佐々木譲 著 「警官の血」を読みました。
昭和二十三年、警察官として歩みはじめた安城清二は、やがて谷中の天王寺駐在所に配属される。
人情味溢れる駐在だった。
だが五重の塔が火災に遭った夜、謎の死を遂げる。
その長男・安城民雄も父の跡を追うように警察学校へ。
卒業後、その血を見込まれ、大学生として新左翼運動に潜入すると云う過酷な任務を与えられる。
赤軍派による大菩薩峠事件にかかわった後、精神を病んでしまう。
やがて、民雄は、駐在として父と同じ谷中へと還ってくるが、心の傷は未だ癒えてはいない。
だが清二が愛した町で力を尽くした。
ある日、立てこもり事件が発生し、民雄はたったひとりで現場に乗り込んだのだが―。
そして民雄の子、安城和也もまた、祖父、父と同じ道を選んだ。
警視庁捜査四課の一員として組織暴力と対峙する彼は、ある密命を帯びていた・・・。
戦後復興前の混乱期、学生運動が盛んだった昭和時代、暴力団が台頭してきた平成時代から現代までの60年を親子三代に渡る警察官が登場します。
それぞれの時代の闇に翻弄され、苦しめられながらも親から子へ、さらに孫へと引き継がれていく警官としての誇り。
一家三代それぞれに読み応え充分の独立した数々の事件・エピソードが語られ、その時々の世相や時代背景を垣間見ることが出来ます。
さらに主軸となるのは清二の死の謎と、彼が追いかけたふたつの未解決事件。
三代60年の歳月をかけて、和也が辿りついた祖父と父の死に隠されていた衝撃的な事情とは・・・。
長編ですが、一気に読める骨太の作品でした。
’07年、「このミステリーがすごい!」国内編第1位、「週刊文春ミステリーベスト10」国内部門第3位受賞作。