希望を求めて-再生へこう考える
住民が学校サポ-ト -東京都の中学校で初の民間校長になって五 年。「世の中のダイナミズムを学校に」がモット- だそうですね。 「学校も世の中の一部という当然のことが、この 業界(学校)で自覚されてきませんでした。企業は人、モノ、金、 情報と時間を駆使し、トップが責任を負う。学校も、校長が生徒の成 長という最大の目的に向けあらゆる手段を講じるべきなのに、『健全 な知恵比べ』がなさすぎた。多くの校長が『公教育は平等』の建前の もと他校の良い例をまねようともせず、サボってきたためです」
教師の負担軽減 -勤務する区立和田中の改革は。 「教師が授業に集中し生徒と向き合う時間を確保するには負担の軽 減が必要と判断し、着任してすぐに住民が学校をサポ-トする『地域 本部』設立に動きました。主婦、商店主、庭造りの職人さんら多彩な スタッフが、大学生を講師に招き土曜補修授業や平日の英語特別授 業を自主運営しています。図書室の放課後の運営・管理なども幅広く 担ってくれています」 「教師は地域本部にタッチせず本来の仕事に集中する。この仕切りで 学校の総合力が高まった。地域本部は杉並区と文部科学省の支援 対象事業になり学校に措置される予算からスタッフに謝礼を支払って います。やり方次第で、他校にも同じ道が開けています」 -授業の改革は。 「教科書と現実社会をつなぐ総合学習『よのなか科』を創設し、ハン バ-ガ-店を出店したらもうかるかを考えたり、弁護士をゲストに模擬 法廷を開いたりと、生徒の討論を大切に授業を展開しています。一コマ 五十分が標準の授業を四十五分に短縮し、五分ずつ浮かせた時間で 英数国を中心に週の授業コマ数を増やす取り組みも軌道に乗りました」 -摩擦はありませんでしたか。 「職員会議が反対の嵐だったこともありました。しかし私は『嫌だから反 対』というのは認めません。筋の通った対案を出せないなら、従ってもら います。同時に校長として成果が上がらなければ退くか降格人事を受 ける覚悟があります。『生徒のため』という思いはみな同じで、いつも力 強い賛同者が現れました」
生徒数が2倍に -改革で学校はどう変わりましたか。 「学校選択制で校区から三十人ほどが他校に流れていたのが逆 転し、五年間で生徒数が2倍以上に増えました。本年度の新入生 百五十七人は着任時の3倍です。行事や部活など集団による教育 効果が生まれ、生徒数に応じ増員された教師を機動的配置できま す。生徒の学力は着実にアップしています」 「近隣校でも和田中に負けじと地域と連携した学校づくりが始まっ ています。学校選択制はベストではなくても、当面は有効です。保 護者には『選んで入学するからには責任を持ち学校に参画を』と呼 びかけています」 -民間校長を増やすべきだと考えてますか。 「特に公立中に必要です。入試で均一な生徒を集める私立と違い、 全国の公立中に能力、個性がさまざまで多感な子供たちがいる。 彼らが学力と公共心を身につけた市民になるかどうかに、日本の 将来がかかっているのでは-。『着任し最初の一年は動かず、じっく り校内を観察することが校長の心得』などと言っている人たちに任せ ていられません」 「民間といっても社内の人事と予算を握り部下を動かしてきたタイプ は校長に向きません。その手法で教師は動かない。『生徒のため』 という説得力を持つリ-ダ-シップが大切です。NPO代表や熟経営 者、学者や行政関係者、幅広い人材の『参戦』が必要です。教師出 身で実績ある校長には定年退職後、こんどは民間校長としてぜひ 活躍してほしい」
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