希望を求めて-再生へこう考える 先人の「財産」共有を
-教師への視線は厳しいものがあります。 「罪を犯すケ-スは論外ですが、『教える術』を 持たない教師が年齢に関係なく多いことも、批 判の要因の一つでしょう。学校現場には、我流 授業がまん延しています」「教師たちが授業を 批評し合う研究授業を見れば、その実態が端的に分かります。 まず、何年も研究授業に臨まない教師が多数います。研究授業に 臨んだ教師でも、授業の流れを記した学習指導案を見ながら授業を しているありさまです。舞台で台本を見ながら演技する役者がどの 世界にいるでしょう」
学ぶ場 実習だけ
-そのような状況に陥っているのは、なぜですか。 「教師の要件として人間性が重視され、授業技術を軽視する風潮 があるからです。教員養成系大学でも教える術を本格的に学ぶの は、教員実習だけです。つまり、術を効果的に後輩へ受け継いでい くシステムがなく、現場に入ってからの実践任せになっています」 「医師の世界と比較すれば、分かりやすいでしょう。まず、医療技術 や知識を持たない医師に、治療を任せる患者がいますか。また、大 学の医学部教授は医師であり、手術で執刀する実践家です。教員 養成系大学の教授で、小、中学校の教壇に立った経験があり、学生 に術を教えている人がどれだけいるでしょう」 -その欠陥を補うのが、道内も含めて一万人の教師が学ぶTOSS (Teacher's Organization of Skill Sharing)の狙いですね。 「先人が培ってきた優れた授業技術は共有財産です。その技術を現 場での実践を繰り返して検証し、教師の力量を上げていきます。基本 技術では、教師が指示を出す時、二つ以上の目標を同時に示すと、 理解できない子供が必ず出てくるため、『一時に一事を指示する』こと を徹底しなければなりません。子供たちと視線を合わせる、リズムと テンポを大切にすることも同じです」 「また、『知ること』と『すること』には雲泥の差があります。教師個々の 技量を測り、目標を示すシステムとして、2003年から導入したのが 授業技量検定です。最高位は八段、最下位は三十四級です。二十 級で学級崩壊したクラスを立て直せる技能があり、現に多くのTOSS 教師たちが崩壊学級を立て直しています。段位クラスは全国でもトッ プランクの授業提案力を持っています」
標準基準 明確に
-ただ、TOSSの運動を「マニュアル主義だ」などとする批判もあり ます。 「私は教師の仕事について、授業技術がすべてだと主張しているわ けではありません。ただ、授業はあくまでも学校の基本であり、教 壇に立つ以上、基本技術が必要だと言っているのです。キャッチ ボ-ルができない野球選手が、プロになることはあり得ません。 教師には基本がない『自称名人』が多すぎます」 -現状を変えていく有効策は。 「検定がその一つの方策でしょう。ただ、向山が独断で作り上げた 基準だとの批判も耳にします。それなら、独自の検定を作ればいい はずです。道教委検定でも、道教大検定でもいい。時代は、客観的 で明確な基準によって教師を評価することを求めています」 「ここ数年、道内も含めた全国の自治体の首長や教育長から、協力 の申し出を多数いただいています。これは、教育を変えるには、教 師の力量アップが欠かせないという思いの表れです。子供たちに学 べと言っている教師自身が学ぼうとしない現状のままでは、何も変 わりません。急務なのは、教師の意識改革でしょう」
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