冲方 丁著 「天地明察」を読みました。
江戸、四代将軍家綱の御代。
戦国期の流血と混迷が未だ大きな傷として記憶されているこの時代に、ある「プロジェクト」が立ちあがった。
即ち、”日本独自の暦”を作り上げること。
武家と公家、士と農、そして天と地を強靱な絆で結ぶこの計画は、そのまま文治国家として日本が変革を遂げる象徴でもあった。
実行者として選ばれたのは渋川春海。
碁打ちの名門に生まれながら安穏の日々に倦み、和算に生き甲斐を見いだすこの青年に時の老中・酒井雅楽頭が目をつけた。
「お主、退屈でない勝負が望みか?」
この瞬間から春海の人生が大きく動き出す・・・。
江戸時代に様々な苦労を経て大和暦を大成し、太陰暦から太陽暦への転換という大事業を成し遂げた渋川春海の生涯を、彼を取り巻く人々とともに描いた作品です。
碁打ち、算数、天文、そして太陰暦、太陽暦など、一見地味で取っ付き難い題材を扱っています。
”へぇ~、江戸時代にこんな世界があったんだ~。”と思いながら読み始めました。
読み進める内に、この物語の根底に流れるのは、人生の生き甲斐と人と人との出会い、そして別れをテーマにしている作品だと思いました。
決して、飛び抜けた才能がある訳ではない主人公がいろいろな苦難に直面し悩み苦しみならがらも、こつこつと精進を続けて最後には大きな仕事を成し遂げる。
その為には本人の情熱もさる事ながら、人と人との出会いがいかに大きいかを感じさせます。
日々を漫然と過ごしていたのでは、折角そんな出会いがあっても気付かずに過ごしてしまうのかも・・・。
読んだあとの爽快感もよく、歴史物と云うよりもエンターテイメント作品としてオススメの一冊です。
「第7回本屋大賞」、「第31回吉川英治文学新人賞」受賞作。