問題は深刻化するばかりで、抜本的な解決策が見つからない状況 です」 -その原因は。 「第一に、子供たちの変質があります。私たち『プロ教師の会』のメン バ-が現場の教師として子供たちの変化を感じ始めたのが、1980 年代半ばごろでした。それが90年代に入ると一気に変わってしまい ました。その状況は今も大きく変わっていません」
挑戦しない子供 「特徴は我慢できず、感情のままに行動する。嫌なこと、つらいことに 挑戦し、学ぼうとしなくなった。傷つきやすくなり、自分を守るために殻 に閉じこもるか、相手に攻撃的に向かっていき、『キレる』ようになった。 そう感じます」 -変質の原因を、どのように分析していますか。 「高度成長期を経て国民が豊かになり、食べられるようになったと同時 に、家庭や学校を支えていた地域共同体が崩れ始めました。個人第一、 自由、平等な社会が実現し、子供も消費者として『一人前』扱いされる ようになったことが背景にあるのでしょう」 -ただ、その変質を実感している人は多くないように思います。 「確かに、社会も教師自身もこの変質をいまだにとらえられず、自身の 子供時代をイメ-ジして今の子供を見ています。現実と認識の間に大 きなズレがある限り、問題解決は難しいでしょう。本質が分かっていな いから、対応も小手先でその場しのぎとなり、後手に回ってしまうので す」 「ゆとり教育への批判とともに語られている学力低下論を見ていても、 本質がまったく見えていないと感じます。問題は、前提として、生活習 慣や社会性が十分身に付いておらず、学習に臨む心構えや姿勢が弱 くなっている点にあるのです」 -だからこそ、効果的な改革が必要なはずです。 「義務教育が抱える第二の問題点は、その改革のありようです。教育 改革は80年代の臨時教育審議会(臨教審)以降、競争原理の導入が 土台となっており、安倍晋三前首相の肝いりで始まった教育再生会議 などの議論を見ても、その流れは加速しています。学校選択制や教育 の免許更新制などの各制度も、この競争原理を政策化したものです。 背後にあるのは『弱肉強食』『エリ-ト主義』の思想です」
強者偏重の改革 「私が委員として議論に参加した2000年の教育改革国民会議で も『エリ-ト教育にとにかく力を注ぐべきだ』などという意見が強く出 されていました。そこにあるのはひとりひとりの子供を一人前の社会 人に育て、全体の力を底上げするのではなく、一部のエリ-ト層の 養成に力を集中しようという意図です。子供を持つ親も学力・学歴と いう物差ししか持たず、その考えに乗ってしまっています」 -するべき対策は何でしょうか。 「『基礎学力と生活力を持った一人前の社会人を育てる』という義務 教育本来の目的を再確認し、学校秩序を再構築することが最大の 課題て゜しょう。不登校児を受け入れる学校や生活力養成を重視した 学校、国をリ-ドしていく子供を教育する学校など、同年齢の子供を 一斉一律に教える従来の単線型ではなく、子供たちの現状に合わせ た複線型の学校編成が必要だと考えます」
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